【政治部】大統領が指名した閣僚候補らの適性を審査する第一日目の会議は、第10期政権の閣僚候補とその構想をめぐる討論よりもむしろ、マフムード・アフマディーネジャード大統領の〔これまでの〕政策に対する批判とそれに対する大統領の反論を中心に、議論が展開した。初日の会議から判断する限り、国会の場で閣僚候補らは〔信任に向けて〕困難な道のりを覚悟しなければならないだろうということが、予想された。
事実上昨日から始まった閣僚候補らの適性を審査する会議の二日目は、以上のような予想を現実のものに近づけたと言える。実際、重い空気が昨日の国会公開本会議場を支配した。この重苦しい雰囲気に影響されたのか、教育相に指名されたスーサン・ケシャーヴァルズ候補は、国会壇上に登るのにも長い時間を要した。〔※具体的には、本記事の最後を参照のこと〕
アフマディーネジャード大統領が閣僚名簿を直接議員らに示す前に、テレビを通じて国民に向けて閣僚候補らの氏名を発表し、支持演説を行ったことが、すでに国会関係者らの神経を逆撫でしていた。
なぜアフマディーネジャード大統領は自らの推薦する候補らを国民の代表に示す代わりに、国営メディアを通じて明らかにしたのか?〔国会議事堂のある〕バハーレスターンの住民たちは恐らく、アフマディーネジャード大統領はこうすることで、国会と世論を対立関係に置き、いわば国会外しを画策したのではないかと疑ったに違いない。
もちろん、大統領選とその周辺で起きた騒動が、第10期政権の内閣に対する信任投票に影響を与えたことも事実だ。選挙戦中のことであれ、選挙戦勝利後のことであれ、アフマディーネジャード大統領の行動は一部の原理派関係者から批判の的となってきた。そして周知の通り、この「一部の原理派関係者」とは、国会で影響力を持つ原理派の有力者たちに他ならないのだ。このような状況の中、〔大統領を〕批判する絶好の機会が再び訪れたのである。彼らはある意味、大統領が指名した閣僚候補らの信任問題の中で、アフマディーネジャード大統領のこれまでの一部の行動に対して、仕返しをしようと手ぐすねを引いているのである。
いずれにせよ、昨日はスーサン・ケシャーヴァルズを筆頭に、一部の閣僚候補らにとって辛い一日となった。実際、昨日の会議が行われる前からすでに、ケシャーヴァルズ氏の入閣に関して様々な議論が国会内で飛び交っていた。
セイエド・ファーゼル・ムーサヴィー議員(ホダーバンデ選出)やゴラーム・ホセイン・マスウーディー=レイハーン議員(アフル選出)、アリー・アッバースプール議員(テヘラン選出)などはこれらの閣僚候補の入閣に異を唱える中で、「高官を気取っていたような連中が、これまでこの省〔=教育省〕の抱える諸問題を解決できた試しなどなかった。ましてや、高官職を経験したこともないようなケシャーヴァルズ女史には、問題の解決は不可能だ」などと公言した。
反対議員らは昨日、批判を繰り出す中で、「教育相候補は自らの仕事の計画とは関係のない話ばかりをしている。これこそ彼女が教育とは無縁の人物であることの証しである」などと指摘、同候補の構想からは現状の改善に向けた希望は見いだせないと強調した。
反対議員として発言を行った国会教育研究委員会のアリー・アッバースプール委員長は、スーサン・ケシャーヴァルズ候補には教育省で責任ある地位を占めた経験が少なすぎると指摘、第9期政権では教育行政を担う高官の交替ががあまりにも多く起きたため、今期同じような交替に耐えられるだけの体力は教育省には残っていないと述べ、教育相の選定にはより慎重な姿勢が必要だとの認識を示した。同氏はその上で、性別を判断基準として議論したものではないとも強調した。
〔中略〕
反対議員なしの閣僚候補も
昨日の閣僚候補に対する審査会では、通信相候補や経済財政相候補に対する審議も行われたが、両者に対しては異論を唱える議員は現れず、そのため賛成議員による弁論も行われなかった。このことにより、両候補は自らの所信について一人で淡々と述べるにとどまった。
通信相として指名されたレザー・タギープール候補は反対議員・賛成議員が現れない中、自らの今後の政策について説明、国家的な規模でのインターネット網の確立・普及、ならびに第三の携帯電話事業者の選定問題について取り組んでいくとの所信を表明した。
〔中略〕
モスレヒー情報相候補をめぐって議論紛糾
ケシャーヴァルズ候補と同様、情報相に指名されたヘイダル・モスレヒー候補についても賛否両論が沸き起こった。モスタファー・キャヴァーケビヤーン議員(セムナーン選出)やジャムシード・アンサーリー議員(ザンジャーン選出)を初めとする反対議員らは、情報省という重要省庁を〔大統領の〕個人的な趣味に委ねてしまうことは是非とも避けなければならないと指摘、同省は体制全体の意志を考えて運営されなければならないと強調した。
