共和国の生みの苦しみが「希望」を生んだ:アイシェ・クリンの新作『希望』
2008年12月08日付 Yeni Safak 紙

アイシェ・クリンは、民間の歴史伝承をその著作『希望』で書き伝えている。『別れ』に続くこの最新作では歴史が、著者の家族の体験を通して描かれている。

アイシェ・クリンは、『別れ‐占領下の街のある邸宅』という題の著作で、オスマン帝国末期占領下イスタンブルの邸宅で起こった出来事を描いた。シリーズの最初の作品となった『別れ』の次に、『希望―人生は流れる水のよう』という題の二番目の著作が先日出版された。クリンは、この小説で自身の家族が体験した話を読者と共有している。父と母の子供時代、彼らの出会い、オスマン帝国滅亡後祖父アフメト・レシャトの流刑先からの帰還と新時代への適応過程、大叔母サバハトとアルメニア人青年との間の恋、共和国創設期の苦難の日々がこの小説の題材となっている。

ここ数年の間手がけた著作で、公式の歴史に対し一般市民の民間の歴史伝承を描き出しているクリンは、公式の歴史が事実を完全な意味では映し出していないと述べる。著者は、歴史の証言者となる小説を書くことを、彼女自身が、歴史的な事件の中に身を置いた家族の一員であったことに由来するとしている:「共和国が設立されるとき官僚であった父、オスマン帝国が滅亡するとき財務責任者であった祖父、そして彼らの記憶、記録、書簡があります、私の手元には。これらを使いながら、小説の形式で書くことを選択します。なぜなら私は歴史家ではなく、小説家だからです。歴史をこの方法で探っていくことが必要だと信じているのです。」

■ 小説中、父が共和国を代表している

小説『希望』では、二つの家族の話を通じて共和国創設期の様子が描かれている。オスマン帝国滅亡後から共和国設立過程での苦難が、アナトリアの貧しい登場人物の生活を通して描写されている。クリンの父であるムヒッティン氏は小説中、共和国を代表しているという。著者は、共和国が設立された時代、自身の父のような希望に満ちた若者たちが、多くのことを成し遂げたと語る:「あの年月にはとても大きな興奮があったでしょう。祖国を失った者たちが、大きな希望をもって国民国家をつくるのです。貧困と困難をもこの興奮で乗り越えたのです。しかし、私たちは共和国創設期のこの興奮を続かせることが出来ず、すっかり失くしてしまいましたが、私たちには別に得たものがありました。今日、民主主義の理解は他の意味を得たのです。」小説『希望』は、アイシェ・クリンの誕生でその幕を閉じる。著者はこのシリーズの第三巻で自身の世代、また第四巻でその記憶や見たことを書くことを考えているという。

■ 小説では、恋の比重が歴史より重くなった

「この小説で、共和国創設期についてもっと詳しく書きたかったのですが話の展開上、サバハトとアラムの恋の話がその比重を大きく占めました」と話すクリンは、著作で大叔母サバハトとアルメニア人青年であるアラムの恋を微細に描写している。著者は、一組の男女の物語を通じて、トルコにおいて長年の間変わらないアルメニア問題に注意を引くよう努めたと述べた:「(昨年殺害された)フラント(・ディンク)のような人々はなお続いています。自身の立場から問題を起こす(ケマル・)ケリンチシズのようなメンタリティーの持ち主はトルコから消し去れないのです。」

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:西山愛実 )
( 記事ID:15287 )