米政府がヒズブッラー系衛星TVチャンネルの放映を禁止、レバノン側が反発
2010年01月11日付 Al-Nahar 紙

■ 渡航手続きの強化措置とマナールTVの放映禁止、厄介な外交戦争に火をつける

2010年01月11日アル=ナハール紙(レバノン)HP内政面

【ハリール・フライハーン】

 レバノンのミシェル・スライマーン大統領が昨年12月19日に行い成功裡に終わったワシントン公式訪問の結果をかき乱す新年早々のアメリカ政府の2つの措置に、レバノン人の多くが政府レベルにおいても国民レベルにおいても拒否を示している。

 1つ目は、米議会下院が採択した決議に基づくメディア関連の措置であり、ヒズブッラーに属する衛星テレビ局「アル=マナール」チャンネルの放映を「放映する番組において米国民に対する敵愾心を煽り、テロを奨励しているため」禁止するという、表現の自由に反する措置である。2つ目は治安に関連する措置で、10ヶ国を対象とするブラック・リスト(そのうち9ヶ国がアラブ諸国であり、アメリカの同盟国や友好国も含まれている)にレバノンを掲載し、アメリカの空港を発着するレバノン人渡航者に屈辱的な電子検査を受けさせ、アメリカへのレバノン渡航者は皆「テロのウイルス」を持っているとみなすものである。

 レバノン側の拒否の姿勢はレバノン大統領や国民議会議員、閣僚らによるメディアでの発言のみならず、アントゥワーン・シャディード在ワシントン・レバノン大使が直ちに、スライマーン大統領からの直接の指示に基づいて、レバノンを含む数ヶ国からの渡航者に対する米政権の処置へのレバノン人の懸念」を表明する動きを開始するというかたちでも示された。シャディード大使は先ず米国務省を訪問して同省高官らに激しい口調で抗議し、渡航者検査の担当者らと会見して渡航者の心象への悪影響を訴えた。また同大使はホワイトハウスの国家安全保障会議の高官を訪問し、レバノン系のレイ・ラッフード運輸長官に連絡をとってレバノン人渡航者の尊厳を侵害する措置について不快感を表明した。

(中略)

 今回の諸措置に対する抗議は、外交ルートを通じた公式な訴えにとどまらず、先週金曜日にアルシー・ヘイスティングズ米下院議員の訪問の際に、スライマーン大統領、サアド・アル=ハリーリー首相、アリー・アル=シャーミー外務移民相も抗議を行っている。シャーミー外務移民相はこれらの措置について「個人の基本的権利、人間としての尊厳や国籍間差別その他に抵触する」として反対の意を示した。また大統領らは重ねて同議員に、今回の措置に対する拒否と不快感を表明した。

 またベイルートを訪問したジョン・マケイン米上院議員に対しては、マナールTVを含む視聴覚メディアの規制に関する米下院の決議を拒否する立場を伝えた。しかしマケイン議員はこれに納得しなかったようで、訪問先のムフターラで公然と反論し、米下院の決議をあくまで支持する姿勢を示して「合衆国にはテレビ局がテロや紛争を煽った場合に制裁を加える権利がある」と述べ、「人々をテロ行為に駆り立てることと表現の自由には違いがある」と付け加えた。スライマーン大統領はマケイン議員に対して「レバノンは表現の自由を保障し、保護することに心を砕いている」と説明し、ビッリー国会議長はナンシー・ペロシ米下院議長に対して伝えたメッセージを同議員に報告した。大統領と国会議長の示した見解は「ニュースや番組を放映する衛星テレビ局への制裁に関する米下院の決議は、我が国や多くの諸国の主権に対する侵害であり、自由、表現の自由と市民の権利に抵触するものであり、[両国]関係を複雑化させ、貴国のイメージを悪化させる」というものであったが、徒労に終わった。

(後略)

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( 翻訳者:平川大地 )
( 記事ID:18742 )