独作家ギュンター・グラス、「トルコ政府が謝罪する時がきた」―アルメニア問題
2010年04月15日付 Milliyet 紙


文化プロジェクトへの参加のためイスタンブルを訪れた作家のギュンター・グラス氏は記者会見において、ポーランドのユダヤ人に対するドイツの謝罪に言及し「トルコ政府関係者がアルメニア人に謝罪する時が来た」と述べた。

「ヨーロッパ文学をトルコで‐ヨーロッパ文学をドイツで」という文化プロジェクトの関係でイスタンブルを訪れているドイツ人作家のギュンター・グラス氏とトルコの作家ヤシャル・ケマル氏が、本日15時からハルビエ・ムフシン・エルトゥールルホールで行われる文学対談を前に顔を合わせた。
昨夜ドイツ大使館の夏期公邸で行われた会議には、エッカルト・クンツ・ドイツ大使とEUトルコ代表部代表のマルク・ピエリニ大使も参加した。ヤシャル・ケマル氏は冒頭でギュンター・グラス氏について次のように述べた。「私は政治参加する作家であり、それは皆が知っていることです。グラス氏こそ、私が政治参加することを学んだ人物なのです。」
グラス氏は、ケマル氏が自身の出身地域を世界の焦点とし、常に過去を物語ってきたと述べた。約2時間続いたこの会議におけるグラス氏の話の基本的なテーマは、トルコの過去とそれに向き合うことの必要性であった。

向かい合うべき過去としてグラス氏が意味していたのは、アルメニア人の追放であった。グラス氏は「1940年代、私はナチスの影響下にありました。その後ブーヘンヴァルト強制収容所でのユダヤ人に対する仕打ちをおさめた写真を初めて見たとき私は『ドイツ人はこんなことはしない。プロパガンダだ』と自分に言い聞かせ、信じようとしなかったのです。ドイツがこれをやったのだという事実を認め、向き合うのは容易なことではありませんでした。アルメニア人に対して犯した蛮行を、トルコは一体いつ認めるのでしょう?」と述べた。

グラス氏は、ウィリー・ブラント元独首相が1970年にポーランドのユダヤ人に対し跪いて謝罪したことに言及し、トルコ政府関係者がアルメニアやトルコに住むアルメニア人に謝罪するときが来たと述べた。
「ジェノサイド」という言葉に関して意見を求められると、会議の冒頭からそれを使ってはいないと述べ「トルコがその出来事をどのように名づけるのか、自らが決めるべきである」と語った。
また、今度の土曜日に行われる、首相と作家による(クルド問題の)民主的解決策に関する会議を前に、同会議に関する自身の提案について聞かれると「首相には、ただ聞いていればいいと提案します。国内問題を最もよく観察しているのは作家なのです」と回答した。

■大臣へのサプライズ

記者会見終了時に、エルトゥールル・ギュナイ文化観光相が公邸を訪れグラス氏とあいさつを交わした。しかし彼はギュナイ大臣にあるサプライズを用意していたのだ。ドイツペンクラブのメンバーであるグラス氏は、エジプシャン・バザールに爆弾を仕掛けた容疑で裁判にかけられた、社会学者で作家のプナル・セレキ氏が自分たちに助けを求め、グラス氏らは彼女を受け入れて刑にかけられぬよう擁護することに尽力したと述べた。ドイツペンクラブとしてセレキ氏のために筆をとった文書をギュナイ大臣に手渡した。その中には「この決定は、トルコの司法における影響力のある一部のグループの、トルコ社会における すべての反民主的権力に断固として反対するプナル・セレキ氏の声を永遠に抑えるという目的を示している」といった内容が書かれていた。
ギュナイ大臣はグラス氏に次のように答えた:「この裁判でセレキ氏が無罪となることを願っています。しかしトルコでは、誰も裁判に介入することはできないのです」

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( 翻訳者:大門志織 )
( 記事ID:18891 )