トルコ政府、身分証明書の宗教欄に関する欧州人権裁判所の判断に反論せず
2010年05月09日付 Radikal 紙

身分証明書の「宗教」欄に自身の信仰を記入することについての裁判に関し、欧州人権裁判所(AİHM)から出された判決に対し、法的控訴申請期間の満了にも関わらず、トルコ政府側からの異議申し立てはなかった。

トルコ共和国政府は、イズミル在住のシナン・ウシュクさんが起こした、身分証明書の「宗教」欄に自身の信仰を記入することについての裁判に関し、欧州人権裁判所(AİHM)側から出された判決に対して法的期間の満了にも関わらず異議申し立てを行わなかった。外務省が異議申し立てに向けた控訴の申請は行わないとの発表をする一方、専門家たちは、政府ができるだけ早く身分証明書の「宗教」欄に関する改正を行うべきだと述べた。

地方自治体職員である48歳のシナン・ウシュクさんは、2004年にイズミルで裁判を起こし、身分証明書の「宗教」欄に「イスラーム」ではなく自身の信仰である「アレヴィー」が記入されることを要求した。裁判では、アレヴィーはそれ自身宗教ではないという判決が下され、要求は却下された。トルコの国内法の範疇では望んでいる結果を得られなかったウシュクさんは、2005年に欧州人権裁判所にて同じ訴状により裁判を起した。そして公正な判決と差別の禁止に関する条項が侵害されたとして、裁判に訴えた。ウシュクさんがおこした裁判は、今年の2月2日に欧州人権裁判所による判決で結審した。判決によると、身分証明書において宗教という項目のある事自体が人権侵害であることや、国家は宗教に関して中立でなければならないことが述べられ、この項目の撤廃が命じられた。さらに、「宗教」欄の存在は、欧州人権条約の信教と身体の自由を保障する第9条に反することが述べられた。

裁判所は、宗教または信仰が身分証明書で明らかにしなければならないことは、個人の自由の侵害であると判断し、この問題の解決は身分証明書における「宗教」欄の完全な撤廃によって可能であると述べた。裁判所の判決では、「個人を宗教や信仰によって判断することは、国家がなすべきことではなく、こうしたことは国家の中立性や独立性の原理に反する結果を生み出す」と述べられた。(ウシュクさんの)要求がなかったために損害賠償は命じられなかった。

■5月2日に(控訴申請)期間は満了した
欧州人権裁判所のトルコ共和国に対する判決に関して、トルコは異議申し立てのために3ヶ月の期間を与えられた。この期間は2010年5月2日にて満了し、トルコ共和国が異議申し立ての方向でいかなる申請も行わなかったことが明らかになった。外務省からは以下のように述べられた。「われわれ政府に対して欧州人権裁判所にて行われたシナン・ウシュクさんによる訴訟に関して、欧州人権裁判所より出された2010年2月2日付の判決に対し欧州人権裁判所大法廷への(控訴審の)申請は行われなかった」

欧州人権裁判所の判決を望んだ形で手に入れ、「静かな革命」と評価されるシナン・ウシュクさんは、以下のように発言した。「ようやく明るい見通しとなりました。3ヶ月間の反論期間も満了し、いかなる申請も行われませんでした。政府が欧州人権裁判所の判決を、できるだけ早く適用することを待ち望んでいます。宗教欄の撤廃とともに、私と同様多くの人が不当な扱いを受けているが、これらもなくなるでしょう」

■改正が行われなければならない
専門家たちは、判決に対する異議申し立てが行われなかったことにより、政府が身分証明書における宗教欄に関して新たな変更を行うことは明白であると述べた。EU加盟に向けて欧州人権裁判所の判決に従い、身分証明書における宗教欄の即時撤廃に関連して憲法改正が行われる必要性のあることも述べられた。

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( 翻訳者:指宿美穂 )
( 記事ID:19073 )