ミール・ホセイン・ムーサヴィー、立候補表明後初の演説を行う(その2)
2009年03月16日付 E'temad-e Melli 紙
イマーム〔・ホメイニー〕は逝去される前の二年間、演説や声明の中で何度もこの問題について強調されていた。同師が言わんとしていた問題の本質は、すべてのイスラーム(複数)が崇高で人類を解放させるものではないということだった。イスラームをめぐってはさまざまな主張がありうるが、なかには誤ったもの、集団的・部族的な偏見やさまざまな集団の利害が混ぜ合わさったもの、麻薬的なイスラーム、石化したイスラーム、アメリカナイズされたイスラームも存在しうる。〔‥‥〕
神の神聖なる本質から生まれたイスラームは、それ自体いかなる誤謬・干渉・忘却とも無縁であり、預言者によって一つの規範として下されたものである。それは、いかなるものであれ欲望や集団的利害にまみれたものではない。重要なのは、それがさまざまな私欲や主義主張によって汚染されてしまうという問題である。このようなイスラームは、もはや我が国民の〔抑圧に対する〕抵抗の源とはなり得ない。〔‥‥〕
純粋なイスラームとは、世界の貧しき人々〔直訳は「裸足の人々」〕、被抑圧者、貧者が支持するイスラームである。純粋なイスラームとはつねに、富や権力をもたぬ人々が支持するイスラームである。ホメイニー師は神聖さを装いつつ、その実は石化したイスラーム、神を忘却した資本家たちのイスラーム、痛みを感じぬ富者たちのイスラームと対峙するイスラームこそ、純粋なイスラームであると指摘した。師は社会の根本問題と厳しく闘うイスラームを唱えたのである。
師は富裕であること、富そのものには反対しなかった。しかし、国の諸問題に関心を持たず、痛みを感じようとしない富裕層、世界の資本家たちと手を携える富裕層には反対した。師は生産と雇用を生む資本には、反対しなかった。しかし、国の略奪に手を貸すような資本には反対した。師は、様々な問題を抱えた人民の目の前で豪華さを見せびらかすような富、高価な機械によって下層民を抑圧するような資本に対して反対したのである。
純粋なイスラームは、人類の全経験を活用するものである。国民全員を、優れた人材すべてを国の発展のために活用するのが、真のイスラームである。それに対して石化した宗教は、裾野を狭くし、支持者を限定し、人材すべてを活用しようとしない。そのような宗教には、計画を立てる能力がなく、そもそも計画というものに対して無頓着である。
ユースフはファラオの信頼を得て、「私に国庫を預けてください。私は賢明な人間です」と述べたとされる。ご存じのように、ユースフは14年間の危機の時代に対して、〔綿密な〕計画を立てて備えた。もちろん、こんなお話など単なる空想だと言う人もいるかも知れない。しかし、偉大な文明は7年間の繁栄の時代から一転して7年間の飢饉を迎えても、問題の対処にすばらしい能力を発揮することができるということが、この物語からはっきりと見て取ることができる。実際ユースフは〔危機に対処するための〕計画を練る際、すべての人材、すべての方法を活用して、飢饉からこの文明を守ることができたのである。
果たして〔昨年までの〕石油による外貨収入が潤沢だったときに(それはわれわれの資産を信じられないまでに高めた)、われわれは外貨が減る時を見越して、問題に対処すべくきちんと計画を立ててきただろうか。果たして外貨収入が潤沢だったときに、専門家や担当者の意見に耳を傾けてきただろうか。果たして世界〔経済の景気〕の変動についてわれわれに警告を発していた専門家の意見を、きちんと聞いただろうか。果たしてわれわれは十分な注意を払ってきただろうか。このことに関して、われわれは仕事を怠ってきたのではなかったか。
ムハンマド的純粋イスラームは、計画性というものを歓迎する。純粋なイスラームが〔アフマディーネジャード大統領によって廃止された〕計画予算庁やその他の計画立案機関に反対することはあり得ない。純粋なイスラームは、国に存在するすべての人材を活用するようにと、われわれに勧める。多様性は評価されるべきものであって、それを脅威と見なしてはならない。それは一つのチャンスなのだと理解しなければならない。
〔中略〕
われわれには無限の資源・資産があるわけではない。われわれの最も重要な資産は、人民の努力、支持、そして創造力であり、それに加えてわれわれには石油やそこから得られる外貨資産がある。〔‥‥〕
無限の資源をもっているわけではない我が国(もちろん、どの国でも資源は有限だ)にあっては、資源は最大限多くの人々が共有する戦略的目的のために、用いられなければならないのであって、くだらないプロジェクトのために用いられるべきではない。このようなプロジェクトは、われわれに瞬間的な満足を与えてくれるかも知れないが、世界で直面する厳しい競争から、われわれを守ってはくれない。
貴重な資源を非戦略的な目的のために用いることは、〔‥‥〕きわめて重大な問題であり、そのことにきちんと注意を払わなければ、社会に腐敗がはびこる原因となろう。もし純粋なイスラームに立ち帰ろう、イスラームの預言者が基礎を築いた方法に立ち帰ろうとするのであれば、自らの持つ〔有限な〕資源をもっと正確に活用する必要がある。
( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:16104 )