キプロスのギリシャ住民は、島の分離あるいは統合に向けたメッセージと見られていた選挙で、解決に向けた交渉推進を選択した。
2004年にアナン国連事務総長(当時)による和平案を拒否したキプロス政府のリーダーであるタソス・パパドプロス氏が、意外な形で決選投票に進むことなく敗北した。解決策の面で穏健なメッセージを出しており民主運動党(DISI)が支持するヤンナキス・カスリデス氏と、議会議長であり労働人民進歩党(旧共産党)書記長のディミトリス・フリストフィアス氏が、決選投票に残ることとなった。
大接戦となった選挙での得票率はカスリデス氏33,51%、フリストフィアス氏33,33%であった一方、パパドプロス氏は31,78%にとどまった。大統領は、2月24日日曜日に予定されている決選投票で明らかになるだろう。EU加盟国のある外交官は、国際舞台では悪いイメージを抱かれているパパドプロス氏が脱落したことで、和平交渉のための「好機」が生じたと強調した。
アンカラのトルコ政府は、この結果に慎重に対応している。本紙に向けコメントを伝えた外交筋は、労働人民進歩党がアナン和平案に反対票を投じたことに触れつつ、「新大統領選出は単に交渉開始を可能にするにすぎない」と評価している。
新大統領は、パパドプロス氏支持者の動向で決まるだろう。労働人民進歩党が2003年の選挙でパパドプロス氏を支持していたことが、共産主義者の長であるフリストフィアス氏を有利にしている。国民投票に反対したことによって「反対者」と名づけられたパパドプロス氏支持者たちが、アナン和平案に「イエス」と言った民主運動党よりも労働人民進歩党を支持するであろうことは明白だといわれている。
結果について本紙に論評をおこなった民主運動党の執行部メンバーのカテリネ・クレリデス氏は、パパドプロス支持者が労働人民進歩党に投票するという予想に対し「可能性があるし、理にかなう」と答えた。元キプロス大統領であるグラフコス・クレリデス氏の娘である同氏は、「ただしパパドプロス支持者は、敗北の原因を労働人民進歩党にあると見ている。しかも、連立にひびが入り、2党の間には深刻な問題があった」と話し、カスリデス氏優勢を示した。
民主運動党党首は、大統領は選出された場合、翌日にタラート北キプロス・トルコ共和国大統領の公邸を訪問する意向を明らかにしたという。キプロスのギリシャ系記者たちは、決選投票を前にした政治交渉も重要な要因としてみている。労働人民進歩党と民主運動党が大きな喜びに包まれる中、敗北を認めたパパドプロス氏は「国民は判断し、決断した。その選択は必ず尊重されなければならない」と語った。
■ 無料フライトが勝敗を決した
専門家たちは、パパドプロスの脱落を、ロンドンからの無料フライトで投票所に送られた有権者たちと結びつけている。とあるアナリストは、この人々の多くが学生や若者であったことを明かし、若い世代は総じて労働人民進歩党と民主運動党を支持していることに注目した。
一方パパドプロス氏は1974年の平和活動(*トルコ軍のキプロス進駐)を目にしている年配の世代からより支持されていた。選挙は、事前のアンケートが示したとおり非情なものとなった。決選投票にすすむカスリデス氏は、900票差でフリストフィアスを上回った。投票率が90%にのぼった選挙で、パパドプロス氏はライバルたちに約5千票の遅れをとった。
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( 翻訳者:川原田喜子 )
( 記事ID:13156 )