最高裁は盗聴されたのか、されないのか?
2009年11月12日付 Radikal 紙

エルゲネコン捜査開始以来、国家内で、水面下で進行していた衝突が、イスタンブル共和国検事総長アイクト・ジェンギズ・エンギンと最高裁の代表電話が盗聴されていたことが明らかになったことで表面化し、一触即発の状態となった。現在、電話傍受の決定(合法的盗聴)を下した側と盗聴されたとする側が、「法」ぎりぎりのところでお互いを攻撃しあっている。

最初の攻撃は、最高裁所長ハサン・ゲルチェケルからのものであった。ゲルチェケルは、最高裁の電話が傍受されるためには、最高裁第一管理委員会の決定が必要なはずだと強調した。第二の攻撃は、「盗聴」問題で招集された最高裁とともに報告書を提出した「裁判官・検察官高等委員会(HSYK)」からもたらされた。裁判官・検察官高等委員会(HSYK)副委員長のカーディル・オズベキが、権力分立の原則を提示しながら、「最高裁が守勢(弁護の立場)に立たされてしまったのは、この上なく残念である」という言葉を発したことで、さらなる一撃を与えた。裁判官・検察官高等委員会(HSYK)はまた、選ばれた5人のメンバーのサインが付された厳しい内容の報告書をも出し、真っ向から法務省をターゲットに批難した。裁判官・検察官高等委員会の報告書では、法務省に対し、裁判官と検事たちが、電話傍受の決定(盗聴)が下されたことに対し、法的利益に対する侵害であると主張したが、法務省は何の対策もしていないと述べられている。第三の攻撃はスィンジャン重罪裁判所からだった。スィンジャン重罪裁判所は新しい決定を下し、電気通信情報局(TİB)で新たに調査がなされきちんとした結果をだすよう要求した。

盗聴議論の焦点となっている電気通信情報局(TİB)はというと、第二の攻撃への反論を昨日の17:30に行なった。電気通信情報局長フェトヒ・シムシェキは、最高裁で盗聴された二つの電話は、判事検察官協会(YARSAV)会長オメル・ファルク・エミナーオールが専有する「内線」だったと主張した。シムシェキは、電話は、最高裁の代表電話という性格上、盗聴することはできないと主張した。法務省は会見を行ない、裁判官・検察官高等委員会(HSYK)の発表を批判し、最高裁代表電話が盗聴された事実について否定した。

法務省が、判事検察官協会(YARSAV)のエミナーオール会長とスィンジャン第一重罪裁判所所長オスマン・カチュマズへの反論として準備した主張では、イスタンブル共和国検事総長アイクト・ジェンギズ・エンギンの電話が盗聴され、また一週間もの間盗聴され続けたことを明らかにした。スィンジャン第一重罪裁判所の決定に沿った形で、電気通信情報局(TİB)を調べたアンカラ第一刑事裁判所裁判官ハイリ・ケスキンも、報告書において「判事検察官協会(YARSAV)会長が盗聴される一方で、最高裁代表電話も盗聴された」としている。

この二つの重大な展開は、最高裁側の怒りを買う原因となった。昨日最高裁は、スィンジャン第一重罪裁判所に提出されたケスキン裁判官のレポートを要求した。レポートが特別な特使の手を通じて届いたのち、最高裁所長ハサン・ゲルチェケルをリーダーとする9人からなる最高裁第一管理委員会が、「盗聴」問題で召集され、「予備調査」を決定した。最高裁は、判事検察官協会(YARSAV)のエミナーオール氏の電話が盗聴された一方で、最高裁のほかの裁判官や検察官の盗聴も可能かどうかを調べる予定だ。最高裁ゲルチェケル所長は、昨日「最高裁に関し、盗聴があれば、私たちもその問題を追跡する。最高裁の電話が盗聴されるには、最高裁第一管理委員会の許可が必要だ。それ以外に最高裁の電話を盗聴するのは不可能だ」と話した。最高裁法によると、一等裁判官と検察官に関係する法的諸手続き(合法的受信傍受も含め:訳者註)のためには最高裁第一管理委員会の同意が必要なのにもかかわらず、最高裁代表電話はイスタンブル第10重罪裁判所が下した決定で盗聴されてしまった。

