第23回ファジル音楽祭が開催:ポップス部門が設けられる
2007年12月23日付 E'temad-e Melli 紙
ホシャーヤール・エェテマーディーと彼のバンドが公演している様子(写真:アークー・サーレミー/エッテマーデ・メッリー)
ホシャーヤール・エェテマーディーと彼のバンドが公演している様子(写真:アークー・サーレミー/エッテマーデ・メッリー)

 ファジル音楽祭が23年目を迎えた。ここ最近のテヘランを覆う凍てつく寒さを払いのけるなら、コンサートが行われているホールに足を運んでみてはどうだろうか。光陰矢のごとし、第23回ファジル音楽祭の開幕からすでに3日が経ち、残るは6日となった。今年の音楽祭は記憶に残るものとなるだろうか。

 ポップス、呪縛を打ち破る

 「音楽」の名を冠した祭典が開催されてから23年が経つ。この間、ポップスはこの音楽祭から排除され、大きな空白となってきた。そのため、23年目を迎える今回の音楽祭で「ポップス部門」が設けられたことは、ある意味驚くべきことかもしれない。

 音楽祭の責任者を務めるカーンビーズ・ロウシャンラヴァーン氏も、この点を認めている。同氏によれば、ポップス音楽の技法にみられる無秩序ぶりがファジル音楽祭からこの種の音楽が排除されてきた原因であるという。

 その一方で、別の見方をする者もいる。ポップスが種々様々な制約、障碍、圧力に直面している時代にあって、ファジル音楽祭でポップス部門が設けられるとは実に滑稽である、というのである。彼らに言わせれば、ポップス・ミュージシャンはつねに、アルバム制作の際に許可を取得することが義務付けられている治安維持軍から妨害が入るなどの問題に直面している、そんなときに一週間の祭典で自由化に向けた措置が取られるとはどうしたことか、というわけである。

 もちろん、ファジル音楽祭の責任者ロウシャンラヴァーン氏は、それとは別の見方を示している。同氏は、全てのポップス・グループに対して音楽祭への参加を呼びかけたと述べる。彼によれば、アンダーグラウンド音楽/オーバーグラウンド音楽といったものは存在せず、原則的に言ってポップスはアートとして何ら禁止されるものではないというのだ。

 ロウシャンラヴァーン氏は、ホシャーヤール・エェテマーディー・グループが内務省ホールでコンサートを開いたことを熱心に指摘している。報道によれば、音楽祭初日に当たる金曜日の夜に開かれたコンサートに出演したエェテマーディー氏は、ポップスがファジル音楽祭に登場したことは重要かつめでたいことだと語ったという。

 いずれにせよ、今年ポップスは自らを束縛してきた呪縛を打ち破ったことだけは確かなようだ。もちろん、自らの存在全てを公にすることができたわけではない。来年はより多くの、より多様なポップス・グループをファジル音楽祭で見ることができようになるかもしれない。

 若者のための音楽祭:巨匠らの姿は見えず

 ファジル音楽祭は、1364年〔1985年〕にヴァフダト・ホールで行われたのが最初である。この音楽祭は、別の二つの祭典であるファジル演劇祭とファジル映画祭に随分と遅れる形で催された。この遅れの原因について、革命後、特に「強要された戦争」〔※イラン・イラク戦争のこと〕の最初の数年間に音楽に対して課された制約の存在が、一部から指摘されている。
〔※「ファジル」とは「夜明け」の意味で、1979年2月1日にホメイニーが亡命中のフランスから帰国しその10日後の2月11日に革命が成就する、10日間を指す。「ファジル」はまた、クルアーン第89章の題名でもある〕

 いずれにせよ、ファジル音楽祭は当初、「革命の歌と曲の祭典」と題してテヘランで始められ、その後試行錯誤を経て現在に至っている。近年特に寄せられる疑問として、なぜモハンマド・レザー・シャジャリヤーンやモハンマド・レザー・ロトフィー、ホセイン・アリーザーデ、シャフラーム・ナーゼリー、モハンマド・ヌーリーといった巨匠たちが出演しなくなったのか、というものがある。

