護憲評議会、4人の大統領選候補者の氏名を発表
2009年05月21日付 Iran 紙

【政治部:アミール・サディーギヤーン】護憲評議会による第10期大統領選の立候補者の審査が終わり、資格審査を通った候補者の氏名が発表された。国の選挙管理事務所の発表は以下の通り。
護憲評議会によって立候補資格が認められた第10期イラン・イスラーム共和国大統領選挙の候補者の氏名を、以下の通りアルファベット順で発表する。

1.アフマドの子、マフムード・アフマディーネジャード氏
2.ナジャフの子、モフセン・レザーイー=ミールガーエド氏
3.アフマドの子、メフディー・キャッルービー氏
4.ミール・エスマーイールの子、ミール・ホセイン・ムーサヴィー=ハーメネ氏

 こうして、ホルダード月22日〔6月12日〕に行われる選挙の4人の候補者による選挙活動が、昨日開始された。選挙活動は投票が始まる24時間前(88年3月21日〔=2009年6月11日〕木曜日朝8時)まで続けられる。大統領選挙の投票はホルダード月22日の朝から10時間続けられるが、内務相の判断によって投票時間を延長することが法律によって認められている。

〔中略〕

政治的な党派間の構図をめぐる最新の動向

 候補者の氏名が発表され、正式な宣伝活動が開始されたことに伴い、政治的な党派間の関係も日に日に明確なものとなりつつある。すでにしばらく前から、一部の候補者やその支持者らは選挙活動を開始していたが、今後各候補者らは自らの重視する考え方や構想を公表し、熱の帯びた選挙戦を展開することになるだろう。

 選挙をめぐる様々な報告や報道を見てみると、現在改革派系候補者らの選挙本部や彼らの支持者の間からは、いくつかの問題が表面化していることが分かる。

1.キャッルービー/ムーサヴィーに出馬辞退を促す試み

 現在、改革派から立候補しているのはメフディー・キャッルービー国民信頼党総書記とミール・ホセイン・ムーサヴィーの二人で、彼らはしばらく前から出馬の意志を表明していた。改革派の一部はキャッルービーを、また別の一部はムーサヴィーを支持している。最近の報道によると、両者の支持者らは自らの選挙戦を有利に運ぶために、互いの候補者に出馬を辞退させようと懸命の努力を続けている。

 このような活動はしばらく前からすでに始まっていたことで、それは今も収まる気配を見せていない。キャッルービーとムーサヴィー両候補者の支持者らはともに、自らが行った世論調査の結果を強調し、互いに対して出馬辞退を要求、票の分散を防ごうと必死だ。

 メフディー・キャッルービーは、イスラーム革命聖戦士機構をはじめとするムーサヴィー支持者らの行った世論調査を認めず、事実に即した調査ではないとの見方を示している。その一方でミール・ホセイン・ムーサヴィー選挙本部の本部長は、各種世論調査ではメフディー・キャッルービーがミール・ホセイン・ムーサヴィーを人気で上回っているとする〔国民信頼党の機関紙である〕エッテマーデ・メッリー紙の主張に対して、「われわれは世論調査には賛成だ。なぜならそれは科学・学問に基づくものであるからだ。しかし、われわれは世論操作には反対だ」と述べている。

 2.改革派系諸政党間の対立

 改革派陣営内の対立は、トップだけでなく末端にまで広がりを見せている。しばらく前まで、対立はキャッルービーを支持するか、それともムーサヴィーを支持するかをめぐる改革派諸グループ間のそれであった。「建設の奉仕者党」のキャルバースチー〔元テヘラン市長〕がキャッルービー支持者らの輪に加わったことで、同党内の亀裂が表面化。さらに「闘う宗教指導者会議」でも、同会議の有力者であるモハンマド・アリー・アブタヒー〔元副大統領〕他数名の宗教指導者が組織の決定を無視する形で、キャッルービー顧問団に加わった。〔※訳注:両政党とも、組織としてはムーサヴィー元首相を支持している〕

 このような対立は現在も衰えを見せることなく続いているが、それはまた両陣営の〔上層部だけでなく末端の構成員らからなる〕選挙本部にも広がりを見せている。エスファハーンを訪問した際のメフディー・キャッルービーの発言が、それを如実に示している。キャッルービーは同訪問中、ミール・ホセイン・ムーサヴィーの支持者らに向けて、次のような警告を発している。「あなた方(ムーサヴィーの支持者たち)、そしてテヘランの自宅であなた方に方針を伝えている指導者たちに最後の警告を与える。現在のようなやり方を続けてもアフマディーネジャードには勝てない、と」。

 キャッルービーのこのような批判めいた発言は、ミール・ホセイン・ムーサヴィーの支持者らがこの会合の中で〔キャッルービー支持者らと〕小競り合いを起こし、緊張した雰囲気を作り出そうとしたことに対して発せられたものだ。

 この問題に対して、ミール・ホセイン・ムーサヴィー選挙本部も黙ってはいなかった。ミール・ホセイン・ムーサヴィー選挙本部宣伝・広報委員会の責任者を務めるファーテフ氏はキャッルービー発言に反発する形で、キャッルービー支持者たちがムーサヴィー氏に中傷攻撃を仕掛けようと計画しているとして、次のように述べた。「キャッルービー師への支持を口実に、同師周辺の一部がさまざまな会合の中で、ムーサヴィーへの中傷計画に関与したことは、残念という他ない」。

