キャヴィール国立公園、チーターの「屠殺場」に
2008年10月09日付 E'temad-e Melli 紙

ここ最近、キャヴィール国立公園はあらゆる方面から、侵略と破壊の対象となっている。同国立公園には危険を知らせる警報音が再び鳴り響いており、イラン・チーター絶滅へのカウントダウンが始まっている。

 このカウントダウンはもはや一ケタ台の領域に突入している。問題をさらに深刻なものにしているのは、ある環境保護の当局者が明らかにしているように、国立公園内に生息する貴重な種が多数、軍事演習によって殺されているという事実だ。

 キャヴィール国立公園はイランの沙漠地帯にあり、環境保護区に指定されている。沙漠地帯特有の種や生態系、独自の植生を有しているのも魅力だ。

 キャヴィール国立公園はセムナーン州にある。保護区の広さは44万ヘクタールで、テヘラン州ギャルムサール県から南東50キロに位置している。国立公園を構成する一部の地域は、1343年〔西暦1964年〕から環境庁の管轄する保護区に指定されてきた。同国立公園には、約70頭のイラン・チーター、600頭の野ロバが生息している。

 キャヴィール国立公園は、環境庁の話では、人の住む住居も鉱山もなく、家畜を放牧する許可も与えられていないイランで唯一の国立公園である。この国立公園は乾燥地帯が有する生態系の典型例であり、雨量が少ないことから農業を営むことは不可能だ。にもかかわらず、一部の植物が生育し、繁殖することは可能であり、そのため一部の動物も多く生息している。

 同国立公園に固有の動植物は驚くべき方法で厳しい環境に適応しており、環境保護政策のお陰で、ある程度の繁殖に成功している。平原は沙漠・半沙漠地域に特有の植物で覆われ、ジェイビール〔鹿の一種〕やガゼルなどのほ乳類、さらにはチーターや野ロバといった貴重な種の生息地を提供している。

 しかし、国立公園内を軍用車が走り回り、数々の大規模な軍事演習が実施されてきたことで、現在チーターの数は50頭以下にまで落ち込んでいる。しかし現在この数字に関してですら、正確なところは確認されていないというのが現状だ。

 環境庁野生生物生息地域・地域問題局のアミール・アブドゥース総局長は、国立公園内での軍事演習の実施に異議を申し立て、「国立公園内ではこれまで、狩猟やその他の行動を行う許可が下りたことはなかった。しかしこと軍事問題となると、そういった制限は無視されてしまう。われわれには〔国家の〕戦略上のオペレーションに口を挟み、それを阻止する権利はないのだ」と述べ、さらに次のように付け加える。「この地域には50頭のチーターが生息しているが、軍事演習の過程でそのうちの一部が殺され、最新の数字については、もはや何も情報がない。『この地域は〔国家の〕戦略上の問題の下にある』という一文だけでもって、自然環境は沈黙を余儀なくされているのである」。

 この公園には、貴重で固有な動物や鳥類が生息しており、1343年〔1964年〕に希少動植物の保護区の一部として認知され、1355年〔1976年〕に「国立公園」に格上げされた。

 同国立公園内の山岳地帯には、ステップ地帯に特有の植生が広がっており、野生の山羊や羊などの山岳動物も数多い。また、野鳥の多様性という点から見ても、この国立公園は特別の重要性を有しており、地域固有の野鳥であるキャブクやティーフー〔いずれも鷓鴣(しゃこ)の一種〕といった鳥がいる。これに加え、フラミンゴやアーングート〔ガチョウの一種〕、サルサブズ〔詳細不明〕、フートカー〔カモの一種〕といった渡り鳥の大群が、毎年周囲の池や塩湖に集まってくる。

 さらにキャヴィール国立公園は、多様で貴重な動植物の宝庫であるだけでなく、そこには「シャー・アッバースィー(ガスレ・バフラーム)」という名の隊商宿やハラムハーネ〔王や有力者の妻や娘が暮らす場所、内宮〕跡などの歴史的文化財も存在する。

 この国立公園は、西にイラン中央沙漠が、東に塩湖があり、人が簡単に立ち入ることを許さない。しかし残念なことに、軍事演習は環境のことなどお構いなしだ。毎日のように、チーターのような動植物の絶滅の危機が叫ばれる一方で、国やセムナーン州の環境行政の責任者らはこれに何の反応も示していない。

 このような中、新たに石油省が石油の採掘を行うために同国立公園に触手を伸ばしているとの報道が、環境保護活動家らの反発を招いている。しかし石油省による国立公園への進出は依然として続いており、その阻止に動いている機関は存在しない。

〔中略〕

 セムナーン州環境局のホセインアリー・エブラーヒーミー=カールナーミー総局長は、国立公園内の保護区に点在しているチーターの数について、次のように説明する。「チーターやその他のネコ科動物の頭数を数えることは不可能だ。頭数を数えるためには目視による以外ないが、そのようにして得られたデータは裏付けのきちんとした、信頼に足るものではない。例えばここ数年間、セムナーンには50頭のチーターがいるといわれてきたが、それは現実的ではないように思われる」。

 「われわれがチーターを保護することはできない。われわれにできることは、ガゼルやジェイビールといったチーターのエサを保護することだけだ。しかし軍事演習の影響により、遺伝子の突然変異などがチーターの主要なエサとなる草食動物に生じる可能性がある」。

 エブラーヒーミー総局長はこのように述べ、さらに「軍事演習が引き起こしたストレスが、チーターや草食動物の遺伝子の突然変異に直接影響を及ぼしている」と説明する。

 ガス会社や石油省が三年前からキャヴィール保護地区を破壊し始めてから、今やキャヴィール国立公園への立ち入りは完全にオープンなものとなってしまった。〔‥‥〕沙漠地帯で一本の灌木が生長するのには、何年もの歳月が必要だ。そのため、キャヴィール国立公園での石油採掘・ガス貯蔵プロジェクトは野生生物に甚大な被害をもたらすだけでなく、砂漠化の進行の原因にもなる。それは最終的に草食動物を死の淵に追いやることになるのだ。

〔後略〕

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
関連記事(イラン・チーターの死骸が発見)

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:14879 )