大統領選出馬をめぐる改革派内の動き、収まる気配なし
2009年02月15日付 Jam-e Jam 紙

【政治部】ハータミーが大統領選への立候補を正式に表明したことで、同師の出馬をめぐる憶測には終止符が打たれた。しかし「出馬するのか、しないのか」の新たな幕が、ミール・ホセイン・ムーサヴィーによって切って落とされたようだ。次期大統領選を取り巻く様相には、依然として不透明さが付きまとっている。

 「私かミール・ホセイン・ムーサヴィーのいずれかが出馬する」としたセイエド・モハンマド・ハータミーが出馬を表明したことによって、20年間にわたる沈黙を破って目立った活動を再開させた「戦争期の首相」ムーサヴィーは、再び隠遁生活に戻るのではないかと思われていた。しかしニュースサイト「キャラメ」の編集長で、ミール・ホセイン・ムーサヴィーの顧問の一人でもあるセイエド・アリー・レザー・ベヘシュティーが最近著したコラムは、このような予想を覆すものであった。

 ベヘシュティーは自身のコラムの中で、ハータミーとキャッルービーが立候補を表明したことを評価した上で、次のように明言している。「ミール・ホセイン・ムーサヴィーは独自かつ積極的に、大統領選及びイスラーム革命の新たな10年に参加し続けることになるだろう。適当な時期に、適切な状況のもとで、自らの参加のあり方について言明するだろう」。

 このようなミール・ホセイン・ムーサヴィー側の立場表明は、ハータミーが以前提示していた「私かムーサヴィーのいずれか」というスローガンが破綻したことを意味する。ミール・ホセインが時期尚早の出馬表明を受け入れなかったことを受け、セイエド・モハンマド・ハータミーはバフマン月20日〔2月8日〕に正式な出馬表明を行った。しかしハータミーとムーサヴィーいずれか一名が出馬するとした以前の立場とは逆に、両者がともに選挙戦に出馬する可能性が高まっているのである。

 その一方で、ハータミーの出馬表明が遅れたことで、選挙への出馬を決めた当初、他の改革派候補者のために出馬を辞退する可能性を残していた国民信頼党総書記のメフディー・キャッルービーは態度を変化させている。同師は「ヴァタネ・エムルーズ」紙と行った最近のインタビューの中で、「神に誓って出馬を辞退することはない」と述べているのだ。

 同師のこの発言は、「キャッルービーは最終的に、ハータミーを支持する宣伝を行った上で、出馬を辞退するつもりだろう」とする声に反発する形で出されたものだ。

 キャッルービーは、「このようなやり方はまったく受け入れられない」と述べ、以前自身が提案していた「調停評議会」案についても、「どんなアイディアにも賞味期限というのがある。このアイディアの賞味期限はすでに過ぎてしまった」と指摘している。

 メフディー・キャッルービー側のこのような明確な意志表明にもかかわらず、ハータミーは自身とキャッルービーが選挙で対峙することはないだろうと述べている。しかしここで疑問なのは、「闘う宗教指導者会議」、イラン・イスラーム参加戦線党、イスラーム革命聖戦士機構、及び「建設の奉仕者党」の一部から支持を受けているハータミー前大統領が、国民信頼党公認の大統領候補であり、建設の奉仕者党の一部有力者からも支持を受けているキャッルービーと、どのようにして妥協することができるのか、という点だ。

 キャッルービーは以前にも、話し合いを重視する姿勢を示しつつ、参加戦線党やイスラーム革命聖戦士機構と協議することはないだろうとの立場を表明していた。また上記二団体も、ハータミーこそ自党の推す最終的な候補者であるとの姿勢を崩していない。

 このような問題は、最終的に大統領選において改革派の票が割れるという事態を招くだろう。当然、このことは大統領選への立候補を視野に入れている人々にとっても、影響なしとは言えない。この問題の解決にいかなる方策が得られるのか、今後を見守るほかないだろう。

