シリア情勢:大統領のアルメニア訪問
2009年06月18日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ シリアが、トルコ・アルメニアの仲介役に。
■ シリア各紙、国内アルメニア人の生活を詳細に報道

2009年06月18日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPアラブ情勢面

【ダマスカス:カーミル・サクル(本紙)】

欧米並びに高位のシリア筋が本紙に述べたところによれば、ダマスカスは、トルコ・アルメニア間の歴史的不和解決のために仲介役を演じる予定である。1920年代にトルコ軍がアルメニア住民に対して行ったとされるアルメニア虐殺が両国間紛糾の原因であり、アルメニア側は虐殺の犠牲者が数十万に及んだと主張する。上述の情報源は、この虐殺問題が、現在2日間のアルメニア訪問を行っているアサド大統領とアルメニア首脳との協議において重要な議題の一つとなると述べた。また同筋は、アンカラ、エレバン双方と強い関係を有するダマスカスなら、この、歴史的に重要かつ微妙な問題に対処可能であり、その下準備のためダマスカス政府は過去数カ月間、両国に対し明らかに柔軟な姿勢を見せていると指摘した。更に、この根深い問題の終結を好まない複数の国際的勢力が介入しない限り、ダマスカスの試みが成功を収めると予測した。

アルメニア虐殺は、トルコのEU加盟の障害となってきた問題である。この数年、加盟に向け尽力してきたトルコだが、人権問題、世俗体制でありながらイスラーム国家である(点がEU側に受け入れられない)など数々の障害にぶつかってきた。一方で、シリア大統領は欧州首脳らに、ユーロ圏にトルコが参入する妥当性を説いてきた。もしこれが実現すれば、シリアの北の国境のすぐ向こうはEUということになり、経済的にシリアにも有利となる。トルコは、虐殺事件を認めないことにより、アルメニアだけではなく合衆国や欧州諸国との関係を危うくしている。例えばフランスは、アルメニア民族に対する虐殺を認めよとアンカラに要請したが、トルコ側は、それは戦時下で起きたことであり、民族性を標的とした「虐殺」とは異なるとして反論した。

昨日、サルキスヤーン・アルメニア大統領との会談後の共同記者会見において、アサド大統領は、シリア・アルメニア関係では種々の方面でペースアップの必要があると述べるかたわら、トルコ・アルメニア関係での進展には安堵しており、シリアが両国と有する強い紐帯により、これを更に進めたい意向を表明した。また、アサド大統領は、中東和平問題に関するシリアの見解をアルメニア大統領に伝え、和平パートナーとしてのイスラエルの不在によりプロセスが停止しているが、和平に向けた協議や作業が停止しているわけではなく、交渉相手の用意が整えは和平プランも準備ができると述べた。

シリア国営新聞、テレビ、中でも体制に近いものは、大統領の今次アルメニア訪問報道に多大な時間、紙面を費やし、いかにこれが両国関係に寄与するかというその重要性に焦点をあてた。また、シリア国内アルメニア人の社会経済状態を詳細に報じ、彼らが経済的、文化的にシリア社会の重要な構成要素として溶け込んでいる様子を伝えた。

国内アルメニア人の最大人口は、シリアの経済的首都とされるアレッポ在住であり、アレッポ商工会議所には約千名のアルメニア系ビジネスマンが加盟している。故ハーフィズ・アサド大統領がアルメニアを訪問したのは30年前のことであり、ソビエト連邦が崩壊する前、つまりアルメニア独立以前であった。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:16724 )