医学は進歩したが、偏見は変わらず:トルコのHIV感染者の置かれた状況
2009年04月05日付 Radikal 紙

ポジティブライフ協会の報告書によると、HIVの感染者たちは医療の分野で最も権利侵害に遭っている。HIV陽性であるゆえに隣人から武器をで脅迫された人や、治療を打ち切られた人、診断書を大声で読み上げて病状を人々に伝える人たちがいる。

隣人は2回武器を向けたが、それでも足りずに大家の元へ行き、家から追い払うように求めた。いつも行っていたカフェが入店を拒否し始めた。病院で(アルコールなどの)依存症に対する治療を受けていたが、治療が終わる前に退院させられた。(HIV感染の)診断結果の精神的なダメージを受けているとき、同じ会社で働く人々は当人に無理やり退職届にサインさせようとした。

なぜなら彼らはHIV感染者であるから。

ポジティブライフ協会の、HIV感染者たちが直面している権利侵害についての報告書は、ウイルスに感染している人々が、生活のために必要な医療サービスを受けること以外に、医療の分野と社会的環境において最も差別に遭っていることを明らかにした。

HIV(に感染している)またはエイズになった人々の間で交流のネットワークをつくることや、治療へのアクセスを容易にさせること、身体的・社会的な面からのサポートを強固にするといった目的で設立されたポジティブライフ協会は、オープンソサエティ研究所のサポートでこの報告書の手筈を整えた。報告書は、2007年の7月から2008年の7月までの間に、法律相談や社会支援サービスのために協会に申請した人々が述べたことや、新聞のニュースになった事件などから集められた。報告書によると、9つをメディアから42が直接の相談という形で、計51のケースを確認した。

これらのケースにおける権利侵害の総数は136件で、HIV感染者は47%の割合で医療サービスの分野において最も権利侵害に遭っている。(そして)17%の社会環境、14%のメディア、13%の公共機関、そして9%の職場がこれに続いている。

報告書はトルコにおいてHIV感染者たちがあらゆる分野で直面している差別や孤立、そして(周囲の)無知を提示している。この報告書から(特に)衝撃的な例は以下のよう…。

・隣の部屋の住民は、HIV感染者と同じ屋根の下に暮らすことはできないと明言した。しかもそのHIV感染者に2回も武器を向けた。そしてさらに大家の元へ行き、そのHIV感染者を家から追い出すように求め、被害への対応を求めた。

・あるHIV感染者は周囲の人々に自分が感染者であることを告白した。(すると)それまでいつも行っていたカフェの従業員は「二度と来ないでほしい。君が使ったティーカップを捨てないといけないんだ」と言った。

・(ある人物が)HIVに感染していることを知った医師は、HIV感染症に関わろうとせず、(治療を)待たせ、患者が意識不明の状態であったにもかかわらずまったく(治療に)関わろうとしなかった。近親者たちに病気が集中治療を必要とすることや、病院にベッド(の空き)がないこと、そして集中治療のできる場所を探す必要のあることが伝えられた。この状況は何時間も続き、そして患者の同伴者の抗議を受けて、ストレッチャーにより集中治療室へと移されることになった。しかし、病院に来てから集中治療室に移されるまでの間に過ぎた約6時間という相当な時間の間、治療が施されることはなかった。病院の職員は、「まあ、エイズ患者よ、この人。ベッドに寝かせないで、やだ、触らないで、あなたたちも感染するわよ」と、患者の頭上で大声で話し、そしてこの会話を患者は耳にした。二つベッドに空きがあったにもかかわらず、(結局)ストレッチャーで待たされた。

・HIV感染リスクのある状況の後、病院で外科に勤務める職員に健康診断が行われ、その結果(HIV感染の)陽性反応が出た。感染者はそのことの精神的ダメージを受けているときに、無理やり退職願にサインをさせられ、退職させられた。

