イラクの政治学者たちがベーカー=ハミルトン報告を批判(サバーフ・ジャディード紙)
2006年12月26日付 al-Sabah al-Jadid 紙
■ イラクの政治学者ら:「ベーカー=ハミルトン報告はイラクにおいてアメリカが抱えている問題の解決策に過ぎない」
2006年12月26日付サバーフ・ジャディード紙(イラク)HP1面
【バグダード:ロイター】
ベーカー=ハミルトン委員会の報告書に対し、報告はイラクが直面する諸問題の解決ではなく、イラクにおいてアメリカ政府が抱えている問題の解決を図るものであるとして去る日曜、イラクの有識者たちが批判の声を上げた。
イラク高等教育省はバグダードにあるナハレーン大学構内で有識者会議を開催し、バグダード大学とナハレーン大学所属の政治学者たちが出席、イラク高等教育省のフィールワーン・アル=ハイラーニー次官から“イラク最高の政治学者たち”とのお墨付きを得た5人のイラク人学者が、今月6日にワシントンで発表されたベーカー=ハミルトン委員会の調査報告を取り上げた。
ナハレーン大学のウィサール・アル=アッザーウィー政治学部長は、「ベーカー=ハミルトン委員会の報告書はイラク問題の解決策を何一つ提示しておらず、イラク国民の利益ではなく米国の利益について語っている。また2003年以来の失敗に対する責任の所在も全く明らかされていない」と述べた。
さらにアッザーウィー女史は、「報告書はイラクにおけるアメリカの試みを評価し、その成功と失敗の原因を探ることを目的としているが、それはアメリカが次に採るべき政策を補佐するためだ。報告書はイラクの悲劇に目を向けておらず、イラクの利益よりもアメリカの利益を優先させている」と述べ、「この報告書はイラク問題の解決においてイラク人により重要な役割を認めていない」「この報告書の題名にもなっている“共に前へ”という言葉はいまや手の届かない目標になってしまった。現に起きている事件が映し出すイラクが抱える問題は、もはや制御できる域を超えている」と指摘した。
国際関係を専門とするナハレーン大学政治学部のフィクラトゥ・ナーミク・アブドゥルファッターフ教授は、「報告書はイラクにおけるアメリカのジレンマの深さを表現している。この報告書はイラク問題という深い泥沼からアメリカを救い出す方法を探すために提出されたもので、法律的な意味でも、また政治的な意味でさえ、イラクの“真実”を調査する方法を探るものではない」と述べた。さらにアブドゥルファッターフ教授は、「報告書は問題点の指摘に努め、委員会メンバーは争いや政治的恐喝とみなされるような行為を避けるよう留意し、現状を明確にしてそれを乗り越える道筋を示した」と述べた上で、「報告書の内容で最も重要なのは、イラク戦争に突入する際には単独で決定を下したアメリカが、もはや単独ではそこから抜け出せず、苦境から救い出してもらうために多くの手助けを必要としているということだ。中東の諸問題はそれぞれが関係しあっていて、アメリカはアラブ-イスラエル紛争やレバノン危機といった諸問題を同時に解決するよう努めないことには出口を見つけられないであろう」と指摘した。
バグダード大学の政治学者アブドゥルジャッバール・アハマド教授は、「報告書はイラク当局ではなくアメリカ政府向けだ」と述べ、「報告書は79もの提案を含んでいるが、それを成功させるためにはより多くの、またより大きな努力を必要とするものばかりである。首に刃を当てられたような状態のイラク人には時間が無い」とつけ加えた。
またバグダード大学の政治学部長であるアーミル・ハサン・アル=ファイヤード教授は、報告書の有意義な面を検討し、イラクの国益にかなう形でその解決を導き出す任務を負った中立的な立場のイラク研究委員会の設置を呼びかけた。
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( 翻訳者:垣平浩明 )
( 記事ID:4288 )