〔中略〕
国会少数派に属するジャムシード・アンサーリー議員は、モスレヒー候補には同省で働いた十分な経験がないと指摘、「情報相候補が提出した構想を総合判断した結果、同氏には〔気にくわない〕職員をパージし、排除しようとする傾向があるようだ」と強調した。
同議員はまた、〔アフマディーネジャード政権下で〕情報省の〔高官らの〕交替が行われたことについて指摘し、この間の同省の働きに対して大統領が〔個人的な〕不満を募らせていたことが、これらの交替の要因としてあるようだと批判を強めた。
〔中略〕
モスレヒー候補の構想
モスレヒー情報相候補は反対議員らの発言に対し、自らの構想について弁論するなかで、情報を最大限監視することを第一に考えていることを明言した。同候補は、これまでの職歴について触れつつ、イランの敵はさまざまな情報を手に入れて、革命の成果を深刻な脅威に晒そうとしていると強調、最新の情報と必要とされる複雑なシステムを活用することで、革命と体制を守り抜き、敵を出し抜くことが重要だとの認識を示した。
〔中略〕
外務省の消極的姿勢に対する批判
大統領から外相に指名されたマヌーチェフル・モッタキー候補も、原理派・非原理派双方の議員から手厳しい批判を受けた。
ジャハーンバフシュ・モヘッビーニヤー議員(ミヤーンドアーブ選出)やモスタファー・キャヴァーケビヤーン議員(セムナーン選出)などの反対議員らは、各国に駐在する大使らの能力の低さを批判、外相が約束した政治・経済的目標が実現されていないことを指摘し、モッタキー外相が示した構想は総論・理論ばかりであると語気を強めた。
反対議員らは、サウジアラビアやイラク、アラブ首長国連邦、その他近隣諸国の係官らが〔これらの国に渡航した〕イラン人に侮蔑的な振る舞いを繰り返していることに対し、外務省が消極的な姿勢に終始していることを批判、「現在の我が国の外交力・ポテンシャルは、イマーム〔・ホメイニー〕及び最高指導者のお力に負うところが多い。これらを除けば、外務省に擁護すべきものは何も残らない」などと強調した。
反対議員らはまた、国連安保理にイランの核問題が解決されないまま残っていることやヨーロッパ諸国との間で良好な関係が築けていないことなどを批判、回答を受け取れないような書簡を〔欧米諸国に〕出しても、それはイラン国民にとって侮辱でしかない、と強調した。
〔中略〕
モッタキー外相候補はこれらの疑問・批判に答える形で、政府の外交政策は原理主義と現実主義の二つにもとづくものであり、第9期政権ほど外交機関を活用できた政権は存在しないと指摘した。
〔中略〕
モッタキー外相はまた、中国でのイスラーム教徒殺戮に対してきちんとした姿勢が示されていないとの批判に対しては、「われわれはこの問題に関し、慎重に行動してきた。中国のイスラーム教徒を保護するために、われわれは特別な方法で〔問題解決へ向けた〕関与を行う努力をしてきた」と弁明した。
〔中略〕
ガザンファリー商業相候補も国会で審査を受ける
アフマディーネジャード大統領が商業相に指名したメフディー・ガザンファリー候補が、昨日の最後の候補として、国会の審査を受けた。
最初に、バフマン・モハンマディヤーリー議員(ターレシュ選出)が同候補の構想に対し、世界的な経済危機を十分考慮した様子が見られないと批判、「市場を調整するときのテコの一つに、関税をめぐる議論がある。しかし、同候補の構想にはこのことについての言及が全くない」と指摘した。
同議員はさらに、コメの輸入によってイラン人農家が苦境に立たされていると批判、「商業省はこのような状況をいつまで続けるつもりなのか、説明しなければならない。政府は様々なメカニズムを使って、この問題を解決するつもりがあるのか」と噛み付いた。
〔中略〕
こぼれ話
・教育相に指名されたスーサン・ケシャーヴァルズ候補は、審査会で奇妙な行動を示した。彼女は国会の壇上に登る際、誤って国会運営理事会がいる方向に行ってしまったのだ。国会の職員らの指示で演壇のある場所を教わった彼女は、しかし今度はなんと、演壇に向かう階段を登ると、〔演壇を素通りして〕反対側の階段で壇上から降りてしまったのである。このハプニングに議員らは唖然とし、約2分間にわたって黙ったまま、互いの顔を見合わせた。
〔後略〕
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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:17375 )