・(ある感染者は)風船売りをして生計を立てていた。4人の客のクレームにより、保健医が自治体に「この仕事をしてはいけない」という書面を送った。風船はポンプを使って膨らませていることや、この方法では誰にも感染させることはないことを説明した結果、仕事を再び続けられるようになった。しかし周りの圧力は(その後も)続いた。

・宗教婚をした夫婦が、子どもをもってから正式に婚約することを望んだ。町の診療所へ結婚前の検査に行った際、HIV感染者は自身の健康状態を説明した。医師はHIVには感染していない配偶者を呼び、本当かどうか尋ねた。(そして)町役場の役人たちに感染者の診断結果を伝えた。役場の婚姻係は、「自分も町長も咎めを受けることはできない。法律的にこの婚約の手続を行えない。文句が言いたければどこへなりとも行けばいいでしょう」と言い、人混みの中で用紙を当人に投げつけ、感染者の診断結果をそこにいた多数の人たちに言い広めた。

・相談者は以前にHIV感染の診断結果を受け取っていた。結婚のための届け出をした際に、検査で陽性反応が出たことを知った医師により、保健医に(そのことが)伝えられた。その後、住民登録局にこの件が伝えられHIVに感染しているという診断結果が記された。感染者の婚約者が呼ばれ、感染者とは別に面談が行われ、結婚すると必ずHIVに感染すると伝えられた。婚約者はそれ以前から感染者であることを知っていたにも関わらず婚約を破棄した。

・HIV感染者であり同性愛者である人物の家は、無許可の売春の容疑で警察により立ち入り禁止とされた。(家の中にある)薬を常に服用しなければいけないことと、その薬を取りに入りたいことを述べたときでさえ家に入る許可は与えられなかった。刑務所でも定められた通りに薬を服用することはできず、治療を受ける権利は侵害された。

・病院で(アルコールなどの)物質に対する依存症の治療を受けているとき、いつもの検査の間にHIVの検査も行われた。陽性反応の結果が出ると、治療がまだ終わらないうちに病院から追い出された。この相談者には自殺願望の傾向がある。

■ 薬のおかげでほとんど慢性的な病気の状態にまでなった

ヒト免疫不全ウイルス(HIV(Human Immunodeficiency Virus))は、トルコ語ではİnsan Bağışıklık Yetmezliği Virüsüとして名づけられたウイルスである。人間の免疫システムを弱らせたり、治療を受けない場合完全に病状を悪化させたりする原因となる。エイズ(Acquired Immune Deficiency Syndrome:後天性免疫不全症候群)は、HIV感染が進行した状態である。しかし、すべてのHIV感染者がつまりエイズにまで進行しているというわけではない。

HIVは、感染した人の体内に何年もその兆候を見せずに潜在する。その人がもし性行為によって感染したなら、平均して8~10年の間、医者にかかる必要のある兆候はない。血液感染の場合、この期間は短くなり、5か月から2年の間となる。エイズの確実な治療方法はないが、病気は様々な薬によってかなりコントロールでき、HIV陽性反応の人々でも長い期間健康的に生活できる。HIV感染者は、治療と(免疫力低下に伴う様々な病気の)コントロールを妨げられない限り、他の人々の様に健康的な状態を維持するチャンスを持っている。HIV感染は、もはや死を待ちながら過ごすような不治の病ではなく、ほとんど慢性的な病気のようなものとして受け止められている。これを保障する要因の筆頭に、治療で使用される薬の数が増えたことが挙げられる。他の要因として、感染が進行する過程で行われる血液検査が発達したことや、今まで得られた経験結果が活かされていることなどが挙げられる。

■ エイズの診断

エライサ方式によって行われる血液検査によってできる。この検査で正しい結果が出されるためには10~12週間かかる。ほとんどすべての国立病院や大学病院でこの検査は行われている。また、たいていの私立病院や研究所でもエライサ検査は行われている。

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( 翻訳者:指宿美穂 )
( 記事ID:16138 )