アフマディーネジャード大統領、地方訪問に大忙し
2009年05月06日付 E'temad-e Melli 紙
2009年5月5日付エッテマーデ・メッリー紙2面に掲載されていたアフマディーネジャード大統領キャラジ訪問の様子
2009年5月5日付エッテマーデ・メッリー紙2面に掲載されていたアフマディーネジャード大統領キャラジ訪問の様子

【マフムード・プールレザーイー】第9政権は昨夜、週末を首都以外の場所で過ごすべく、59回目となる地方訪問に向けてスーツケースに荷物を詰め込んだ。大統領が今回の訪問先として選んだのはガズヴィーン州で、数時間後にも同州の州都で演説を行う予定だ。

 第10期大統領選挙まで、ほんの1ヶ月と1週間(37日)を残すばかりとなった。そのようななか、新年に入って〔3月21日~〕から、大統領による地方訪問の時間的間隔はますます短くなっている。訪問の様子を写した写真は公表され、大統領は演説の中で様々な約束を繰り出している。これに対し、アフマディーネジャード大統領の〔選挙の〕対抗馬たちは、大統領の地方訪問のやり方を、神経を尖らせながら観察している。〔‥‥〕

 過去数週間で大統領と閣僚らが首都に滞在した日数は、数日を数えるに過ぎない。彼らはほぼすべての週末を、つまり火曜日の夜ないしは水曜日の朝から〔木曜日まで〕の時間を、地方訪問に充てている。

 その一方で、大統領のもっとも最近の地方訪問の様子を写した写真には、学校を休んで大統領歓迎式典に向かう生徒たちの様子が写されていた。大統領の演説会場に聴衆を輸送するために用意されたバス、その横にはアフマディーネジャード大統領の英雄的で思索に耽った様子の写真が入ったプラカード。写真からは、アフマディーネジャード大統領の地方訪問はさながら選挙向けの集会といった様相を呈していることが分かる。

 大統領はまた、過去二週間の間に様々な公約を提示している。エスラームシャフルでの集会では、同市の市民の前でイラン人の70%に毎月5万~7万トマーン〔約5000円から7000円〕を支給すると発表している。労働者らの前では全労働者が自宅を所有することができるような施策を講じるよう、社会労働相に命じ、さらに社会保障退職者年金の最低額を40万トマーン〔約4万円〕に引き上げると約束している。看護士らの前では2ヶ月以内に看護労働一時契約の問題点を調査し、看護士の雇用形態の改善策を提出するよう、保健相及び社会保障庁長官に命じている。また〔キャラジでは〕キャラジを州都とする「アルボルズ州」の新設を約束するなどしている。

 これらの公約に対し、政府関係者らは、大統領の地方訪問は選挙目的ではなく、国民に奉仕することを目標とした政府の通常の活動の一部に過ぎないと主張している。政府報道官も批判者たちに向けて、政府は選挙を理由に国政運営を休むことなどできないと主張している。

 護憲評議会の一般法学者委員の一人であるアッバース・キャアビー委員も、このような主張を認め、選挙を前に政府が地方訪問の継続を主張しても、それは憲法違反には当たらないとの見方を示している。

 これに対しメフディー・キャッルービー政治顧問のアッバース・アブディー氏も、法的な観点から政府の地方訪問にケチをつけることはできないとする。同氏はその上で、大統領には広範囲な権限が与えられているため、通常大統領選では対抗馬よりも有利に戦いを進めることができるが、このことはアフマディーネジャード氏に特別なことではないと語る。

 アブディー氏はこのように指摘しつつ、現大統領には過去の二人の元大統領が慣例にしてきたことに敬意を払い、それを踏襲・強化すべきだとも主張する。同氏によれば、アクバル・ハーシェミー=ラフサンジャーニーとセイエド・モハンマド・ハータミーの両元大統領は大統領二期目を狙う際、選挙が近くなると、緊急を要する問題を除き、〔国内外への〕訪問やプロジェクトの着工などを控えていたという。

 アブディー氏は、選挙を目前に控えた時期に政府が地方州訪問にこだわることは、法律違反ではないものの、自分に自信がないことを如実に示すものであり、やり方としても不公正だと指摘する。その上で同氏は、「法的に許されているからといって、好ましい行為とは限らない〔‥‥〕」と主張している。

〔後略〕

表:昨年メフル月から今年ホルダード月末〔2008年9月22日~2009年6月21日〕までの、大統領による地方訪問と公約・スローガンの一覧

1.2008/10/8:北ホラーサーン州:「経済改革計画が実現すれば、銀行は人民のお金を公正に人民の間に配分する方向へと歩まねばならなくなる」

2.2008/10/15:ギーラーン州:「〔市の中心から〕半径30キロ以上のところにある工業団地に新築されたアパートに対する税金を、10年間免除する」

3.2008/10/21:アサルーイェ:「アサルーイェ・プロジェクトの運営にもっとも適した人は、地域の人々自身である」

4.2008/10/29:ロレスターン州:「500億リヤール〔約5億円〕分の無利子による貸し付けを行う」

5.2008/11/12:マーザンダラーン州:「30万回線の固定電話の設置、囚人の保釈のために300億リヤールの無利子融資を実施」

6.2008/11/19:ザンジャーン州:「政府は、貧困層向けの補助金の7割以上が富裕層に流れるような事態を受け容れることはできない」

7.2008/11/23:東アゼルバイジャン州:「自動車工場の建設、1兆2千億リヤール〔約120億円〕の無利子貸し付けの実施、2500世帯に社会保障の網」

8.2008/12/16:フーゼスターン州:「59の工業プロジェクトに銀行の融資を提供、4万平方メートルの〔国有の?〕土地を譲渡、農村に1万2千戸の住宅を建設」

9.2008/12/31:スィースターン・バルーチェスターン州:「弱者への融資の迅速化、州を工業の一大中心地に変貌させる」

10.2009/1/28:ケルマーンシャー州:「モスクは社会的整備の最重要中心地。モスクの機能なくして、イスラームの統一共同体の実現は不可能」

11.2009/2/18:ヤズド州:「〔州や政府の〕責任者はヤズドの全世帯が持ち家を持てるよう政策を行わなければならない」

12.2009/3/4:西アゼルバイジャン州:「1500億リヤール〔約15億円〕の無利子貸し付けの実施、自営業を計画している人への5400億リヤール〔約54億円〕の無利子融資の実施」

13.2009/4/8:エスファハーン州:「2000億リヤール〔約20億円〕の無利子貸し付けの実施、雇用創出プログラム実施にイマーム・レザー友愛基金から3500億リヤール〔約35億円〕を拠出」

14.2009/4/15:ケルマーン州:「2000億トマーン〔約200億円〕の無利子融資〔による?〕 60の巨大工業プロジェクトの実施と、融資された資金の公正な配分」

15.2009/4/22:ヴァラーミーン:「ヴァラーミーンの水は完全な形で農業に利用されなければならない。夏が終わるまでに、水をヴァラーミーンに引く」

16.2009/4/23:エスラームシャフル:「〔補助金の目的化が実現されれば〕一人につき、5万~7万トマーン〔約5000円~7000円〕を支給することができると考えていた〔が、国会の反対で実現されなかった〕」

17.2009/4/29:ファールス州:「3000億リヤール〔約30億円〕の無利子貸し付けの実施、2300億リヤール〔約23億円〕を貧困層支援に」

18.2009/5/3:キャラジ:「〔テヘラン州の一部である〕キャラジ県を最終的に州に格上げすることを計画している」

19.2009/5/6:ガズヴィーン州

20.5月下旬?:セムナーン州

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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:16384 )