中東和平:アッバース大統領インタビュー(ニューヨーク三者会談他)
2009年09月24日付 al-Hayat 紙

■ アッバース本紙に語る:ネタニヤフの政府は問題、交渉の土台がない

2009年09月24日付アル・ハヤート紙(イギリス)HP1面

【ニューヨーク:ラーギダ・ダルガーム】

アッバース・パレスチナ大統領は、ネタニヤフ政府を「問題」であると評し、「その政府と話し合う共通の土台が存在しない」と述べた。本紙とのインタビューで大統領は、入植の部分的停止とは、「つまり入植は継続されるという意味なので」、それを受け入れるつもりはないことを示した。また、米政権が、入植の停止から「制限」へと要請を修正したことについては、額面通りには受け取らないとした。

国境問題やその他基本的課題について、アッバース大統領は、オルメルト前政権との協議で到達した地点から交渉を再開すべきと主張、イスラエルが暫定的国境を有するパレスチナ国家を求めていると述べた。また、来月初めにワシントンがパレスチナ、イスラエル双方の交渉代表団を招いて行う会談については、「イスラエル政府と断絶しているわけではない」、「話し合いを継続する以外の選択肢がない」旨述べて擁護した。

・二者会談、三者会談の雰囲気は?

「会見については、まず、それを成すべきか否かという問題があった。これを批判したり攻撃したりする反対者たちはいたのだが、否定的になるよりはよいと考え、結局承諾した。会見に出向かなければ何も成されず我々は失うばかりだ。それよりは、ここへ来て我々の見解を述べる方がよいと考えた」

「オバマ大統領との話し合いでは、(ロードマップ合意事項の)適用ということが主題となった。我々の側は、治安、行政、その他の政府機関いずれにおいても条項を適用し、自分たちに課せられた事を果たしてきた。しかし、イスラエル側は何もしない。米政権は、この8ヶ月間ミッチェル中東特使を通じて交渉を進めようと努力しており、いくらかの成果があった。しかし我々としては現状を受け入れることはできない。入植の部分的停止とは、結局入植は継続されるということを意味する。95%が停止しても、なお入植は続いていることになる」

「オバマ大統領は、「既に成し遂げたことの上にたって話し合いを継続しよう」という意見を示したが、我々としては、いったん立ち止まり、基本的な交渉事項、つまり国境、入植、難民の帰還、治安、水源等々の諸問題について、依拠すべき正当な根拠を確認してから、交渉を再開すべき、との見方である。オバマは一定の期間、現在の方針を続けるだろう。その後に、どうすべきかを考えるつもりらしい」

「我々は、いかなる状態でもオバマ大統領との関係は維持したい。米国との関係を危機に陥らせたり、それを煽るような結果は望んでいない。しかしながら、向かうべき道を示してくれる指標はなく、明確に前進しているとは言い難い」

・基本的交渉事項について、どう見解の相違があるのか?

「オルメルト前政権、並びにブッシュ政権と我々は、西岸の境界線と、占領地の区分を明確にすることで合意していた。これは、米イスラエルと我々にとって決定的な問題である。我々にとり、占領地とはガザと西岸を指し、西岸にはエルサレム、死海、ヨルダン川、「聖地」が含まれる」

「「聖地」は、当時のヨルダンとイスラエルとの間にあった境界線で明確に区分されている。これらを土台として、オルメルト政府との交渉の第二段階は、土地交換を行うための区画地図を作成することだった。イスラエル側も我々も、実際に地図を作り、土地交換案を提示し合った。しかしながら合意に至ることはなく、今はそれが無に帰した。これは問題である。」

「アナポリスで言及された基本的交渉事項は、それなくしてはあり得ない、オルメルト時代に我々が議論してきた、国境、エルサレム問題などである。ところが今彼らは、エルサレム問題を話し合ってもいいが、難民帰還については却下すると言う。あり得ない話だ。それらは全て、交渉されるべき議題として正当性を持つとみなされているのに」

・何を交渉の議題とすべきかについて、イスラエル側と根本的見解の相違があるということか?

