Sahin Alpay コラム:イラクのクルド人リーダー達が語ったこと
2007年11月03日付 Zaman 紙

(ミッリイェト紙コラムニストの)ハサン・ジェマルはとてもいい仕事をした:イラクへ行ってクルド地域政府のマスード・バルザーニ首相、ならびにイラクのジャラール・タラバーニー大統領と話したのだ(ミッリイェト、10月30、31日版)。このようにしてメディアによる事実の歪曲を乗り超え、我々はイラクのクルド人リーダー達が本当に何と言っているのか知り得る機会を得た。バルザーニとタラバーニーの発したメッセージは次の数点に集約される:

・トルコ人とクルド人の共通の利益は、平和の中で共に暮らすことだ。イラクのクルド人はトルコにとっての敵や脅威ではない。(イラクのクルド人は)1990年代にクルド労働者党(PKK)と戦いこのことを示した。トルコは我々を攻撃しないという保障を与えなければならないし、我々との対話の席に着かねばならない。トルコ政府は我々と対話せず、我々に脅威を与え、後になってPKKに対する協力を求めている。

・PKKがやったことはトルコ人とクルド人に害悪をもたらしたのと同様、クルド裁判(※)への裏切りでもある。というのも(PKKは)トルコで民主主義に敵対する勢力に力添えをしているからだ。我々は民主主義的な、EUの一員である隣国トルコを求めている。PKKは武器を放棄しなければならない。もしこの準備がないのなら、無条件停戦を宣言し、完全にイラクへと退却し、この点において誠意があることを示さなければならない。(PKKは昨年も停戦を宣言した。我々はこのために圧力をかけていたし、今でもかけている。しかしトルコはこうした停戦が宣言されていないかのような態度をとった)。

・PKK問題は軍事的な方法で、戦争によっては解決できない。軍事作戦は何回も行われたが、(望む)結果は得られなかった。トルコにいるクルド人に民主的、文化的権利が与えられることなくして、PKK問題は解決しない。クルド問題が解決するたびに、PKKも終息に向かう。トルコは平和的な解決のために策を講じ、この文脈で指導者ではないPKKメンバーに恩赦を出すことも考慮しなければならない。このような時代にオジャランのための恩赦が議論に値しないことを我々は知らない訳ではない。オジャランが10年前に武器を放棄することを認めていたら、今日刑務所には収容されていなかった。

・カンディル山にいる5千人のPKKメンバーを捕らえてトルコに引き渡す力は我々にはない。しかし流血を止めるためにできることは何でもする。PKKによって連れ去られた(トルコ軍)兵士8人の解放にも努力している。アメリカは新たな和平の体制を構築するかもしれない。アメリカ人は(PKKが)国境から(トルコに)侵入することを防ぐため、24時間体制で監視飛行をすることや、情報収集活動の支援を提案している。それらについて検討しなければならない。

イラクのクルド人リーダーの今日の状況を、次のような形で読み解くことが可能だ:PKKが自分達(=イラクのクルド人)の安全保障と利益を危機にさらしたという認識を持っている。しかしPKKに対して単独で成果を上げることは出来ないこと、特にPKKとの戦闘に入ることはイラクのクルド人の賛同を得られないことを知っている。トルコと協働するために、トルコ政府に自分達を対話の相手とすることと、自分達を標的としないことを保障することを期待している。

しかし実際には、イラクのクルド人リーダー達がトルコ政府に誠意を示すためにできることは数多い。PKKに事実上目をつむることをやめることができるし、カンディル山を包囲し補給路を断つこともできる。PKKに武器の放棄でなくとも、長期の停戦をするよう説得することもできると考えられている。全ての考えと心配が口外されなかったことも確かだ。イラクのクルド人リーダー達は明日にもトルコから(もしくはイラン、あるいはアラブ諸国から)やって来るかもしれない攻撃に対して必要があればPKKを1つの予備軍とみなしているという可能性もある。

賢明にかつ合理的に行動するトルコというものは、何十年もの間イラクのバース党独裁体制の下に置かれていたイラクのクルド人の安全保障上の懸念を看過することはできないはずだ。地域政府はおろか、イラク国家の代表の立場にあるクルド人さえ交渉相手とせず、地域に経済制裁を適用し、武器を伴う戦闘を行うことによって脅威を与える政策により、イラクのクルド人に対PKKでトルコへの協力を強いることができるといった空想が現実のものにならないことは間違いない。逆にこうした政策がイラクのクルド人を反トルコ、親PKKの立場にする最短の方法であるかもしれない。もし目的が本当にイラクのクルド人を「たたく」ことではなく、PKKの無力化であるのなら、やるべきことは彼らと話し合い、彼らに脅威を与えることをやめ、経済的な互恵的関係をさらに深化させ、このようにしてPKKに対する協力関係を確実なものにすることである。


(※)フセイン政権下の1980年代に行われたアンファル作戦により約10万人のクルド人が虐殺され、数千の村が壊滅した事件に関する裁判。 参考:BBC(トルコ語)

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:12341 )