ミール・ホセイン・ムーサヴィー、立候補表明後初の演説を行う(その2)
2009年03月16日付 E'temad-e Melli 紙

「ミール・ホセイン・ムーサヴィー、立候補表明後初の演説を行う(その1)」のつづき

 預言者ムハンマド生誕記念日に行われたムーサヴィー元首相の演説の第二の柱は、「ムハンマド的純粋イスラーム」をめぐる議論についてであった。同氏は次のように語る。
イマーム〔・ホメイニー〕は逝去される前の二年間、演説や声明の中で何度もこの問題について強調されていた。同師が言わんとしていた問題の本質は、すべてのイスラーム(複数)が崇高で人類を解放させるものではないということだった。イスラームをめぐってはさまざまな主張がありうるが、なかには誤ったもの、集団的・部族的な偏見やさまざまな集団の利害が混ぜ合わさったもの、麻薬的なイスラーム、石化したイスラーム、アメリカナイズされたイスラームも存在しうる。〔‥‥〕

神の神聖なる本質から生まれたイスラームは、それ自体いかなる誤謬・干渉・忘却とも無縁であり、預言者によって一つの規範として下されたものである。それは、いかなるものであれ欲望や集団的利害にまみれたものではない。重要なのは、それがさまざまな私欲や主義主張によって汚染されてしまうという問題である。このようなイスラームは、もはや我が国民の〔抑圧に対する〕抵抗の源とはなり得ない。〔‥‥〕

 ムーサヴィー氏は、「イマーム・ホメイニーはイスラームを正しく紹介するために、純粋なイスラームの特徴を説き、それとともにムハンマド的純粋イスラームに反するイスラーム(複数)の特徴についても指摘した」と述べ、さらに次のように語った。
純粋なイスラームとは、世界の貧しき人々〔直訳は「裸足の人々」〕、被抑圧者、貧者が支持するイスラームである。純粋なイスラームとはつねに、富や権力をもたぬ人々が支持するイスラームである。ホメイニー師は神聖さを装いつつ、その実は石化したイスラーム、神を忘却した資本家たちのイスラーム、痛みを感じぬ富者たちのイスラームと対峙するイスラームこそ、純粋なイスラームであると指摘した。師は社会の根本問題と厳しく闘うイスラームを唱えたのである。

 ムーサヴィー元首相は、革命の創建者ホメイニーが唱えたムハンマド的純粋イスラームについて、さらに次のように詳説する。
師は富裕であること、富そのものには反対しなかった。しかし、国の諸問題に関心を持たず、痛みを感じようとしない富裕層、世界の資本家たちと手を携える富裕層には反対した。師は生産と雇用を生む資本には、反対しなかった。しかし、国の略奪に手を貸すような資本には反対した。師は、様々な問題を抱えた人民の目の前で豪華さを見せびらかすような富、高価な機械によって下層民を抑圧するような資本に対して反対したのである。

〔中略〕

「資源をくだらないプロジェクトに使ってはならない」

 ムーサヴィー氏は「純粋なイスラームは停滞・石化の対極にある」とした上で、次のように述べた。
純粋なイスラームは、人類の全経験を活用するものである。国民全員を、優れた人材すべてを国の発展のために活用するのが、真のイスラームである。それに対して石化した宗教は、裾野を狭くし、支持者を限定し、人材すべてを活用しようとしない。そのような宗教には、計画を立てる能力がなく、そもそも計画というものに対して無頓着である。

 同氏は〔クルアーンに出てくる〕ユースフ(ヨセフ)の物語に触れて、次のように指摘する。
ユースフはファラオの信頼を得て、「私に国庫を預けてください。私は賢明な人間です」と述べたとされる。ご存じのように、ユースフは14年間の危機の時代に対して、〔綿密な〕計画を立てて備えた。もちろん、こんなお話など単なる空想だと言う人もいるかも知れない。しかし、偉大な文明は7年間の繁栄の時代から一転して7年間の飢饉を迎えても、問題の対処にすばらしい能力を発揮することができるということが、この物語からはっきりと見て取ることができる。実際ユースフは〔危機に対処するための〕計画を練る際、すべての人材、すべての方法を活用して、飢饉からこの文明を守ることができたのである。

果たして〔昨年までの〕石油による外貨収入が潤沢だったときに(それはわれわれの資産を信じられないまでに高めた)、われわれは外貨が減る時を見越して、問題に対処すべくきちんと計画を立ててきただろうか。果たして外貨収入が潤沢だったときに、専門家や担当者の意見に耳を傾けてきただろうか。果たして世界〔経済の景気〕の変動についてわれわれに警告を発していた専門家の意見を、きちんと聞いただろうか。果たしてわれわれは十分な注意を払ってきただろうか。このことに関して、われわれは仕事を怠ってきたのではなかったか。

