ロクサーナ外交(1)
2009年04月20日付 E'temad-e Melli 紙


■ オバマ米大統領、ロクサーナ・サーベリー氏への有罪判決に遺憾の意
■ アフマディーネジャード大統領、モルタザヴィー検事に宛てた書簡でサーベリー氏の弁護権遵守を求める


【アクバル・モンタジャビー】マフムード・アフマディーネジャード大統領は、人種差別問題や人権問題を検討する「ダーバン2会合」〔Durban Review Conference:ダーバン反人種主義世界会議再検討会合〕に参加するためにスイスを訪問する直前、テヘラン検察庁のサイード・モルタザヴィー検事に、アメリカ=イラン人ジャーナリストのロクサーナ・サーベリーとイラン人ブログ作家のホセイン・デラフシャーン両氏の容疑を審理する際は、公正さを保つよう求める書簡を送った。この書簡は、ダーバン2会合直前に大統領に対して行われた〔大統領顧問らの〕アドバイスの結果であり、海外で大統領が同問題をめぐって質問された場合、自分は公正を求めているとの立場を示すためのものとの見方が有力だ。

 ロクサーナ・サーベリー氏はノウルーズ前にスパイ容疑で拘束され、先日イラン司法権は彼女に対して8年間の禁固刑を言い渡した。またホセイン・デラフシャーン氏も、昨年後半〔2008年後半~2009年3月頃〕同様の容疑で拘束され、現在まで拘置所に囚われたままとなっている。同氏への判決はいまだ確定していない。

 アフマディーネジャード大統領がサイード・モルタザヴィー検事に宛てた書簡には、次のようにある。「ホセイン・デラフシャーン及びロクサーナ・サーベリー両氏の容疑は、司法当局での〔再〕審理が要求されていると聞いている。上記二名の容疑に対する審理は慎重正確に、かつ公正さとあらゆる法律上の規定を守る形で進められるようお願い申し上げる。また、容疑者らが自らの容疑を弁護する際の自由と法的権利すべてを享受でき、わずかでも彼らの権利が損なわれることのないよう、個人的にも注意願いたい」。

 ロクサーナ・サーベリー氏はアメリカ・ノースダコタ州生まれの31歳で、イラン人の父親と日本人の母親の間に生まれた。彼女は、アメリカ国籍とともに、イラン人としての身分証明書も所有しており、イランの司法当局はこのことから、彼女をイラン人として拘束している。

 彼女は1997年にミス・ノースダコタ州に選ばれた。ジャーナリストに関心を抱いていたことから、ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)やフォックス放送、BBCなどのメディアで働いた経歴がある。彼女は、ノースウェスタン大学からジャーナリズムの、またケンブリッジ大学から国際関係論の修士号を取得している。

 サーベリー氏はセイエド・モハンマド・ハータミー政権の時代にイランを訪れ、文化イスラーム指導省からジャーナリストとしての活動許可を得た。一般的な行事やハータミー氏が大統領として催した会議などの場に、記者として参加することが多かった。時には、政府高官とインタビューを行い、所属メディアに映像ないしは活字でニュースを提供していた。

 第9政権の成立後、海外のジャーナリストに対する締め付けが厳しくなっていった。文化イスラーム指導省から得なければならない記者証の発行に遅れが生じるなどした。なかには活動許可が下りなくなり、やむを得ずイランを去らねばならなくなったジャーナリストもいた。

 またなかには、記者証の発行を待ちながら、〔無許可で〕取材活動を続ける者もいた。イラン人ジャーナリスト、ロクサーナ・サーベリー氏は海外メディアのイラン特派員として認められなかったとも、所属メディアから文化イスラーム指導省に推薦があったにも拘わらず、記者証の発行が認められなかったとも言われている。

 このような中、昨年バフマン月22日〔2009年2月10日〕、彼女は逮捕された。当初某インターネット・サイトは、彼女はアルコール飲料を売買した容疑で逮捕されたと伝えた。しかしその後しばらくして、彼女の容疑は「無許可で取材活動を行ったこと」であると発表され、今年ファルヴァルディーン月19日〔4月8日〕には「スパイ容疑」となって、8年間を獄中で過ごすことになった。

 彼女を弁護するアブドッサマド・ホッラムシャーヒー弁護士はこの判決に抗議し、控訴したことを明らかにした。その一方で、昨年エスファンド月〔2009年2月下旬~3月下旬〕テヘラン検察庁治安担当次席のハッダード判事は、「彼女の取り調べはすでに行われ、サーベリーは数日後にも釈放されるだろう」と述べていた。

 サーベリー氏に対する逮捕、及び禁固8年の判決は、大きな国際的反響を呼んだ。ロクサーナ・サーベリー氏はイランで逮捕された最初のアメリカ人ジャーナリストであった。父親のレザー・サーベリー氏をはじめとする彼女の家族は当初、娘の逮捕を公にせず、事を荒立てることなく彼女を釈放させることに努めた。レザー氏はイランの某高官に書簡を送り、支援を求めたことすらあった。同氏によると、自分も娘も政治的なことに関わったことは一切なく、現在もないと述べている。

 しかし、このような家族の努力にも拘わらず、サーベリー氏の逮捕の報は広範囲に伝えられ、アメリカ当局も同問題に対応を示す事態となった。最初に動いたのは、ノースダコタ州議会であった。同議会は決議を採択し、ロクサーナ・サーベリー氏の釈放を要求した。それから1ヶ月と経たないうちに、今度はヒラリー・クリントン米国務長官が、ロクサーナ・サーベリー氏に対する拘束の継続と判決に対して懸念を表明し、さらにその後ホワイトハウスも声明を発表、同記者の置かれた状況に対するオバマ米大統領の懸念を示し、「深い失望の念」を伝えた。

 オバマ大統領の国家安全保障顧問代表を務めるデニス・マクドノー(Denise McDonough)氏は、「サーベリー氏は一アメリカ人ジャーナリストであり、ジャーナリズムとしての活動しかしてこなかった。アメリカはイランに駐在するスイス人外交官〔※在イラン・スイス大使館はイランにおけるアメリカの利益代表部でもある〕らとともに、裁判所の判決及びサーベリー氏の健康状態に関して詳しい情報を得るべく努力している」と述べている。

 現在、米メディアの多くがロクサーナ・サーベリー氏をめぐる問題を主要ニュースの一つとして伝えている。Yahooをはじめとするアメリカのインターネット・サイトも、サーベリー氏をめぐるニュースに固定枠を充てている。アフマディーネジャード大統領の書簡も、これらのメディアで大きな反響を呼んでいる。
つづく


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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:16253 )