エジプトで増加する宗教間衝突、政府の反応鈍く
2010年04月13日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ 調査結果「エジプトの宗派間衝突は増加しているが、政府の反応は鈍い」

2010年04月13日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム面

【カイロ:ディーナ・ザーイド】

 人権団体は日曜日、調査結果を発表し、エジプトは増加しつつある宗派間衝突に対策を講じ、攻撃がさらに増加する危険を回避するために、犯人を司法の場で裁くべきであると論じた。

 この調査結果を公表した記者会見の場で「個人の権利のためのエジプト・イニシアティブ(EIPR)」代表のフサーム・バフガト氏は、「この国は宗派間衝突に対処するための計画を持たず、問題の存在を認知すらしていない」と語った。

 この調査では、約7800万人の人口のうち10%がキリスト教徒であるエジプトにおいて、宗派間衝突の件数が2008年から2009年の間に増加したことが分かった。2008年に24件、昨年には29件、合わせて53件の衝突事例が報告されたが、多くの件は十分に調査されるどころか、見過ごされてきた。

 大規模な宗派間衝突のひとつでは、6人のコプト教徒が殺されている。コプト暦のクリスマス・イブにあたる1月7日に、カイロ南方のナグウ・ハンマーディー市で、コプト教徒によってイスラーム教徒の少女が暴行されたことに憤ったイスラーム教徒たちが、車から発砲した事件だ。発砲に関して数人のイスラーム教徒の裁判が審理中だ。

 しかし活動家たちによれば、政府は大きな衝突事件が起きた時にだけ動く傾向にあり、襲撃の容疑者たちに対して法的な措置を取ることを犠牲者に止めさせようとすることもあるという。バフガト氏は、「当局は警察署で犠牲者たちに権利を放棄するよう圧力をかけ始める」と語り、「国家も、イスラーム・キリスト教双方の宗教指導者たちも、両宗教の信徒間の融和の存在を確証したいとの動機から、こうした事件に率直に対処せず、むしろごまかそうとする」と続けた。エジプト当局は常々、いかなる衝突であれその重要性を低く見せようとして、例外的な事件であると発表する傾向にある。

 調査結果では、衝突の発生率が最も高いのはエジプト南部のエルミニヤ県であることがわかった。エルミニヤ県では17の村で35日に一度の割合で衝突が起こっており、たいていそれは村から村へと広がるが、これらの事件のうちどれ一つとして、法廷に引き出された者はいない。

 バフガト氏は、「このような爆発が起こり、尋常でない速さで火が燃え広がることを危惧している。県全体から隣県まで広がれば、まさしく悪夢だ。このシナリオの場合、事態の収拾は不可能となる」と述べた。

 エジプトの宗派間衝突は多くの場合、農地所有を巡るいさかいや、異なる宗教に属する男女間の関係が理由で始まる。しかし今回の調査からは、宗教以外での小規模の争いが社会全体への集団処罰にエスカレートする事例がより一層広がってきていることが分かった。家畜や子どもの喧嘩を理由とした争いが、より大規模な争いに転じるのだ。

 人権団体は、ワクフ省が宗教的寛容を広めるために上エジプトの村々にイスラームの宗教指導者たちを派遣していることによる前向きな変化のいくつかを指摘している。だが事態はより一層の努力を必要としているとして、バフガト氏は「ここ40年のうちにこの問題への対処に失敗するならば、さらに悪化は続くだろう」と語った。

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( 翻訳者:香取千晴 )
( 記事ID:18912 )