英TV放映のトルコの知的障害児童施設の惨状
2008年11月07日付 Radikal 紙

セーラ・ファーガソン公爵夫人がトルコの児童養護施設で撮影した映像が、イギリスのテレビで「ヨーロッパを恥ずかしめる光景」という語りとともに放映された。
 
イギリスのテレビ局(ITV)のニュース番組「ITV トゥナイト」が、「公爵夫人と娘たち:彼女たちの秘密の任務」というタイトルで、トルコの2ヵ所の児童養護施設で隠し撮りされたという映像を放映した。番組でイスタンブルのゼイティンブルヌと、アンカラのサライの児童養護施設だと説明された2つの場所で隠し撮りされた映像は、「ヨーロッパを恥ずかしめる光景」というナレーションとともに視聴者に披露された。

番組プロデューサーのクリス・ロジャー氏は、以前にも2006年にルーマニアの児童養護施設で同様の番組を制作したことに触れる一方、今回は児童問題に敏感な姿勢をとることで知られるセーラ・ファーガソン公爵夫人と共に、「ヨーロッパの忘れ去られた子どもたちを撮影したかった」と説明した。クリス・ロジャー氏はまた、共同で番組制作をしようという提案がセーラ・ファーガソン公爵夫人側から来たとも述べた。

番組では、2人の素晴らしい娘を持つ母親として家で過ごす代わりに、児童問題に傾倒したいというファーガソン夫人の発言を放映し、ルーマニアの孤児院には娘のベアトリス王女(ヨーク公爵嬢ベアトリス王女)、トルコではもう一人の娘、ユージェニー王女(ヨーク公爵嬢ユージェニー王女)が侯爵夫人に同行したことが明らかにされた。
イスタンブルを「アジアとヨーロッパを結ぶ地理的位置にある大都市」と説明した番組内でトルコは、イギリス人にとって「人気のある観光国」として紹介された。しかしトルコで番組製作者が歩き回った場所を、観光客は見ていないとし、「この大国には子どもたちを、特に障害のある子どもたちを置き去りにするたくさんの両親がいる」と述べた。そして、公爵夫人と娘は「このトルコ」を調査するために来たと紹介された。
 番組ではファーガソン公爵夫人と娘のユージェニー王女の意見も放映された。ユージェニー王女は、自分の母親が何をしているのかを見て、そして母親の手助けをしたかったと、トルコ訪問の理由を説明した。
 トルコがEU加盟へ向け努力していることを紹介し、にもかかわらず、この国ではまだ深刻な人権侵害が行われているという主張がなされた。

■ゼイティンブルヌの施設に「寄付者」として潜入

公爵夫人とITV制作班の最初の訪問先は、ゼイティンブルヌにある知的・身体障害の子ども60人が入所する施設だったという。公爵夫人はこの施設に(身分を隠し)「ひとりの寄付者」として入ったとされた。
 番組は、トルコでは、障害を持つ子どもたちが両親によって捨てられることが多いとし、「トルコ人の両親はこれらの子どもたちを恥ずかしいと思っている」と総括した。公爵夫人とITV制作班のゼイティンブルヌの児童養護施設への訪問が、施設で大混乱を引き起こしたとのべ、ここに入所している子どもたちの顔や体に、切り傷、怪我、そしてアザがあるとした。

ある子どもの腕が「着ている服の中から出せないようにされており」、また別の子どもが、ファーガソン公爵夫人の傍に座っているとき絶えず前後に揺れていることに注目し、ある専門家の「関心を払って欲しいのに、期待している関心を払ってもらえない知的障害者の子どもの行動である」という解釈を紹介した。
番組ではトルコが子どもの人権に関する国際条約に加盟する国であるにも関わらず、この種の光景が繰り広げられていると主張され、セーラ・ ファーガソン公爵夫人の娘でエリザベス2世の孫、ユージェニー王女が涙を流す映像が、彼女が見たことからどれほど影響を受けたかに関する表現と共に放映された。ユージェニー王女は、「これら見たことを説明するのはとても難しい」と述べた。

トルコでは一日に40人ほどの捨て子があるとする一方で、トルコ政府は、ITV制作班の行った隠し撮りを違法とし、撮影が子どもたちにマイナスの影響を及ぼすと抗議していることが明らかにされた。
ゼイティンブルヌの施設にいる子どもたちが一日中、同じ部屋で何もせずに置かれていること、軽度の障害を持つ子どもたちと重度の知的障害を持つ子どもたちが同じ集団で生活させられていることも、この番組内で問題とされた。

■サライ児童養護施設

番組プロデューサーのクリス・ロジャース氏は、次の訪問先がアンカラのサライ郡にある児童施設だったとし、「調査が深まるにつれて、恐ろしい光景も増えた」と述べた。アンカラで先発チームが通りの撮影を行った際、警察に制止・警告されたと言い、このために施設には変装して入る必要性を感じたという。セーラ・ファーガソン夫人が、施設にいたときに、逮捕されるかもしれないという恐怖を感じたと語る場面も放映された。

セーラ・ファーガソン夫人に随行した、子どもへの支援目的で設立されたNGOのメンバーらによる、「トルコで適用されているシステムでは子どもに希望はない」という主張も番組で紹介された。番組では、また、セーラ・ファーガソン侯爵夫人の、「つまり、ここではこうした子どもたちは、死刑を言い渡されたものとして生まれたことになるのです」という言葉も紹介された。

700人の子どもが暮らし、収容人員数を千人に増やすための作業が続けられているサライ児童養護施設でみたものは、混乱しきった部屋や、大半が乳児期から入所している子どもたちだったとする番組プロデューサーは、廊下で寝ている男の子を映し出した。子どもは外に出してもらえずにおり、廊下の陽の当たる場所に寝て、日の光を顔にを感じようとしていると説明された。

また他の部屋では、一日中ベッドで過ごさなければならない状況に追いやられている子どもたちがいることが紹介され、何十台ものベッドに寝ている様々な年齢層の子どもたちが、ベッドに縛られている証拠があると主張された。この証拠のひとつと言う、布で作られた紐も画面に映し出された。

別の部屋では、手をベンチに縛られた、年齢の高い子どもたちの姿も映し出され、番組「ITVトゥナイト」は、ある子どもが、注意欠陥多動性障害(ADHD)であるという理由で箱に入れられている様子の映像を画面に映し出した。番組ディレクターらは、その同じ子どもが少し後で、別室で助手スタッフと本を見ている時の映像も流し、子どもが注意欠陥多動性障害(ADHD)であるという主張の信憑性を疑ったと述べた。
番組アシスタントのクリス・ロジャー氏は、サライ児童養護施設に滞在した2時間のあいだに、施設の半分しか見ていないと推測する一方で、セーラ・ファーガソン夫人も、施設にいるとき鼻についた匂いが、人間の骨の髄に響く種類のものであったと述べた。

■話題はトルコのEU加盟問題に

番組はトルコのEU加盟交渉にむけたプロセスをイギリスも支持していると述べ、ゴードン・ブラウン首相のこの支持を強調した演説からの引用も流した。番組では、「イギリスはこの条件が改善されないのに、トルコ支持を続けるのか?」と問いかけられた。
また番組に参加したある法律家は、トルコのEU加盟についてはよく考える必要があるとのべ、トルコが人権に関する基準を高めるとした約束を守るか、守らないか疑問だとの発言も放映された。

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( 翻訳者:林奈緖子 )
( 記事ID:15080 )