宗教関連必修科目問題でトルコ政府、欧州人権裁判所の決定に聞こえないふり
2007年10月11日付 Radikal 紙

国民教育省によると欧州人権裁判所(ECtHR)の出した判決に拘束力はないとのこと。宗教担当国務大臣ヤズジュオール氏は「重大ではない」と発言した。ECtHR:「授業(内容)がバランスがとれているというなら、偏りがあってはならない。両親の宗教を明かすことも権利侵害である・・・。」

ハサン・ゼンギン氏はスンナ派のみの宗教関連必修科目(DKAB)を、彼の娘エイレムが免除されるよう要求し、裁判所へ訴えた。エイレム・ゼンギンは当時中学二年生だったが、高校終了までこの授業を強制的に履修させられた。現在は大学生。そのため、欧州人権裁判所が前日(10/10)に出した「トルコが教育権を侵害した」とする判決は、宗教関連科目の出席免除を要請するという、エイレム・ゼンギンの件に対し、具体的に働きかけるものにはならなかった。しかしECtHRの判決が、現在スンナ派イスラーム以外を信仰する全学生を対象に反映されるかという点で、公正発展党(AKP)政権のトルコ政府が聞こえないふりをすることは初日からすでに明らかである。

■イスラームによる強制指導が行われている

ハサン・ゼンギンの訴えを評価する際、ECtHRは、宗教関連必修科目として履修させられる授業の指導書や教科書を調査し、この教科書が他の宗教や哲学に比べ、よりイスラームを優先し重きを置いていることを明らかにした。
またECtHRはこれら教科書において「イスラム思想の明確な原理の枠組み内で、明らかに強制的指導が行われている」とも発表した。判決のため行われた調査の結果の中には、この強制指導に「信仰告白、一日5回の礼拝、断食、巡礼、天使や妖精の特徴及び来世の信仰のような文化的宗教行為」も含むと記されている。そのため、この授業はECtHR調査団によれば宗教文化ではなく、特にスンナ派イスラームを学習する宗教科目という特徴をもつのである。そしてECtHR判決によるこの理論で解釈すれば、十分な明確さを持つのだ。「授業が他の宗教文化に関わる目的を含んでいたなら、イスラム教徒の子供たちだけに強制的に履修させる理由はなかったはずだ。」

■国民教育省:トルコに対し影響力はない

国民教育省はECtHRのこの発表と判決にも関わらず、この科目実施に関し変更を行わない姿勢を明らかにしている。国民教育省によると、ECtHRのこの判決の理由となった欧州人権協定の第一補足議定書内、第二条が、トルコの国家教育法と相反するものであるために、トルコは従わないとのこと。そのため、この判決はトルコに対し影響力を持たなかったのである。
第一議定書の第二条には「教育の分野で行われるべき業務が遂行されるにあたって、両親がそれぞれの宗教や哲学の信仰によって教育を受けさせる権利を、政府は尊重する。」と記されている。しかしトルコが世俗主義保持、そして教団による教育への干渉を防ぐためにとった今回の判断と、ECtHRの国家教育法内での適用に向けた判決の間にはなんの関連性もない。

■トルコの主張:授業は平等に行われている

国民教育省の権威の主張はこれだけでは終わらない。同省によるとECtHRは、エイレム・ゼンギンが当時使った教科書を評価したもよう。2007年、カリキュラムと教科書は改訂された。同省はこの件について、次のようにコメントしている。
「我々は弁護の際、新教科書も提出した。しかしおそらくこれは考慮されなかったのだろう。新教科書は理論と概念の面で大きく変化した。初等教育と中等教育において、三単位はイスラーム以外の宗教教育に充てられた。しかし全40ページの宗教本の中で10ページはキリスト教、10ページはイスラーム、10ページはユダヤ教について記述されるなどと期待しないでほしい。なぜなら、どこにもこのような本は存在しないからだ。ヨーロッパ諸国のどこの国で、宗教教科書の中でイスラームについて言及されているだろうか?それにも関わらず我々は、決定が我々にわたった後、必要ならばもう一度カリキュラムを見直し、より中立的に変えることもできると言っているのだ。」

■信仰を尊重していない

しかしECtHRの判決において、この理論ははっきりと批判されている。アレヴィー派に関する授業が高校一年のとき行われるのは「遅い」とするECtHRの次の言葉は、非常に注意を引く。
「裁判所は、トルコにおける宗教関連必修科目が、民主社会の教育として、また宗教に対し批判的思考を育てるという点で、学生に対する客観性や多元共生の理念を持った内容でないとの判決を下した。原告の立場からいえば、授業はゼンギンの父親の宗教・哲学信仰を尊重していなかったのだ。」
また国民教育省の権威によれば、ECtHRの判決は宗教関連必修科目という観点での前例とはならないとのこと。トルコ政府は、原告の裁判費用を負担する。しかしアレヴィー派の学生らに対する履修免除に関しては何の措置もとらない予定。しかし、ECtHRがこの判決を出したために、スンナ派イスラーム以外を信仰する学生らが、それを前例として裁判所に訴えかねない。そのため国民教育省は新たな裁判を予防するため、何らかの調整を行うことになる状況にある。

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( 翻訳者:上田悠里 )
( 記事ID:12125 )