コラム:シャルム・シェイフにおけるガザ復興国際会議の意義について
2009年03月02日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ 政治的武器としてのガザ復興
2009年03月02日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム面
【アブドゥルバーリー・アトワーン(本紙編集長)】
本日、ガザ復興のための国際会議「シャルム・シェイフ会合」が、75の代表団を迎えて開催される。しかしその中には、ガザで1350名を殺戮した張本人(つまりイスラエル)も、そこを防衛し雄々しく戦った抵抗勢力も参加していない。かつて、ガザのパレスチナ人を屈服させ彼らを抵抗勢力に対して歯向かわせるために通行証と食糧が使われたが、今、ガザ復興というカードが、そしてそのための280億ドルという予算が、同じように使われようとしている。いや、より露骨にガザ住民にメッセージが発せられている。「この金と復興を望むなら、見返りは何かよく分かっているだろう。ボールはそちらの陣営にある」というものだ。
ドナー国はラーマッラー政権としか復興問題を協議するつもりはない。資金も復興計画も全てそのチャンネルを通される。抵抗勢力、つまり「ハマース」は徹底的に排除されている。
この「拒否権」は、イスラエルが一方的に停戦を決めた時に発効した。破壊の様子を視察に来た欧米と国連の使節たち、国連事務総長、EU代表、そしてトニー・ブレアに至るまで、彼らは頑として「ハマース」政府の責任者たちと会おうとはしなかった。ハマース政府からの書簡をオバマ新大統領に届けると言われた米上院代表団も、空手で占領エルサレムを後にした。
このような仕打ちに甘んじるハマース政府の「柔軟さ」は不可解である。個人としての尊厳(ハマース幹部らにとっての)や組織的尊厳(ハマース運動全体として)を犠牲にしても、攻撃によりひどく傷ついている大多数の人々のため援助を得たいというのだろうか。
また、イスラエルをこの会合から遠ざける理由も分からない。これで浮いた資金は、ガザを陸海空から攻撃するため、あるいはその武器に用いられ、国連施設を学校を、家々を破壊するというのに。6軒につき1軒が破壊されたという国際的統計がある。アメリカに任じられた現イラク政府は、前政府によるクウェイト侵攻の賠償金をまだ支払っている。それが現在までで135億ドルにのぼる。かつてドイツがホロコースト犠牲者に支払った賠償総額が130億、現在ならば約10倍の額面になる。
なぜイスラエルは例外とされるのか。数名の自国民を殺害したイラクのミサイルのために数億ドルを受取っている国が、ガザに残した破壊と犠牲に対して何ら補償せず、それがまかり通るのはどういう訳だろう。
主催国エジプトも含め今回の会議に参加するアラブ代表団は、この点を明確に提起し、この破壊の責任をイスラエルが負うよう主張すべきだ。ドナー国、そして、それらアラブの国々の資金で復興されたものを再度破壊すべくイスラエルが侵攻してこないように。
イスラエルは賠償責任を逃れ復興への資金提供を免ぜられるばかりか、更にこのプランから利益を得るのではないかと懸念する。再建に必要なセメントや鉄材を関連会社から輸入するなど間接的手段で、彼らは復興資金を手にすることができる。国境を支配するのは彼らで、ガザへの出入を制限できるのも彼らなのである。ラファハの通行所も同じ事だ。
このようなパレスチナ側の懸念、そして要望をシャルム・シェイフ会合へ伝えるには、民意を代表し責任を負うに足る強力なパレスチナ代表団が必要である。しかしこの点は楽観視できず、むしろ悲観させられる指標の方が多い。
パレスチナ各派が参加した一連の対話が成功裏に終了したと思われた1日後、アッバース大統領は、ソラナEU代表臨席の中、声明を述べた。この対話により生まれるパレスチナは、二国家共存案を受け入れ、イスラエルとその権利を承認し、過去に調印された合意を全て適用する、そしてそれをパレスチナ政府が保証するというものであった。
このような声明が当事者納得のうえ出されたのか、それともパレスチナ対話の成功を望まない外部により強制されたのかは不明である。対話が成功していれば、祖国でも亡命地でも、この内紛状態にうんざりしていた全てのパレスチナ人が心を一つにできる成果を得られたのだが。
アッバース大統領も知っての通り、その対話により6つの委員会が発足していた。意見の相違を一つ一つ協議し、パレスチナ内部の不和を解消するためのものであった。これらの委員会が始まりもしないうちから打撃を与えるとは。望まれた合意が得られるチャンスを少しも与えないつもりだろうか。
アッバース大統領、合衆国、カルテット(国連、EU、米、ロシア)そして和平プロセスを支持するあらゆる方面は、イスラエルに二国家共存を適用させることに失敗している。年数を重ねたあらゆるレベル、あらゆる携帯での二者協議の結果がこれだ。なぜアッバース大統領は、自分が押し付けられたものをイスラエルの攻撃に耐える抵抗勢力に押し付けようとするのか。
15年前ファタハ勢力は全世界の耳目を前にイスラエルを承認した。この承認と武装解除、綱領修正の陰に何が隠れていたか。独立国家は得られたか。西岸と占領エルサレムに50万以上の入植者、自治区への占領復活、ガザで飢える150万、分離壁、それらが代わりに与えられたものだ。
より重要なのは、我々が二国家共存を拒否する極右政権のとば口にいるということだ。彼らは経済的和平のみを口にする。それはつまり、パレスチナ人を最下層の乞食からほんの少し引き上げてやるが依然として乞食にはしておくという事だ。
アッバースを支持するアラブ国家に要請する。もう沢山だと言うべきた。この声明のようにして、あなたは我々を侮辱した。時間と労力をかけて準備された対話を潰した。この声明を聞く人々は、あなたがアラブ以外の方面の策謀に従っていると思うだろう。
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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:15903 )