「まさにその通り、根本的な見解の相違がある」

・それは、長期にわたって続きそうか?

「続くだろう。ネタニヤフ政府は実のところ、問題である。話し合うための共通の土台がない。入植は継続される。エルサレム問題は交渉の範囲外だと言い、入植停止に関わることも、その将来の見込みも、難民帰還問題さえも交渉の範囲外だと言うなら、一体我々は何を話し合い、何に合意すればよいのか」

「彼らは二国家解決案を拒否する。ブッシュが発言し、ロードマップに規定されている、「イスラエルと共存する独立パレスチナ国家の創設」、「1967年以来の占領終結」、この二点は我々が基準とすべき正当なものであるのに、合意されたこの重要な文言に、イスラエルは従おうとしない。イスラエルが意図するのは暫定的国境による国家である」

・それでは、米政権が役割を開始したという肯定的印象に反し、事態はひどく悪化しているということか。それならなぜ、来月初めの会合を承諾したのか。

「我々は、対話の原則を否定しない。違う議題で交渉が行われるにせよ、話し合う事には意義がある。(昨日ニューヨークでの)アラブ連盟委員会でも、治安、経済、日常生活の問題について、我々はイスラエル側と対話を断つことはしてこなかったと述べた。基本的交渉事項についても、同じように断絶はしない。さもなければ何も得られない。対話は続くだろう。政治交渉をどのように開始するかについて見解の相違はあるが、イスラエル政府と断絶はしない。合意が得られたら、話し合う」

・無期限に話し合いを続けるつもりか。

「我々の方は期間を提案した。しかしイスラエルは拒否した。しかしながら、話し合いは続ける。我々には選択肢がない。我々が対話を停止すれば事態は悪化するばかりだ。そのような危機を黙って見ているわけにはいかない。少なくとも、話し合いは継続する」

・話し合っても結果が出ない場合、それに対する反発が起こることを懸念していないのか。

「いろいろと言う人々はいるだろう。しかし、我々の立場が明確である以上、話し合いを続ける以外の選択はない」

・イスラエル側の要請は?

「暫定的国境をもつ(パレスチナ)国家だ」

・それにどう対応したのか?

「あり得ないとして拒否した」

・なぜ彼らは暫定的国境を求めるのか?

「暫定的国境を有する国家とは、西岸の占領パレスチナの40、あるいは50、あるいは60%のうえにつくられる国のことだ。それをパレスチナ国家として宣言させ、その国境は最終的に決定されているわけではないとする。国境を最終的に決めるのには、10年20年かかるだろう。つまり、最終的国境は、その時の状況次第ということになる。彼らはそれを目的とし、我々は拒否する。それはロードマップで一つの選択肢としてあげられている事であるが、我々はその選択を受け入れない」

・国境設定から始める方がよいということか?

「オルメルト政府時代に開始した話し合いを続けたい。双方で修正を施した1967年ラインが占領地の境界であるということで、我々は合意していた。これを元に話し合いを続ける」

・オバマは、イスラエルに入植活動停止を呼びかけてから、それを「制限」せよと言いだした。アメリカの対応の変化は感じられるか?

「発言が修正されたか否かはもう問題ではない。修正は済んでしまった。我々は入植の完全停止を要請している。オバマは、彼らの立場に変更はないという。我々は彼が表現を修正するのを聞いたが、その通りの意味ではなく、彼らの立場は以前と同じだと考える」

・入植問題から始めたのは、ミッチェル特使の過ちだったか?

「入植問題は最重要事項である。それで合意が得られたなら、次段階へ移行できる。ロードマップで第一の適用条項としてあげられている問題だ」

・これは失敗だったと言えないか?

