トルコによるあらゆる警告にもかかわらず、米下院議会外交委員会は、「アルメニア虐殺」の承認を含む第252号決議案を可決した。
外交委員会で行われた投票において、決議案は反対22票に対し、賛成23票で可決された。ユダヤ系の民主党ハワード・ベルマン議員が議長を務めた同委員会は、第252号の「虐殺」法案の審議のため、トルコ時間の17時に召集された。ナムク・タン駐米国大使、トルコとアルメニアの両国議員も傍聴した審議後、投票が行われた。投票では、委員23人が賛成、22人が反対に票を投じた。ハワード・ベルマン議員は、同委員会の冒頭に行った発言で、「アルメニア人虐殺を認める時期が来た」と話した。「虐殺」が承認されることが、トルコ人にとって「ショックなできごと」であるとしたが、にもかかわらず、(両国の)関係は時間が解決してくれ、より健全な関係を構築することができると話した。
こうして、トルコ政府、ワシントンにあるトルコ大使館、米国に派遣したトルコ大国民議会(TBMM)代表団に加え、トルコ政府をロビー活動で支えていた会社、米国内のトルコ協会、トルコに駐在している米国企業によって行われた働きかけや試みは、法案可決を防ぐには及ばなかった。
最後に、アフドゥッラー・ギュル大統領が、オバマ大統領と電話会談を行い、法案が可決されると、二国間関係に悪影響を及ぼしかねないと伝えた(が、可決を防ぐには及ばなかった)。
■オバマ政権は、真剣な「ロビー活動」を行わなかった
前政権と異なり、オバマ政権は、当初から法案に反対する明らかな態度をとらなかった。外交筋は、米政権が法案可決の場合二国間関係やトルコ・アルメニア関係に「多大な損失」が発生すると考えているのを明らかにしたが、ヒラリー・クリントン国務長官や政権の高官は、最後まで、真剣に向き合わなかったと考えられている。
クリントン国務長官が、外交委員会での審議開始前にハワード・ベルマン委員長に電話し、トルコ・アルメニア関係正常化の過程で同法案が及ぼしうる悪影響について警告をしたが、結果には繋がらなかった。トルコとの緊張関係により、イスラエル政府、米国ユダヤ人ロビーや組織も、今回は消極的であった。
■今後どうなるのか
外交委員会を通過した決議案が、今後、下院本会議で審議されるかどうかは明らかではない。同決議案の賛成派として知られるナンシー・ペロシ下院議長は、2007年ブッシュ政権の働きかけの結果、下院で十分な支持を得ることができないとの理由で、同法案を議題にしなかった。
同決議案に、現時点で署名にて支持を表明している下院議員の数は、137人に上る。しかし、決議案が同委員会を通過するためには、定員435名のうち218名の支持が必要であることが注目される。下院で可決されると、上院の外交委員会に送られる。そこで、十分な支持を得ると、上院本会議での投票となる。上院で可決された場合,最終的判断はオバマ大統領に委ねられる。
決議案が外交委員会通過を防げなかったトルコ政府は、今後、下院本会議の議題にならないよう一層の働きかけが期待される。
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( 翻訳者:田辺朋子 )
( 記事ID:18609 )