 もちろん、ミール・ホセイン・ムーサヴィーが大統領選に出馬する事態になれば、状況がさらに複雑化することは明らかだ。ムーサヴィーはこれまで様々な選挙で出馬要請を受けてきたが、自らの態度を示そうとはしなかった。しかし今回は一転して積極的な姿勢を示しており、メディアとのインタビューをいくつかこなす以外にも、様々な人物や団体と選挙について話し合いを行っている。

 もしこれらの話し合いがミール・ホセイン・ムーサヴィーの立候補表明へと最終的につながるようであれば、セイエド・モハンマド・ハータミーが彼のために出馬を辞退する可能性はある。しかしたとえそうなったとしても、ミール・ホセイン・ムーサヴィーがハータミー支持者のすべて、なかでも急進改革派として知られるイスラーム革命聖戦士機構から支持を受けられるとは思えない。

 他方、メフディー・キャッルービーのこれまでの発言を見る限り、改革派は選挙戦でのキャッルービーの存在を一つの確定的要素として視野に入れておく必要に迫られるだろう。

ハータミーの出馬と原理派の一本化へ向けた決意

 ハータミーの出馬表明は予想通り、対立する原理派陣営にも影響を与えた。なかでも重要なのが、原理派がマフムード・アフマディーネジャード擁立で一本化しつつあることだ。

 アフマディーネジャード以外の候補者擁立を口にし、あるいは二人の候補者を同時に擁立する案を提示していたグループも、セイエド・モハンマド・ハータミーの出馬表明を契機にアフマディーネジャード支持を公言するようになっている。

 例えば第8期国会の原理派議員であるアリー・モタッハリーは、原理派内の有力者2名を大統領選候補者として推し、そのうち一人を大統領に、もう一人を副大統領にする案を提示していたが、セイエド・モハンマド・ハータミーの立候補表明によって、もはやこの案は断念したと述べている。

 また、テヘラン市長のモハンマド・バーゲル・ガーリーバーフの一部支持者らも、同氏が立候補する可能性について言及していたが、ハータミーが立候補した場合はガーリーバーフが出馬することはないだろうと、以前から述べていた。

 このようなことから、ハータミーの立候補表明はこれまでのところ、改革派以上に原理派に影響を与えている。アフマディーネジャード一本化へ向けて、彼ら相互の距離を縮める効果をもたらしているのである。

フェダーイー「アフマディーネジャードに投じられる票を減少させるような動きは控えるべき」

 イスラーム革命献身者協会総書記のホセイン・フェダーイーは、政府に対する大規模な心理作戦の存在を指摘した上で、「原理派戦線で最大限の一致が得られない限り、アフマディーネジャードへの票を減少させるような動きは慎まねばならない。アフマディーネジャードへの票の流出を招くような行為は、いかなるものであれ、非難されるべきものだ」と述べた。

 ファールス通信の報道によると、フェダーイーは記者会見の席上で、献身者協会にとって「越えてはならぬ一線」とはホルダード月二日戦線〔=改革派のこと〕〔が政権を奪取すること〕であるとした上で、さらに次のように述べた。「アフマディーネジャードへの票が増えるよう努力しなければならない。原理派の団結にとって最も大切なのは、話し合いと協力である」。

 献身者協会総書記は、〔アフマディーネジャード以外の原理派の〕人物が立候補するとかしないとかいった議論は、〔改革派が仕掛ける〕心理作戦に他ならないとの見方を示し、さらに「この種の心理作戦は、時間稼ぎをし、原理派を停滞させ、派内の対立を煽り、改革派に福をもたらすことを狙ったものだ」とも語った。

 同氏はまた、浮動票を動かし、世論の同情を買うことが、ホルダード月二日派の狙いだとした上で、「この種の行動は、ホルダード月二日派の主要グループに対する批判をそらし、同派の過去の行状とその急進的イメージをぼかし、隠蔽する目的で行われているものだ」と喝破した。

 原理派の政治活動家である同氏は、このような行動はイスラーム革命体制にとってふさわしいものではないとした上で、「このような心理作戦は、我が国民には通じない。国民はつねに、この種の行動に対して否定的な態度を示してきたからだ」と論じた。

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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:15819 )