「過ちだったとは言わない」

・失敗ではないのか?

「現時点まで失敗とは言われていない。ミッチェル特使は活動を続けるだろう」

・国境確定については、イスラエル側と合意しているのか?

「オルメルト時代には合意があった。現在は合意は存在しない」

・その方向を押すのか?

「我々は、この方向を強く進める意向である」

・なぜ?

「国境が確定すれば、国境問題にも入植問題にも、ひいては水源、エルサレム問題にも終止符を打つことができるからだ」

・それにあたって、アラブ、欧州、ロシアの協力は?

「4者委員会を通じた国際的協力とアラブ諸国の継続的協力を希望している。各国にも責任を果たしてもらうようコンタクトを続けている」

・ネタニヤフのモスクワ訪問の理由は?

「何か別の懸案事項のために訪問したのだろう。詳細は承知していない。パレスチナ問題協議のためにモスクワへいくとは思えない。別の問題を話し合うためだろう」

・イラン問題協議のためと言われるが、イラン問題がパレスチナ問題をしのぐのだろうか?パレスチナは常にイラン問題の駒とされているのか?

「かつてはそうではなかった。オバマがそのような事を言われた際、パレスチナ問題が第一で、まずそれを解決してから、他の懸案事項を解決すると述べた。彼は、イラン問題とパレスチナ問題をトレードするようなことは受け入れていない」

・ガザ戦争に関する国連調査委員会報告について、オバマと話したか?この件につき、司法手続きをとるのか?

「オバマとは話していない。しかしアラブ諸国とはこの件を話し合った。アラブの同胞たちが、司法手続きというこの任を引き受けてくれると考えている。彼らはそれを話し合い、適切な措置をとるだろう」

・パレスチナ選挙期日にかんするエジプト提案についての見方は?

「選挙を2010年前半にというのがエジプト案だが、選挙終結の期日もあらかじめ定めるという条件でなら、我々は、その案に同意する」

・政府の諸機関を設立すれば二年以内でパレスチナ国家が実現するとのファイヤード首相発言についての見解は?

「諸機関設置は行われている。優れた事業である。現在西岸では、多くの物事の中心となる機関が設立されている。経済状態は過去に比べてましになり、治安は完全に掌握されている。建設は急ピッチで進んでおり、オバマ大統領には、いつでも国家宣言ができるよう努力中である旨述べた。ファイヤードの事業はすばらしく、自然とパレスチナ国家の基礎を固める方向へ行っている」

・国連難民救済機関「UNRWA」の設立60年を機に多くのイベントが行われたが、アラブ諸国にいる避難民への対応、帰還の権利、レバノンが恐れる帰化問題、パレスチナ諸派との関係など様々な案件が話し合われる総会のようなものは、開催されないのか?

「この機に、UNRWAが60年間、パレスチナ人の生活と教育のための任務を果たしてきたことは非常に重要であると述べたい。ドナー諸国には引き続き機関への支援を求める。それは、事態が解決するまで難民の生活を維持するうえで重要なものである。また、事態の解決策はUNRWAの元にはなく、交渉を通じて政治的に求められるものである」

「レバノンにとり重要な問題であるが、何度も繰り返す通り、我々はレバノンに難民が残留することを欲してはいない。パレスチナ人の一部はイスラエルへ、また他の一部は生まれた国へ帰還し、さらに他の者はパレスチナ国籍を有することにより問題は解決される。レバノンに負担がかかることはない」

・レバノンとシリアにいるパレスチナ諸派との関係については?例えば、イランとシリアに対する開放政策をオバマと検討するようなことはあったのか?

「それはない。シリアと我々は良好な関係を発達させている。ヨルダン、エジプト、サウジ、UAE、カタル他と完全に協調しているように、シリア側とも協調関係にある」

・事態を楽観視するか?

「楽観主義者であるべきだ。さもなければ我々の仕事は意味がない」

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:17525 )