■裁判官・検察官高等委員会(HSYK)メンバーが集まった

最高裁で、盗聴問題で会議が続いている頃、裁判官・検察官高等委員会(HSYK)の一部メンバーも同じ問題で集まっていた。裁判官・検察官高等委員会(HSYK)の会合に続いて明らかにされた報告では、一般市民を不安に陥れる盗聴事件が次々と明らかにされていると述べ、「トルコでこのような恐怖が存在することは、日々の生活でさえ人権が侵害されていると見ることができる」とされた。報告では、「夏の布告(訳者註:毎年夏6月に出されるのでこうした名称で呼ばれる:裁判官や検察官の人事異動に関するもの)」が検討されている間、裁判官や検察官の電話の盗聴について、「裁判所によって出される決定が破棄される」ために、法務省から「法的利益の侵害」の訴えが出されることで、最高裁に(判断の場が)移されることが決定されていたと指摘した。報告では以下のように述べられた:「法務大臣自身も委員となっている裁判官・検察官高等委員会(HSYK)が下したこの決定の中の必要事項が、法務省により今日まで実行に移されなかったばかりか、この問題で裁判官・検察官高等委員会(HSYK)にいかなる情報も与えられなかった。刑事裁判所法(CMK)309項に記載されている「法的利益への侵害」という手段に打って出ようとすることは、法務省に認められている一つの権利ではなく、法的な義務である。法務大臣は自らが委員の一人となっている裁判官・検察官高等委員会(HSYK)が下した決定を実施なかったばかりか、自らの配下の司法審査官を使って、裁判官や共和国検察官にかんする通信を探知し、盗聴し、記録するということを続けてきた。裁判官・検察官高等委員会(HSYK)として、自分たちの下した決定が、法務省により至急実施されることを期待し、これを注視するつもりである」

■「最高裁は守勢(弁護の立場)に立たされた」

裁判官・検察官高等委員会(HSYK)副委員長のカーディル・オズベキも、委員会のメンバーと行った会合に続いて「最高裁は今や守勢(弁護の立場)に立たされている。権力分立の原則や、権力分立システムを私たちは評価するなかで、最高裁が守勢に立たされているのは非常に残念だ。このことを、すべての最高裁メンバーとして我々も味わっている。これはトルコの、システムの将来とも直接つながることである」と述べた。
この展開に続き、電気通信情報局(TİB)大臣フェトヒ・シムシェキは夕刻に行なわれた記者会見において、ケスキン裁判官が調査を行なった際、最高裁の2つの電話番号が盗聴されていたかどうか注目されていると強調しながら、以下のように述べた:「最高裁第一長官室が盗聴されていたことはメディアでも取り上げられ、デマも流れた。調査がなされ、最高裁の固定電話のうちのひとつに関して、私たちが調査を始めてから一度も盗聴行為は行なわれておらず、他の電話に関しても、裁判官の決定があったにも関わらず、使用された(代表電話の)電話交換機の特性上、盗聴することはできず、(調査を)要求している組織の報告書のうえにも(調査が)終了したと結論が出されている」
シムシェキ大臣は、質疑応答でも、裁判所の決めた数字が「原告(盗聴されたとされる)」エミナーオール氏個人に割り当てられた番号であることを主張し、「私が明らかにしたように、使用された(代表電話の)電話交換機の特性上、盗聴行為を行なうことは不可能であり、どんな音声移転もできなかったはずである」と述べた。

