イスラエルと湾岸諸国のビジネスを通じた関係
2008年09月20日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ イスラエル人ビジネスマン、湾岸油田防衛プロジェクト数億ドルを落札
■ 元シャバク、モサド幹部らがアラブ・イスラム諸国で活動
2008年09月20日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面
【ナーシラ:ザヒール・アンドラーウス(本紙)】
イスラエル人ビジネスマン所有のスイス企業が、某湾岸国の国内セキュリティに関わる、価格数億ドルのプロジェクトを落札したことが明らかにされた。どの湾岸国かは現時点で不明、スイス企業は米系イスラエル人ビジネスマン、マーティ・クハーフィが有し、AGTという名称である。
消息筋によれば、プロジェクトは国防部門、軍備に関わるもので、その湾岸国に安全と情報を提供することを目的とし、最新の兵器システム活用のガイダンス、国境防衛並びに、人質事件、クーデター、石油施設を含む戦略拠点の占拠等の謀略阻止のための訓練が含まれる。
また、クハーフィは最も成長している企業とみなされる"STG"社の社長でもあるが、同社は以前、合衆国をはじめとする世界各地の空港警備機関に技術や設備、情報を供給する分野において、イスラエル航空産業界と密接な関係にあった。イスラエル航空産業関係者がハ・アレツ紙に述べたところによれば、見解の相違のためSTGとの関係は数ヶ月前に解消されている。
イスラエル側の情報によれば、元空軍司令官エイタン・ベン・アルヤーフーも同社社員であったが、企業が合衆国外で活動するようになると辞職した。しかし、軍、公安機関(シャバク)、諜報機関(モサド)の元将校ら数十名は依然として同社で働いている。北テルアビブに本社を置くクハーフィ所有の別会社「ロジック」でも同様にイスラエル治安機関の元幹部らが働いている。
イスラエル紙によれば、航空産業並びにセキュリティの最新技術を提供する「アル=ベイト」社の幹部らも最近までクハーフィ所有の会社で働いていた。クハーフィ企業側のスポークスパーソンは、世界各地における同社の活動は全てイスラエル保安省との協調の元に行われている旨述べている。
クハーフィは、アメリカに移住したイスラエル人であり建設業と土地売買で財を成した。2001年の911以後、「国家保安」と称するビジネスをはじめイスラエル治安機関との連絡を確立、それら機関から退職した幹部らを雇用するようになった。数年前、ヨルダン・イスラエル国境に両国和平推進のためとして大学の設立を企画したが計画は実現しなかった。
イスラエル紙の情報分析専門家によれば、イスラエル軍将校や元の国家保安委員長らが社長を務める会社は10以上あり、その中に航空機関連の数社が含まれる。これらの企業は近年、アラブ・イスラム諸国での事業を活発に行うようになっており、その中にはイスラエルと外交関係のない国もある。
(中略)
同イスラエル紙専門家は、イマード・ムグニヤ殺害後、イラン諜報機関やレバノンのヒズブッラーによる報復としてのイスラエル人ビジネスマン拉致、殺害を懸念するテロ対策局が、彼らにアラブ・イスラム諸国へは入国しないよう警告している背景において、このようなビジネス活動は種々の疑問を呼ぶと述べている。
また、同専門家は、この警告自体がイスラエル治安機関の置かれた矛盾を明らかにしていると指摘する。合衆国と良好な関係をもつためイランの脅威にさらされているアラブ諸国向けにイスラエルの治安設備や兵器を輸出する事は、セキュリティ産業の振興につながる。一方で、そのような関係は、ヒズブッラーによる拉致を容易にする。実際、アブダビ出張の際に拉致されたイスラエル人ビジネスマンがいる。
このイスラエル紙の分析によれば、湾岸の数首長国でイラン企業が活動しており、それらは革命防衛隊やイラン諜報機関の隠れ蓑である。
この記事の原文はこちら
( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:14741 )