懸念される自殺の増加傾向:「イランにおける自殺の現状と予防策を考えるセミナー」
2009年01月29日付 E'temad-e Melli 紙
【サーナーズ・アッラーベダーシュティー】テヘラン医科大学、精神的・社会的健康および薬物依存研究グループにより、「イランにおける自殺の現状と予防策を考えるセミナー」が開かれた。
(中略)
同セミナーにおいて、保健医療教育省の精神健康局の専門家であるミートラー・ハーフェズィーは、昨日、世界における自殺の動向調査に触れ、次のように述べた。
「イランの自殺率は諸外国に比べれば低いと言えるが、西暦1984-85年から2005-2006までの自殺率の増加は、将来の懸念すべき状況を予測させる。」
ハーフェズィー女史によれば、調査データに基づくと、1984年3月-85年3月の自殺者が100万人中3.1人であるのに対し、2005年3月-2006年3月の自殺者は100万人中6人にまで増加しているのである。
(中略)
結婚は女性にとって自殺の要因に、男性にとって自殺減少の要因となる
ハーフェズィー女史は、死亡に関する総合的な統計システムがないことを批判し、この問題を自殺予防の計画推進における障害のひとつと見なした。しかし、彼女の言によると、多くの地区において各地区を担当する専門家がいることは、専門的な情報収集を手助けしている。「男性よりも女性の方が多く自殺[のための]行為を行なっている。しかし、その行為が実際に死に至る割合は男性の方が高い。」
保健医療教育省の専門家らの調査により、さらにもうひとつの統計が発表されている。同統計は以下のことを示している。「多くの社会において、結婚は自殺に歯止めをかける要因となっているにも関わらず、イランでは既婚女性の自殺率が既婚男性よりも高い。また、女性の就学率と自殺率は反比例する傾向がある。」
しかしこれらの問題のいずれにも増して専門家たちを心配させているのは、イランの自殺者の低年齢化である。ハーフェズィーの言によれば「イランの自殺者は15〜30歳であり、他国の統計と比較した場合、これはイランの若者たちにとって危険な指標となっている。」
「なぜなら、自殺者たちは様々な経済的・社会的な困窮を経験し、家族(配偶者や両親)との衝突や、学業や結婚の失敗、失業、著しい経済的な苦境などの末に、自殺するものだからだ。」
また、この調査に基づくと、自殺の際に男性は、女性よりも[確実に死に至るような]荒っぽい手段に出ていることになる。
ためらう自殺志願者を、メディアは決意させる!
上記の専門家の報告に続き、テヘラン医科大学の健康部門担当副学長で精神的・社会的健康および薬物依存研究グループ代表のシャフラーム・ハッラーズィーハーは、イランにおける自殺の発生と抑制におけるメディアの役割に注目して報告を行った。
彼は、出版物、本、映画といったメディアの影響を調査し、これらのメディアが人々に自殺についての情報を与えていることを指摘した。また、これらの事例のひとつひとつにおいて、具体的な例証に関する諸々の点に言及し、自殺の発生における上記メディアの影響を指摘した。
新聞各紙の事件欄、大衆文学や知識人文学の自殺の場面の描写、映画での自殺シーンとその結末の映像などが、ハッラズィーハー医師の調査が示した具体例である。メディアは、新聞の記者や通常の読者、テレビや映画の視聴者が考えている以上に、自殺の実行に影響を与えるのである。
ハラーズィーハー氏の調査については、イラン医科大学精神科の准教授であり自殺予防委員会の責任者であるセイエド・メフディー・ハサンザーデも、具体事例を挙げて説明した。
ハサンザーデ氏によれば、「アメリカではマリリンモンローの自殺の後、自殺率が10%増加した。また、ウィーンの地下鉄開通数日後に発生した自殺についての報道が、その地域での自殺の方法を変えたのである。」
彼は鬱病者の自殺を後押しするメディアの役割を非常に分かりやすい形で説明し、以下のように語った。「自殺しようとする人は内に迷いを抱えている。[自殺の決行に]必要なのは、最後の一言なのだ。ときに、その最後の一言というのが、一人の人間の死の方法に関する説明であったりする。」
自殺者に関する正確なデータの不在
自殺予防委員会のハサンザーデ委員長は、イランにおける自殺者の統計を現実に即したデータであるとは考えていない。
「自殺が社会的汚点であると考えられているが故に、自殺者の統計は正確ではない。つまり、自殺者の家族は、子どもや配偶者が自殺したと公表されることを恐れており、その代わりに死因を心臓発作のような自然死や、事故のような不自然死として公表している。]
「このような背景により、イランの自殺者の75%は報告されていないのだ。しかし、この実情のごく一部しか伝えていない統計も、薬物自殺が最もよく用いられる自殺の方法であることを示している。」
(後略)
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( 翻訳者:阿部文美 )
( 記事ID:15826 )