■シムシェキ「首相の無念」

記録は消すことができないこと、これがデジタル電話交換機では不可能であることを明らかにした電気通信情報局長は、会合の終わりに声を震わせ、以前に書いた以下の文章を読み上げた。「私たちが到達した点はとても考えさせられるものである。電気通信情報局ができる前に、ある国の首相が6年間裁判官の決定なしで盗聴され、記録が取られ、新聞に渡り、議論を巻き起こしたことは、なぜか我々の社会では問題となってきていない。一人の首相が裁判官の決定なしに6年盗聴されていたことはだれも問題としていない。法律に沿った形で盗聴が行われているのに、ともかく今は世間が騒いでいる。このダブルスタンダードから我々はどうにか抜け出さなければならない」
電気通信情報局の情報によると、11月5日に裁判官ケスキンによって行なわれた調査で、エミナーオール氏のものだとされる9台の電話の状況が調査された。この電話のうち5つは彼の個人的な携帯電話だった。調査の間は、電話がエミナーオールの名前で登録されているかどうかも調査された。残りの4つの市内回線のうちひとつはエミナーオールのアルテゥヴィンの自宅、また他の1回線はアンカラの自宅の電話であった。残りの2回線は最高裁代表電話に接続するものであった。回線のひとつは、エミナーオールの部屋、もうひとつは判事検察官協会(YARSAV)に割り当てられていた。調査が進む中、「最高裁代表電話」として報告されているこの2つの番号が誰によって使用されていたかが、電気通信情報局(TİB)から最高裁に派遣されている専門家によって、最高裁で調査が行なわれ証明された。電気通信情報局(TİB)は、最高裁と法務省に送った報告において、最高裁が盗聴されたなど論外であること、番号はエミナーオールと判事検察官協会(YARSAV)に割り当てられていることを明らかにした。

論争が続いている中、夕刻に法務省が会見を行なった。エルゲネコン事件の捜査で、一部の裁判官と検察官の名前が出たので、調査を行なうために2008年4月15日と9月5日に(盗聴が)許可されたことを会見で明らかにし、以下のように述べた。
「法務省審査官は、56人の裁判官と共和国検察官について証拠を集めるため、これらの人物の電話盗聴の許可を裁判所に要求した。この要求にたいし、関係する裁判所から盗聴許可決定が下された。調査委員会が行なった調査の結果、これらの人物のうちイスタンブル共和国検事総長を含む46人の裁判官と共和国検察官に関し、2009年9月16日の報告書で、捜査がなされることはないとの申し入れがなされた。

■わずか(?)69人の裁判官と検察官

捜査の一環として、関係者の部屋で使用されていた電話番号について裁判所によって盗聴の決定が下され、関係裁判所によってそうした方向で手続きがなされた。盗聴の決定が下された電話番号のなかで、いくつかの報道機関で最高裁の代表電話番号であるとされた電話番号は、最高裁第一所長室の名前で登録されており、捜査で名前が出たエミナーオールに割り当てられ、彼の部屋で使用されていた電話番号であった。世論にこたえる形で、最高裁とイスタンブル共和国検察庁の代表電話が、そしてこの代表電話に関して会見を行なったすべての裁判官と共和国検察官の盗聴が求められ、そして盗聴されることなど、どのような形であれ、論外である。上記で示された56人を含め、ここ5年で法務審査官の要求によって計69人の裁判官と共和国検事にたいし裁判所によって盗聴決定が出されていたのだ」

■裁判官・検察官高等委員会(HSYK)に厳しい反論

法務省は会見で、裁判官・検察官高等委員会(HSYK)が、法務省が「盗聴」に関して「法的利益の侵害」という方法に踏み込まないのを批判していることを受け、反論した。法務省は、裁判官・検察官高等委員会(HSYK)が、組織の侵害者となっていると主張する一方、以下のことを述べた:
「裁判官・検察官高等委員会(HSYK)の幾人かのメンバーが行なった会見において、彼らが下した決定のうち必要な事柄を法務省が実行しなかったと述べられた。裁判官・検察官高等委員会(HSYK)のこの決定を法務省が実行しなければならないということはない。「法的利益の侵害」を要求する権限は法務省にあるのです」

■チチェキ:双方とも法律家である

CNNトルコの「アンカラ・クリシ」という番組に出演していた副首相ジェミル・チチェキはというと、この問題についての質問に以下のように述べた:
「私は詳細を知らないので、これらの盗聴が、やり方としてあっているのか、いないのかわかりません。ただ『裁判所の決定に従っている』といっているし、盗聴された側も裁判官であります。お互い法に携わる者同士、彼らがこの問題に決着をつけるでしょう」

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( 翻訳者:近岡由紀 )
( 記事ID:17864 )