ブッシュ米大統領、8年間の中東政策を振り返り実績を強調
2008年12月06日付 Al-Nahar 紙

■ ブッシュ大統領:「不成功や失望」もあったが中東の将来は明るい、と見解示す

2008年12月06日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

【ワシントン:ヒシャーム・ムルヒム記者】

 ジョージ・ブッシュ米大統領は、この8年間の中東に関する自身の政策や決定、すなわちサッダーム・フセイン体制の打倒、テロとの戦い、アラブ世界の民主化プロセスの支援、イランの核計画の阻止、イスラエルとパレスチナ人の間の和平「構想」実現の追求などにより、「不成功や失望」もあったものの、中東地域は「(政権を受け継いだ)2001年よりも、2008年にはより自由で希望のある、明るい将来をもつ地域」になった、との見解を述べた。

 ブッシュ大統領が中東における自身の業績を弁護したのは、ブルッキングス研究所サバン中東センターの年次定例会議での演説においてであった。任期の終わりに際して、自らの大統領としての統治に対するメディア関係者や分析家の評価のあり方に影響をもたらすべく、メディアとの一連の「お別れ」会見を行うなかでの演説であった。

 ブッシュ大統領は、ビル・クリントン前大統領の後を継いで2001年に権力の座に就いた際の中東が暗澹たる状況であったと述べた後、自らの任期末には全く相反する状況になったと主張した。そのイメージは、ブッシュ氏の中東政策に関する多くの分析家の評価と矛盾するものであった。 

 ブッシュ大統領は、パレスチナの故ヤーセル・アラファート大統領に言及し、当時のパレスチナ自治政府が「人民から金を奪い、和平を放棄したテロリスト」に率いられていたと主張した。当時のパレスチナのインティファーダについても、「大イスラエル」政策の実現を目指すアリエル・シャロンがイスラエル首相に選出されたこととともに、和平交渉の再開を非現実的なものにしたとの認識を示した。

 また、サッダーム・フセインが自国民を弾圧し、大量破壊兵器に関する国連の決議に挑戦を仕掛けたこと、シリアがレバノンに対して軍事占領を続けたこと、リビアやイランがテロを支援し、軍事目的の核技術獲得を追求し続けたことについても語り、中東地域で人権状況が劣悪な状態にあること、国民に自由がないことに言及した。

 続いて、2001年9月11日の攻撃以降の「アル=カーイダ」との戦いやサッダーム・フセイン体制の打倒などの対抗措置に言及し、故イラク大統領の体制と9・11事件には関係がないにもかかわらず、「サッダーム・フセイン打倒の決定は9月11日の攻撃と分けて考えることはできない」と明言した。また、ブッシュ政権のリビアに対する強硬な姿勢によって、リビアが大量破壊兵器の放棄を受け入れた、と述べた。国連安保理がイランに課している経済制裁にも触れ、米国はイランが核兵器を開発することを許さないとあらためて宣言した。さらに、ブッシュ政権が中東における政治参加を拡大させる取り組みを行ったこと、女性の政治参加を奨励したこと、投資を奨励したこと、などにも言及した。

 ブッシュ大統領は、イスラエルと平和的に共存するパレスチナ独立民主国家の建設を呼びかけたのは米大統領としては自分が最初であったと繰り返した後、昨年のアナポリス和平会議に言及し、それ以降も交渉は実質的に進展していると述べ、「イスラエルとパレスチナは未だ合意に至ってはいないが、双方にとって重要な進展があり、将来に向けて新たな信頼の基礎が築かれた」と主張した。

 また、自身の決定の一部が計画通りに実施されず期待を下回ったことを認め、例として「イラクにおける戦闘が予想されていたよりも長期にわたり負担も大きくなった」こと、「諸機関が[イラク国内での]拠点開設を躊躇したことで期待が裏切られた」ことを挙げ、さらに、和平プロセスに痛手を与えた逆風として「シャロン(イスラエル首相)の病気、パレスチナ選挙でのハマース(イスラーム抵抗運動)の勝利、テロ組織によるガザ地区支配」を挙げた。

 しかし、こうした失敗はブッシュ大統領の考えでは、実績を否定するほどのものではないという。ブッシュ大統領は実績について、「レバノン国民はおよそ30年ぶりにシリアの軍事的占領から解放され」、リビアは大量破壊兵器を放棄し、イランも今では国際社会から高まる圧力に直面しており、アル=カーイダは幾つかの国の支配に失敗し、今やアラブ世界ではイデオロギー的に拒絶されている、と例を挙げ、さらに、「イラクはアメリカの敵からアメリカの友人へ、テロの擁護者からテロと戦う者へ、野蛮な独裁制から憲法に則った多宗教・多民族の民主制へと移行した」と言及した。中東地域において最も複雑な問題、すなわちパレスチナ・イスラエル紛争に関してさえ、今や国際社会はかつてないほどに、パレスチナ独立国家の建設が全ての関係者の利益となるとの認識で一致している、と述べた。

 しかしブッシュ大統領は、いまだに中東には大きな難題がある、と注意を促し、中でも「イランとシリアがテロの支援を続けていることや、イランがウラン濃縮を続けていることは、いまなお平和にとって大きな危険であり、この地域の人々の多くがいまだ抑圧されて暮らしている(…)それでも中東でこの8年間に起こった変化は、新しい歴史的な始まりを告げるものであり、中東は今や暗黒と不安の章を閉じ、可能性や希望という言葉で書かれた章を開くのである」と述べた。次いで、新たな未来はどのようなものかと問うならば周りを見るべきだ、と述べ、「我々は中東で新たな物語を見ている。イラクの人々はインクのついた指を見せ(選挙での投票を指す)、レバノンの人々はレバノン杉革命で通りに繰り出した。国会選挙で女性たちが当選し、著述家たちは自分の夢を世界に伝えている。アブダビに超高層ビルが建ち、サウジアラビア国王が宗教間対話を主催している」と述べた。

 締めくくりとしてブッシュ大統領は、「イスラエルが民主的なパレスチナと平和に共存することが中東の地図に示される日がやってくる。カイロやリヤドからバグダードやベイルートまで、さらにはダマスカスやテヘランまでの各地の人々が、外交・観光・商業的に結びつき、独立した自由な社会で暮らす日がやってくる」と語り、「アル=カーイダやヒズブッラーやハマースは、地域中のムスリムがテロリストの考えの虚しさや彼らの大義の不正を認識することによって、社会の隅に追いやられる日がやってくる。その後、これらの組織は姿を消すだろう」と述べた。

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( 翻訳者:森本詩子 )
( 記事ID:15412 )