アル=カーイダの伸張を恐れ、各国がイエメンに大規模支援
2010年01月20日付 al-Quds al-Arabi 紙

■サウジアラビアがイエメンに約20億ドルを支援、欧州もロンドン会議で相当の支援を約束へ
■イエメン:「アル=カーイダの勢力増大が、統治システム崩壊への世界的不安を引き起こしている」

2010年01月20日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【サヌア:ハーリド・アル=ハマーディー(本紙)】

イエメンを拠点とした「アラビア半島のアル=カーイダ」の亡霊は、政府がその構成員に軍事攻撃を加えるたびに強大さを増していくと、複数のイエメン筋が語った。世界がイエメン当局に支援の手を差し伸べることなく、同国の治安状況の悪化を傍観し続けるなら、イエメンのアル=カーイダは取り締まりが難しくなるほどに勢力を伸張させるのでは、との治安上の不安が倍増している。

イエメンの治安状況は、「コントロール不全」あるいは「危険」水域に達している。これはイエメン当局が北部のホースィー派反乱勢力との戦い、南部の分離派との対立、先月中旬から激化している各地でのアル=カーイダとの戦いという、3つの治安問題に同時に追われているためだ。イエメン政府がこれら全ての問題に関わっているということが、同国の力を分散させ、これら全ての状況における立場を弱めることになっていることは間違いない。政府はホースィー派に敗北をもたらすことも、南部の分離派を抑えることも、アル=カーイダを排除することもできていない。

専門家たちの意見によると、アル=カーイダに対する一連の政府の攻撃で、同組織は立場を強めるとともに、逃走中の構成員に対する国民の支持を得た。とりわけ部族民はアル=カーイダに共感することが多い。彼らは必ずしもアル=カーイダを好んではいないものの、政府を不快に思っているためだ。

また、イエメン政府が同国のアル=カーイダ構成員に対して軍事攻撃を加える度にアル=カーイダは、政府が倒すと宣言した主要指導者の誰一人として死傷しないことによって、「勝利」を収めている。先月17日と24日にアビヤン県、シャブワ県、サヌア県などで行われた作戦に続き、先週金曜日には、イエメン・サウジ国境沿いのサアダ県とアル=ジャウフ県との間に位置するアル=アジャーシル地区で攻撃が行われ、同作戦後にイエメン当局は、アル=カーイダ軍事司令官カーシム・アル=リーミーを含む同組織の構成員6名が死亡したと発表した。ところがその後、このうちの誰一人として負傷すらしていなかったことが確認されたのだ。

これらの情報筋によると、アル=カーイダ構成員への政府の攻撃が大きな共感を生み、ここ数週間の間にイエメンの部族民たちの間では、これまでにない程アル=カーイダの地位 が高まっている。政府のアル=カーイダに対する攻撃が強まる度に、同組織への加入率も上昇しているという。アル=カーイダはこれに乗じ、意識が低く、宗教的共感レベルが強い部族社会の間で、共感を持つ若い支持者を引きつけている。

アル=カーイダに対する最近の政府の取り組みは、国軍であれ、米軍をはじめとする外国軍であれ、直接的な軍事対決に限定されている。しかし、イエメンの意思決定者は、外国軍利用のリスクの大きさを十分に認識している。よって、イエメン政府は資金的援助のみを要請しており、たとえ対アル=カーイダの代理戦争の様相を呈するとしても、国軍によって戦おうとしている。

テロとの戦争において最も熱心にイエメンを支援しているのは、アメリカ、イギリス、サウジアラビアだが、事実上、最も支援を行っているのはサウジアラビアだ。サウジアラビアの複数の外交筋は本紙に対して、最近、サウジアラビアがイエメン政府に約20億ドルを提供したこと、またこれは治安強化のためのもので、第一の目的は対アル=カーイダの戦いであることを明かした。

同筋によるとアメリカは、アル=カーイダとの戦いにおいてイエメンの努力を最も支援している国に数えられるが、同国の資金援助はサウジアラビアに次いで2番目だ。しかもアメリカの支援は軍事車両の購入や、軍・治安部隊内対テロ部隊への技術・訓練支援の提供に限定されている。イエメン政府は今月27日に行われるロンドン会議の成果に非常に期待している。同会議ではイエメンが直面している緊急の課題が話し合われ、同時に西洋諸国からイエメンへ開発・治安支援が約束される予定である。だがその目的については、イエメン政界の間で疑念が広がっている。

(後略)

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( 翻訳者:梶田知子 )
( 記事ID:18339 )