イドリス・ボスタン教授「イスタンブルに海洋博物館を」
2009年07月17日付 Zaman 紙

トルコで海洋史を研究するイドリス・ボスタン教授は、海洋帝国であったオスマン帝国の、この分野における豊かさと発展を紹介する海洋博物館がないことに不満を抱いている。ボスタン教授は、UNESCOが宣言した「2009年キャーティプ・チェレビー年」においてもまだ具体的な計画がないと語る。

オスマン朝は大陸帝国であると同時に巨大な海軍力を保持していた。ヨーロッパ、マグリブ、インドのそれぞれの海で艦隊を進めたスルタンらは、「2つの陸地と2つの海のスルタン」 といわれていた。オスマン朝が海洋を重視した点についてはまだ十分に把握されていない。今日、我々はこうした宝物を有しているのだから、この目で見られる事実を語るのは、何ら奇跡(不可能なこと)などではないだろう。オスマン朝の海事力に関して、西洋が放っている根拠のない言葉はとりあえず横に置いといて、わが国民は海をパトロンとみなす国民である。このようであるので、片隅にうずくまっている真実を追い求める、手の指では数え切れないほどの研究者がいるのだ。

トルコで、海洋史に関して最初に浮かぶ名前は、まずイスタンブル大学文学部歴史学科のイドリス・ボスタン教授である。大学で教官の薦めに従い海洋史に飛び込んだボスタン教授の興奮は次第に情熱に変わった。地平線の3方向を海で囲まれた「トルコ」を越えて、ベネチア、イタリアでも海に乗り出し、新しい文書や異なる見解を追い求めている。イルベル・オルタイル教授の語るところによれば、ボスタン教授がオスマン帝国の海洋に関して発表した研究や論文は、大きな麻袋一杯ほどの数である。これらの研究を見ると、オスマン帝国が海軍力をないがしろにし、海に背を向けた、というような話がどれほど意味のないものであるかがお分かりになるだろう。イドリス・ボスタン教授は、「アドリア海の海賊 (ティマシュ出版社)」という本を先日出版したが、ボスタン教授の口癖で、行く先々で、何年ものあいだ語っている夢がある。それは、金角湾にあるオスマン帝国の海軍基地である「帝国造船所」に、イスタンブル海洋博物館を創設することである。

イドリス・ボスタン教授が、「トルコには、海洋を非常に重視したオスマン帝国の栄光にふさわしい海洋博物館がありません」というとき、教授の姿は静止した海のようである。しかし彼の心の中に秘められた「潮の流れ」は、この博物館の設立のためにどれだけ努力しているかを明らかにしている。 イスタンブルは2010年ヨーロッパ文化都市に向けて歩み始めたのだが、世界の全ての海洋国家と同様、この町にも博物館があるべきである。イスタンブルに、オスマン帝国の海洋を代表する、目標を高く掲げた博物館の建設が必要であると語るボスタン教授は、「金角湾にある「帝国造船所」は時の流れと共に大きな損害を被ったにもかかわらず、今日この造船所には今日まで残った重要な建築物と品々があります。海洋への関心を増加させ、若い世代に海への愛を植え付けるために最も適した環境というのは、この場所において歴史的な事実に即した形で建設された博物館によってもたらすことができるのです」と語る。

2010年に博物館が建設可能であった
もちろんすべてが前途多難だというわけではない。イドリス・ボスタン教授は、海事局と共にイスタンブル広域市にイスタンブル海洋博物館の建設のために委員会を発足させたとの吉報を伝えている。ボスタン教授は、「金角湾造船所」に2010年に竣工するという条件で博物館の建設が始められることも可能であった」と語り次のように続けた。「しかし博物館の建設は1年、5年という話ではないのです。オスマン帝国の海事力は、この規模に収まるほど小さいものではないのです」

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( 翻訳者:富田祐子 )
( 記事ID:16974 )