 ムーサヴィー氏は、ムハンマド的純粋イスラームは永遠のイスラーム、特定の時代に縛られないイスラーム、つねにそれを利用し、そこから結論を得ることのできるイスラームであるとした上で、次のように続けた。
ムハンマド的純粋イスラームは、計画性というものを歓迎する。純粋なイスラームが〔アフマディーネジャード大統領によって廃止された〕計画予算庁やその他の計画立案機関に反対することはあり得ない。純粋なイスラームは、国に存在するすべての人材を活用するようにと、われわれに勧める。多様性は評価されるべきものであって、それを脅威と見なしてはならない。それは一つのチャンスなのだと理解しなければならない。

〔中略〕

われわれには無限の資源・資産があるわけではない。われわれの最も重要な資産は、人民の努力、支持、そして創造力であり、それに加えてわれわれには石油やそこから得られる外貨資産がある。〔‥‥〕

 同氏はこう述べた上で、さらに次のように続ける。
無限の資源をもっているわけではない我が国(もちろん、どの国でも資源は有限だ)にあっては、資源は最大限多くの人々が共有する戦略的目的のために、用いられなければならないのであって、くだらないプロジェクトのために用いられるべきではない。このようなプロジェクトは、われわれに瞬間的な満足を与えてくれるかも知れないが、世界で直面する厳しい競争から、われわれを守ってはくれない。

貴重な資源を非戦略的な目的のために用いることは、〔‥‥〕きわめて重大な問題であり、そのことにきちんと注意を払わなければ、社会に腐敗がはびこる原因となろう。もし純粋なイスラームに立ち帰ろう、イスラームの預言者が基礎を築いた方法に立ち帰ろうとするのであれば、自らの持つ〔有限な〕資源をもっと正確に活用する必要がある。

〔中略〕

ムーサヴィー元首相に対する市民の評価

 国内外の報道関係者多数とともに、地元ナーズィーアーバードやその他テヘラン各地から多くの市民がホセイニーイェ・ホッジャトに集まったことに関し、モハンマド・メフディー・ヘイダリヤーン氏(ミール・ホセイン・ムーサヴィー選挙事務所文化・芸術委員長)は、「ムーサヴィー氏はイスラーム学者としても、イスラーム革命の論客としても、さらには人類学者としても、優秀であることを証明した」と胸を張る。同氏はムーサヴィー元首相の演説会終了後、エッテマーデ・メッリー紙に「人々の反応を見る限り、ムーサヴィー氏に対する理解が深まったようだ」と自信をのぞかせた。

 モフレスィーさん(70歳、退職)はホセイニーイェ・ホッジャトの階段を下りる際、「ムーサヴィー氏に投票する」と明言、理由として同氏が宗教的で深い思想の持ち主であることを挙げた。ザフラーさん(22歳)もムーサヴィー氏の演説を聴いた後、「ムーサヴィー氏に投票するつもり」と述べたが、条件として改革派が一つにまとまることを挙げた。

 ヘイルアーバーディーさん(53歳)は、ムーサヴィー氏がイマーム・ホメイニーの信頼を得た人物の一人であることに触れ、同氏の言動には誠実さがあると指摘した。今のムーサヴィー氏と20年前のムーサヴィー氏にはどのような違いがあると思うかと聞いたところ、次のように答えてくれた。「彼は明らかに、現在の状況に合わせているね。戦争で厳しい時代に国政を8年間も務めた人物のことだ、近年の諸問題から遠ざかることはできないはずだ。でも彼が出馬しようと、ハータミー師が出馬しようと、困難な状況が待っていることに変わりはないだろう。国の状況は良くないからね」。

 カーヴェさん(30歳、広報職員)は、誰が出馬しようとムーサヴィー氏に投票すると述べ、「ムーサヴィー氏は国内産業を守り、流通システムや消費主義の蔓延、商品の無秩序な流入には反対する人物。総体的に見て、彼の政策は国にとっていいと思う」と指摘する。アッバースさん(50歳、タクシー運転手)も、ミール・ホセイン・ムーサヴィー氏の演説を聴いた後、同氏が首相を務めていた時代については、いい思い出があると振り返りつつ、「少なくともこんなに物価は高くなかったし、こんなに問題もなかった。人々の生活はもっと楽だった」と述べていた。

 その一方でモフィーディーさん(66歳、女性)は、誰が大統領になるかは重要ではないと述べ、市民を様々な問題から救ってくれる人に期待していると語った。

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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:16104 )