Gungor Uras ルポ:東アナトリアの寒村から(下)―水道管譲って下さい―
2007年11月06日付 Milliyet 紙
親愛なる読者の皆さん、私は太さ30センチのプラスチックの水道管6千メートルを譲ってくれるという慈善の心を持つ、管の生産業者の方を探している。毎日テレビや新聞で自社の広告を打っている大きな生産業者の1つが私に助力してくれると信じている。
私は水道管を自分の庭に引くつもりではない。バフチェサライへ持っていくのだ。こうすることでバフチェサライの住民の家の蛇口から水が流れてくるだろう。
ヴァン選出国会議員で国民教育相のヒュセイン・チェリキとヴァン県知事のオズデミル・チャカジャクは、バフチェサライの若い郡知事であるシャーバン・エルドアンの部屋で悩みを聞いている。私も部屋の隅に座って、やりとりを追っていた。バフチェサライの住民達が水の悩みを訴えている。
大臣が「投資プログラムに予算がなければ、今年は何もできない」という風に話すと、町長は「最低でも6千メートルのプラスチックの管を見つけて頂きたい。私がこの管を住民達に引かせましょう」と言った。そしてそれを聞いて私がその役目を買って出た。私が水道管を探すことになった。
バフチェサライの周辺は険しく農業ができない山々に囲まれている。1年の大半は雪に覆われる。このため農業ができない。だから地域は貧しい。
■クルミとハチミツが唯一の収入源
バフチェサライの元々の名前はミュキュス(ムクス)だ... 山から流れてきたミュキュス川が街の真ん中を流れている。下流でボタン川と合流している。ミュキュスは、1915年までアルメニア人が多数を占める街だった。アルメニア人から残された4つの修道院と1つの教会がある。トルコ人も17世紀以降ここに神学校やモスク、橋を建てた。アルメニア人と共存していた。
ミュキュス川に沿って鳥が運んできた種から育ったクルミの木が生えている。樹齢100年のクルミの木もある。クルミはバフチェサライの最も重要な収入源だ。年間1,500トンのクルミが生産されている。今年、殻付きクルミの値段はキロ当たり5新トルコリラ(約460円)だった。バフチェサライのクルミは小ぶりだが大変食味がよい。クルミと並ぶ最も重要な収入源は陸巣箱から取るハチミツである。
メティン・ソゼン教授を長とする環境文化価値保護財団(CEKUL)は、バフチェサライでクルミの木の本数を増やすため尽力している。郡庁付属のクルミの木の加工場を立ち上げ、若者達に手工芸を習得する道を開いた。郡庁は、クルミの木の伐採防止に努めている。
なぜならバフチェサライでは深刻なクルミの木の一斉伐採が起こったからだ。クルミの木は1トン当たり300新トルコリラになる(約2万8千円)。1本の木の重量は2トンから10トンだ。イタリアから大きな需要がある。このため不法に伐採されたクルミの木がミュキュス川に放たれて地域から持ち出された。
■町長のエピソード
しかしながら、クルミの木1本から採れるクルミの価値はヒツジ50頭分に相当する。ミュキュス川には斑点マスが生息している。川の両側には逆咲きチューリップが生えている。しかしこれらは今のところ経済活動に利用されていない。
皆さんがバフチェサライへ行っても、ホテルや食堂は見つけられないだろう。ナジ・オルハン町長が、食事と宿泊する場所を用意してくれる。町長のゲストハウスで寝泊りし、彼が切らせた子ヒツジを食べることになるだろう。
水道管を寄贈してくれる慈善の心の持ち主の生産業者の方が現れたなら、まず管の引き渡しのため、次いで管から流れてくる水を見るために、その慈善の心の持ち主と共に私もバフチェサライへ行くことをお約束する。
この文章をバフチェサライのナジ・オルハン町長に関する1つのエピソードで締めくくろう。
マフムト・ユルバシュがヴァン県知事だった時代に、あるコーディネーション会議で知事は、トルコ配電会社(TEDAS)の所長に「電気の通っていない村」を尋ねた。所長が電気の通っていない村を列挙した際、「バフチェサライのキチョフス村にはまだ電気を送ることができていません」と言うや否や、知事は立腹した... バフチェサライ町長のナジ・オルハンの方を向いて、「町長、町長、これは一体何て名前なんだ!この村になんでちゃんとした名前を付けなかったのか?」
ナジ・オルハンは答えに窮し、知事に次のように言った:「知事殿...、この村は山に狩りに行った狩人たちによってまだ発見されて間もない村です。私達もこの名前は全然気に入りませんでした。知事殿がバフチェサライにいらっしゃることをお待ちしております。我々の準備は万端です。来られたあかつきには皆一緒に、山に登って村を見つけましょう。式を開いてトルコ語の名前を付けましょう」。
Gungor Uras ルポ:東アナトリアの寒村から(上)
Gungor Uras ルポ:東アナトリアの寒村から(中)
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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:12404 )