アッバース大統領、ライス国務長官と会談
2007年01月15日付 Al-Nahar 紙

■ アッバース大統領、暫定的国境線による国家樹立の拒否を明言

2007年01月15日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

【ラーマッラー:ムハンマド・ハウワーシュ】

 アメリカの中東地域に対する相も変らぬ新戦略が、ブッシュ大統領のイラク・中東戦略刷新の発表によってもたらされた損害を収拾するためのアメリカの努力と交錯するなかで、パレスチナのマフムード・アッバース大統領はヨルダン川西岸地区のラーマッラーにて昨日、アメリカのコンドリーザ・ライス国務長官と会談を行い、パレスチナ人民に対する国際的な封鎖を解除する方法、「ロードマップ」案における第1段階を越えて最終的解決に向けた交渉を開始する可能性、犠牲祭の休暇に先立ってアッバース大統領とイスラエルのエフード・オルメルト首相の間で行われた会談で成立した合意から後退していることに関するイスラエルの立場、また挙国一致内閣樹立に関するパレスチナ内部での連絡・交渉について協議した。

 アッバース大統領はライス国務長官と会談した後の共同記者会見で、「私はライス国務長官に対して、暫定的な国境による国家の樹立を含むいかなる暫定的な解決をも拒否することを断言した...我々はそのような解決が今後の拠りどころたりうる現実味のある選択肢だとは思っていない」と表明した。

 2回の会談が行われ、1回目はアッバース大統領のライス国務長官に対する歓迎を主とする大規模な会合であり重要な主題が話題にのぼることはなかったが、2回目は2者会談であり、会談後にアッバース大統領は、「求められているのは国際社会および中東の様々な勢力が、争いやその結果として60年にわたってつづいてきた諸々の影響を終結させるために活発で継続的な行動を展開し、全トラックにおいて包括的で公正かつ恒常的な和平を実現し、中東地域とその人民が平和と安定を享受できるようになることである」と述べた。

 またアッバース大統領は、「私とライス長官は和平プロセスの再始動への道を開くための適切な諸条件を確保する必要性などの諸問題を議論した。それによって和平プロセスを有意味なものとし、ロードマップ案がうたっているように1967年に始まったイスラエルによる占領の終了につなげるとともに、イスラエル国家と隣り合って安全かつ平和に共存できる、エルサレムを首都とする継続的な独立パレスチナ国家の樹立というジョージ・ブッシュ大統領のヴィジョンを実現するためである」と付け加えた。

 また、「政治的解決のプロセスがそれに値するチャンスを与えられ、地域の人民の信頼を取り戻すためには、パレスチナ自治区におけるイスラエルの全ての入植活動を停止し、隔離壁の建設と土地の併合・拡大行為を停止し、さまざまなかたちをとったパレスチナ自治区および人民への封鎖を終結させ、占領当局の刑務所に収監されたパレスチナ人捕虜を解放し、侵攻と逮捕と集団懲罰の政策を停止すべきである。もっとも最近に実施されたそのような政策の実例がラーマッラー市内への侵攻であり、パレスチナ市民4人が殺害され、数十人が負傷し、人々の所有する設備などが甚大な被害を蒙っている」と述べた。

 アッバース大統領はさらに「ガザ地区において一斉に包括的な事態の鎮静化を確実に実施し、それを西岸地区に拡大することが必要である。この休戦がパレスチナ自治区全体で行われることこそ、休戦が確固たる継続的なものとなることを保証する」と述べた。

 またパレスチナ新内閣の組閣に向けた自らの努力について[ライス長官に]報告を行ったことを明らかにし、「我々は封鎖の解除と和平プロセスの再開をもって占領地を取り戻し、独立国家を樹立することのできるプログラムを有する挙国一致内閣の樹立のために行っている努力についてライス長官に説明した。できるだけ近いうちにそれを実現し、これらの努力が実りある結果をもたらして望ましい内閣が樹立されることを我々は希望し、そのために努力している。それがうまく行かなかった場合には我々は人民の意思を問うべく立法評議会選挙および大統領選挙を早期に実施する。パレスチナ国民の団結が重要であり、いかなる対立であれ解決のために暴力を用いて内部抗争の奈落に陥ることには絶対反対であることを我々は強調した。さらに我々は、法の支配を確立するとともに武器の所有を正式の自治政府に属する合法的な治安機関のみに限定するために全力をもって取り組む」と述べた。

■ ライス国務長官

 ライス国務長官は、今回の中東地域訪問は「ワシントンがこの地域への関与をつづけていく意向をもっており、ロードマップ案およびイスラエル国家と隣り合って共存できるパレスチナ国家建設を呼びかけるブッシュ大統領の見解に基づいた解決案の提示を真剣に望んでいることを示すものである」と述べた。

 また同長官は、中東諸国の政府がアメリカにもっと大きな役割を果たすよう要請していることに理解を示し、「中東訪問の中で私ははっきりと、アメリカが中東においてより大きな役割を果たすよう求める各国政府の呼びかけを繰り返し耳にした。私はこれこそが我々の進むべき道であり、ブッシュ大統領が自らに課したところの誓約であることを明言する」と述べた。

 続けて同長官はアッバース大統領に対する明確な支持を表明し、「我々は、特に困難な状況に置かれているパレスチナ人民に対する彼の指導力に感銘している」と述べ、パレスチナ人民がイスラエルと隣り合って自由で平和で民主主義的な生活を送り、国際社会全体の支持を獲得できるようになるために彼らを指導するアッバース大統領の努力を支援し続けることを明言した。

■ パレスチナ内閣

 パレスチナ自治政府内閣のガーズィー・ハマド報道官はアメリカの政策を批判し、「アメリカの政策は不変であり、何も変わっていない」と指摘し、「アメリカの政策は、いまだに傲慢さと尊大さをもって臨む政策であり、いわゆる穏健派を結集させていわゆる過激派を排除することを通してパレスチナの内部分裂を引き起こす、失敗した政策である」と述べた。

 またハマド報道官は、ライス長官の中東訪問はハマースが指導するパレスチナ内閣の「政治的方程式」からの排除を狙うアメリカの企ての一環として行われているとの見解を示した。しかし同報道官は、「ハマースは政治的方程式から排除されることはないだろう」と強調した。



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( 翻訳者:新谷美央 )
( 記事ID:4387 )