3.3名の候補者を糾合させるための試み

 ハーシェミー=ラフサンジャーニー公益判別評議会議長とその周辺(特に「建設の奉仕者党」関係者)がメフディー・キャッルービー、ミール・ホセイン・ムーサヴィー、及びモフセン・レザーイーの3人を糾合させるために、大規模な活動を開始したことを物語るような出来事も、改革派陣営では起きている。

 それによると、この件に関して複数の会合がこれまで行われたとされ、ホッジャトルエスラーム・ヴァルモスレミーン〔※1〕のハーシェミー=ラフサンジャーニーが三者を一堂に会させて、マフムード・アフマディーネジャード大統領に対して一致して闘うよう呼びかけたも言われている。

 ラフサンジャーニー公益判別評議会議長に近い勢力(特に「建設の奉仕者党」や「穏健と発展党」の関係者たち)は、三者いずれの選挙本部でも活動を行っており、彼らは最近の演説や発言の中で原理派のライバル(つまりマフムード・アフマディーネジャード大統領)に勝つためならば、どんな努力も惜しまないと明言している。

モフセン・レザーイー:連合政府構想

 1384年〔西暦2005年〕の大統領選にも出馬したモフセン・レザーイー公益判別評議会書記は今回、「連合政府構想」を掲げて立候補している。1384年の選挙では、同氏は投票の数日前に出馬を辞退したが、今回はホルダード月22日〔6月12日〕の選挙に向けて不退転の決意で臨んでいることを表明している。

 レザーイーは「連合政府構想」について、「連合政府では、あらゆる部族の指導者を起用する。各部族に違いはない。イランには一人の父がおり、各部族はその父の子供なのだ」と述べている。

原理派戦線

 原理派団体の大多数は、マフムード・アフマディーネジャード大統領の立候補支持で一致しており、最近になって〔選挙へ向けた〕自派の取り組みについて明らかにしている。

 ゴム神学校講師協会はアフマディーネジャード大統領の大統領選立候補への支持を表明、また「闘う宗教指導者協会」も大勢はアフマディーネジャード大統領支持に傾いている。

 「イスラーム革命献身者協会」〔※2〕、国会内の「イスラーム革命派」〔※3〕、「イマームと最高指導者の路線を支持する戦線」〔※4〕、「国会宗教指導者議員会議」のメンバー、国会内の原理派議員たちの大半、そして大学関係者らはいずれも、国の発展・成長、開発事業の目覚ましい進展、60回に及ぶ地方訪問と貧困層の生活状態の調査、そしてインフラや経済、及び文化の面で立てた数多くの計画などを、過去4年間のアフマディーネジャード政権の最も重要な実績であると指摘している。彼らはまた、アフマディーネジャード大統領が外交面で勇敢かつ率直に、国益と国の価値観を防衛したことも評価している。

 その一方で、「アフマディーネジャード博士への人民による自発的な支持を調整する本部」が活動を開始している。〔同選挙本部に所属する〕諸々の市民団体は、革命の偉大なる指導者イマーム・ホメイニーと革命最高指導者アーヤトッラー・ハーメネイーの言説を自らの基本戦略に位置づけて、活動を行っている。

 これらの団体を統轄するセイエド・モジタバー・サマレ=ハーシェミー氏〔元大統領顧問〕は、選挙に勝利した場合のアフマディーネジャード氏の政権構想について、次のように述べている。「アフマディーネジャードは選挙に勝利した暁には、『正義の拡大』、『神の下僕への奉仕』、『愛』、『国の発展と向上』というこれまでのスローガンの実現に邁進するだろう」。

 サマレ=ハーシェミー氏はその上で、「経済改革計画の実行、補助金の最適化、金融・関税制度改革、生産・経済部門の効率化、通貨価値の防衛、貧困地域への配慮と貧困問題の解決、大学の発展、国の必要性と大学での専門教育との間の整合性のさらなる確保、教育プログラムの改革などが、アフマディーネジャード政権の今後の目標だ」と付け加えている。



※1:「ホッジャトルエスラーム・ヴァルモスレミーン」とは「アーヤトッラー」よりもワンランク下の宗教指導者に対する尊称。誰をどの尊称で呼ぶか(アーヤトッラーと呼ぶか、ホッジャトルエスラーム・ヴァルモスレミーンと呼ぶか)については、これといった基準があるわけではなく、呼ぶ側の任意に任されている。ラフサンジャーニーは「アーヤトッラー」で呼ばれることが多いが、親アフマディーネジャードで反ラフサンジャーニーの本紙「イラン」は、意図的にラフサンジャーニーを「ホッジャトルエスラーム・ヴァルモスレミーン」と呼んでいるものと思われる。

※2:イラン・イラク戦争の傷痍軍人らからなる団体

※3:アフマディーネジャード支持派の国会議員が国会内に結成した会派

※4:「イスラーム連合党」、「技術者イスラーム協会」、「ゼイナブ協会」など14の原理派団体からなる連合体

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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:16526 )