スペインの4つの市で黒衣(体を覆う長衣)の着用が禁止された、フランスでは来週、黒衣の着用者に対する罰則を準備をしている。ヨーロッパのムスリム指導者たちと専門家たちは、ムスリムに対するより深刻な攻撃が起きることを恐れている。
今日までヨーロッパであまり重要でない事柄として取り上げられていたムスリムに対する敵意が、ここ数ヶ月の間に政治家の公的な発言のなかで現れる状態になった。50年以上の間、ヨーロッパに暮らすムスリム移民たちのミナレ(モスクの尖塔)、モスク、黒衣がどうして今、問題となっているのだろうか?政治学者サミム・アクギョヌル氏は、この展開を、1990年代以降、移民の第3世代たちが、(ヨーロッパ人とは)異なった生活を送る権利を求め始めたことで説明をしている。アクギョヌル氏は、このことが、ヨーロッパが自身のアイデンティティーを問いかける時期にぶつかった事で、イスラムの視覚化(建築や服装)に対する反発を生んだと分析している。通常、法律は20年遅れで社会学を追うため、今日になり、この反発の表れが法律や禁止に発展したのだという。
■経済危機の影響
無論、2008年以降、影響を与えている経済危機とそれに伴って起きた社会的な変動も外国人に対する反発を生んだ。アクギョヌル氏は、「このような時期、世論における恐怖の的となるようなグループがつくられます。今回はムスリムがその対象となったのです」と述べる。フランスの最も大きな反民族主義組織、SOSラシスムの代表者ドミニク・ソポも、「ヨーロッパの指導者たちは危機によってもたらされた問題から目を外そらさせるために、外国人嫌悪症という表現を展開しました。そして、メディアがそれを助長させました」と解釈を行っている。
フランスにおいて最も高等なムスリム組織であるフランス・イスラム委員会はモスクとミナレに対する攻撃に関しては反発、しかし、黒衣に関しては遠慮がちに意見を述べている。委員会の副委員長であるハイダル・デミルユレキ氏は、「私たちはこの種の服装がヨーロッパで広まることを望んではいません。しかし、これがムスリムを狙った法律によって禁止されることを、危険なことだと捉えています」と話した。
■フェミニストのムスリムたちは喜んでいる
ヨーロッパで唯一、黒衣の禁止を支持している人たちは誰かというと、それはフェミニストである。フランスのムスリム街にある女性の権利を守る「売女でも忍従の女でもなく」組織代表のスィヘム・ハブシ氏は、「毎週、何十人もの黒衣を着た女性が電話をかけて、助けを求めてきます、弁護士もしくは泊まる場所を探しています。禁止法はこの女性たちを救うものですから、我々は全面的に支持します」と話した。
■ミナレの禁止から始まった
スイスでは11月に行われた国民投票でミナレの建築が禁止された。国内ではただ6つのミナレが存在している。
首相不在のベルギーでは、フラマンとワロンの国会議員たちによる初めての意見の一致をもって決議が下され、30~100人の女性が着用していた黒衣が禁止された。
フランスの議会は、「黒衣はフランスの価値に反している」とし、禁止の法案が議題に挙げられた。この禁止に関しては7月6日に議論される。
イタリアでは5月に、国内で初めて黒衣をつけた女性が罰則を受けた。警察は本人確認のために、男性公務員たちに対し顔を見せることを拒否した女性から500ユーロの罰金を徴収した。
スペインではバルセロナを含む4つの市で、公共の建物での黒衣の着用を禁止した。カタルーニャ議会も昨日1日、(カタルーニャ)自治州全域で黒衣を禁止する法律を施行した。
フランスではここ6ヶ月の間で行われたムスリムの墓地に対し行われた攻撃の数が、昨年全体を通しての攻撃数を上回った。最も新しいものでは昨日、ストラスブールで18の墓石の上に落書きがされた。フランスでは5月に、ある女性が、ショッピングセンターで買い物をしていた女性の黒衣を引っ張って破き、喧嘩となった。
オランダでは民族主義者のヘルト・ウィルダースが率いる自由党(極右派)が6月9日に行われた選挙で15.5%の票を獲得した。
■カラシニコフ銃による攻撃
フランスに存在する2千のモスクの内、千5百を管轄するフランス・イスラム委員会の副委員長ハイダル・デミルユレキ氏によれば、2010年の初頭から、墓地とモスクに対して行われた攻撃の数は、去年一年間の攻撃数を上回ったという。攻撃されたモスクの中には、トロワ市にあるトルコ人の小さなモスクも入っている。最も深刻なことは、今年になって初めて、モスクへの攻撃がカラシニコフ銃(ロシア製軽機関銃)によって行われたということである。フランスにある2千のモスクの内、3百がトルコ人のモスクである。
■「ムスリムが同化する危険はない」アクギョヌル氏による解説
ヨーロッパは沸点に向かっているのでしょうか?
ヨーロッパのムスリムというある一定のグループが存在する訳ではありません。北アフリカの、ブラック・アフリカの、トルコの、アジアの、それぞれのムスリムたちが一つの運命共同体として、共にヨーロッパに対し反抗するとは思えません。
首相がヨーロッパのムスリムについて述べた同化の危険性は本当にあり得るのでしょうか?
1990年以降の世界において、今日の交通や通信条件のもと、ムスリムたちが同化するという危険はもはや残されてはいないでしょう。この人たちのそれぞれの祖国とのつながりは100%のもので、断絶を望んだとしても、可能とはならないと思います。
ヨーロッパ人の外国人嫌悪症は「自然に過ぎ去っていく」一つのプロセスなのでしょうか?
もしそうであればどんなによいでしょう、しかしそうは考えていません。ヨーロッパは綱渡りをする状態に入っています。実を言うとこの理由も少しあって、私はトルコがEUに加盟することを支持しているのです。トルコ国内の議論がヨーロッパに有効に作用すると考えています。
■サミム・アクギョヌル氏について
20年間、フランスで暮らす。ストラスブルグ大学政治学教授。マイノリティーの歴史と法律に関する専門家。
補足説明
フランス人の70%、イギリス人の57%が黒衣に反対している。しかしながら、フランス人の22%、イギリス人のたった9%のみが黒衣に加え、十字架、ダビデの星に反対する法律に投票すると表明している。
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( 翻訳者:西山愛実 )
( 記事ID:19560 )