コラム:ワールドカップ最終予選から生じたアルジェリアとエジプトの争いの正体
2009年11月20日付 al-Quds al-Arabi 紙

■アルジェリアとエジプトの残念な争い

2009年11月20日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

来年夏に南アフリカで開催されるサッカーのワールドカップ最終予選は、アルジェリアがアラブ代表の座を勝ち取って終わったが、最終予選で競い合ったエジプトとアルジェリアの関係が急速に悪化している。

アルジェリア在住のエジプト人や、ハルツームで行われたプレーオフを観戦したエジプト人サポーターが妨害やいやがらせにあったことへの抗議として、エジプト政府は駐アルジェリアのエジプト大使を協議のため召還した。

カイロで行われた一回目の対戦に先立つ数日間に、アルジェリア在住エジプト人コミュニティが嫌がらせを被り、エジプトで起こった乱闘でアルジェリア人の死者が出たという誤ったでっち上げのニュースが流れるとともにその嫌がらせがエスカレートしたことは、議論の余地がない非常に残念な事件であり、この点においてアルジェリア政府は大きな責任を負う。アルジェリア国内のエジプト人やその施設、エジプト企業の事務所などを保護するという義務を果たさなかったからだ。

それと同様に、アルジェリア代表チームがカイロ空港に到着し、バスで宿泊施設に向かう際に十分な警護をせず、[何者かの投石によって]バスの窓が壊され、プレーヤー3名が負傷するという事態を防げなかったエジプト政府も責任を問われている。

アルジェリアとエジプトの新聞やテレビ局といったメディアが、同胞関係と友愛、血族の絆で結ばれた両国民の間に嫌悪と敵意をあおりたてるのに大きな役割を果たした結果、あらゆる尺度から見て悲劇的な事態が起きてしまった。
(中略)

サッカーの場での争いがさほどの被害を出すこともなく決着がついた後になってまで、アルジェリアとエジプトの両政府は、この内輪もめの火を煽り立てることによって、両政府の機能不全や両国民への弾圧を覆い隠そうとしている。エジプトとアルジェリアの両国民は、独裁と自由の没収、汚職やコネ、失業、保健・教育サービスの劣化などに苦しめられている。しかし両国民は、失政によってこうした低迷に追い込んだ政府に怒りを向ける代わりに、残念なかたちで互いに争い、憎みあうことで、両国の政府と責任者を免罪している。

我々は悲しみ、失望している。それは我々の同業者である報道人と新聞・テレビといったメディアが、国民や国益のみならず、職業意識よりもセンセーショナルな報道を優先したために、職業的・倫理的なテストに落第して扇動の具となり、同胞であるべき両国民の間に憎しみを掻き立てることに組したためである。

この危機が今後どう進展し、どこに行き着くのかはわからない。だが、同胞として共に闘ってきた歴史を持つ両国民の間に生じた今回の不和は予想以上に大きく、報復合戦が続いている現状においてはなおさらのこと、容易には収まらないかもしれない。

これはアラブ世界を覆っている底なしの劣化の残念な一例であり、腐敗した独裁政権はそれを利用して、可能な限り長く政権に留まる口実にしようとしている。ささいな出来事を捉えて大げさに騒ぎ立て、大衆の気をそらせ、真の病から目をそらせようとしているのだ。しかし真の病は、独裁政権自身なのである。

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( 翻訳者:久田理恵 )
( 記事ID:17979 )