ラーリージャーニー国会議長:大統領の「憲法上の警告」は「ほとんどジョーク」
2009年03月17日付 E'temad-e Melli 紙
この書簡に関し、注意すべき点がいくつかある。それを以下に記そうと思う。
第一点:大統領の警告には、以下の理由から法的価値はない。
1.憲法第57条によれば、三権は独立している。
〔※憲法第57条では、イラン・イスラーム共和国は立法権、行政権、司法権からなっており、これらは互いに独立していること、及び最高指導者の監督下にあることが規定されている〕
2.憲法第91条によると、立法の領域で憲法に違反する事例があったかどうかを判断する権限は、もっぱら護憲評議会に与えられており、行政権の長がこの領域に立ち入ることに法的効力はない。
3.大統領は今回の警告の根拠として、1365年〔1986年〕に可決された大統領権限法第15条を引用している。この法律は改正前の憲法第113条 —— そこでは大統領の職務の一つとして「三権の調整」が言及されている —— を根拠とするものであって、憲法改正によってこのような権限は大統領から最高指導者の職務・権限に移行している(憲法第110条第7項)。〔‥‥〕それゆえ、1365年に可決された法律を根拠に、大統領が国会に対して警告を行うことに、法的価値はない。
第二点:大統領の警告に法的価値がないだけでなく、国会の審議の過程で政府提出の予算法案に変更が加えられたとする警告の内容にも、法的価値はない。
憲法第71条は「国会は問題全般に関し、憲法に規定された範囲内で法律を制定することができる」とし、憲法第52条は「毎年の予算案は、法律で規定されている順序に従い、政府によって作成され、審議ならびに可決のために国会に提出される。予算案の数字にいかなる変更を加える場合も、法律の定めに従うものとする」としている。さらに国会内規第145条は、議会提出法案であれ、政府提出法案であれ、いかなる法案の可決・変更・補足も委員会及び国会の権限であるとしている。
それゆえ、予算法案をはじめとする政府提出法案も、議員が提出する議会提出法案も、その審議過程で可決されることも否決されることも、はたまた修正・変更・補足されて可決されることもありうるのであり、法案が提出時そのままの形で可決されることはめったにない。
もし可決された法律が憲法ないしは聖法に矛盾する場合は、護憲評議会が意見を述べる責任があるのであり、もし国会がさまざまな理由により、〔護憲評議会が異議を唱えた〕法律に国家の公益を認めた場合は、公益判別評議会が最終的な意見を述べることになっている。
よって、この段階で大統領が異議を唱えることはできず、〔護憲評議会によって〕最終的に承認された場合は、〔政府は〕同法を施行しなければならない。もちろん、政府が施行に際して困難に突き当たった場合は、国会に修正案を提出し、新たな許可を請うことができる。
〔中略:この間、アフマディーネジャード大統領の国会批判について、詳細に論難している〕
〔アフマディーネジャード大統領が国会批判のなかで過ちを犯している〕7つめの例は、〔‥‥〕ほとんどジョークに近い。大統領は、政府の予算案〔の総額〕は〔政府の〕職員数で割れば2000万トマーン〔約200万円〕だが、国会の可決した予算法は、何の数で割ったのか不明だが、2億4000万トマーン!などと言っている(恐らく議員数か何かで割ったのだろう)。〔‥‥〕
つまり、何かを割りたいのなら、同じ数で割らなければならない。政府の予算案と国会の予算案の二つを比較したいのなら、職員数で割るのか、高官の数で割るのか、はたまた閣僚ないしは議員の数で割るのか、〔基準を一つにして〕割らなくてはならないということだ!大統領のこの種の議論は、基本的に言って、「警告」に値しないものである
国政の運営とは法治主義の上に成り立つものだということを、大統領もよくご存知のはずだ。以上の理由から、あなた〔=アフマディーネジャード大統領〕の書簡をまともに取りあうつもりはない。
( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:16093 )