 先述のロウシャンラヴァーン氏によれば、近年ファジル音楽祭はこれまでの方針を変え、若いグループを応援することを特に目指しているという。いずれにせよ、巨匠たちが音楽祭に出演する/しないの問題はこれまでも議論の的となってきた。今年、音楽祭にコンペティション部門が追加されたことで、若者をターゲットとする方針にさらなる重心が置かれている。パヤーメ・ホナル、ナヴァー、マスターネ・ノウ、ジャヴァーナーネ・オスターデ・サリーミー、ジャヴァーン、コル・メフレガーン・グループ等々といった多くの若いグループがこのコンペティションに参加している。

 シャベ・ヤルダーと重なったことで観客の出足はイマイチ

 今年のファジル音楽祭はシャベ・ヤルダー(冬至)や犠牲祭と時期が重なってしまったために、音楽祭初日及び二日目の観客の出足は鈍かったようだ。「ルーダキー」というグループのボーカルを務めるアブドル・ホセイン・モフターバードさんはメフル通信とのインタビューで、音楽祭初日に「イラン人の玉座」ホールで行われたコンサートでは、ホールは半分程度しか埋まらなかったと語っている。

 彼は次のように語っている。「前売り券の販売状況について担当者たちに聞いてみると、全部売り切れたって言うんだ。ところがいざコンサートの時間になると、ホールの一部が空席になっている。どうしたんだろうと思って原因を訊いてみると、担当者曰くシャベ・ヤルダーや犠牲祭と重なったことが、観客が少なかった原因だろうって言うんだ。残念だけど、バンドの士気にもかなり悪い影響があったよ」。

 なお、「ルーダキー」はデイ月4日火曜日〔12月25日〕にも夜8時半から同じホールで二回目の公演を行う予定となっている。他方、ファールス通信の報道によれば、音楽祭初日に内務省ホールで行われたホシャーヤール・エェテマーディーのコンサートでも、同ホールのバルコニー部分が空席になっていたという。残りの6日間、これらのホールが観客で賑わうのかどうか、見守りたい。

 アーリヤーン、盛況が予想

 デイ月3日及び4日〔12月24日と25日〕に行われるバンド「アーリヤーン」のコンサートには、多くの観客が詰めかけることが今から予想されている。特に、アーリヤーンはテヘランでクリス・デ・バーとジョイント・コンサートを行う予定となっており、注目を集めているのだ。

 アーリヤーンは1378年〔1999年〕に活動を開始したバンドで、「史上初のイラン人ポップス・グループ」との異名をもつ。「ひまわりの花」(1379年=2000年)、「ところで愛」(1380年=2001年)、「終わりなき時まで」(1383年=2004年)、「ナショナル・チームに捧ぐ、イランよ永遠なれ」(1384年=2005年)などのアルバムを発表している。

 アーリヤーンの他にも、ハミード・アスギャリー・グループの公演も、好評を博することが予想されている。このグループは今夜夜8時に、「ケシュヴァル大ホール」でコンサートを開く予定だ。

 国際的な注目を集めるレイリー・アフシャール

 ファジル音楽祭国際部門でも、今年はフランス、トルコ、オーストリア、インドなどのグループが参加する予定だ。このような中、イラン人ギタリスト、レイリー・アフシャール〔Lily Afsharの表記で活躍中〕の出演が特に重要だ。彼女は国際的な舞台でも、「2000年度最高のクラシック・ギタリスト」といった称号を勝ち得ている。昨晩、芸術文化会館(アルスバーラーン)で公演した彼女は、今日もニヤーヴァラーン文化会館で夜6時より舞台に立つ予定だ。レイリー・アフシャールはワシントン・ポスト紙から「比類なきギタリスト」と呼ばれ、これまで多くの賞を受賞している。

 ファルハード・ファフルッディーニー指揮のナショナル・オーケストラやフーシャング・カームカール指揮のテヘラン・シンフォニー、モハンマド・ジャリール・アンダリービー・グループ、マスウード・シェアーリーをリーダーとするハムサーズ・グループ、パリー・ザンギャネをリーダーとするパリー・ロフ・グループ、マーニー・ラフナマー・グループなどが、今年のファジル音楽祭に出演する注目株である。

〔後略〕

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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:12763 )