2片の骨片に刻まれた「キュロス憲章」〔※〕の中国語バージョンが、中国・紫禁城で発見された。
〔※バビロンを征服したアケメネス朝の王キュロス2世が作らせたとされる大英博物館所蔵の古代の遺物で、一般には「キュロスの円柱」として知られている。この円柱には、王の寛大さやバビロン市民の生活の改善、囚われの身となっていた人々の解放(聖書の記述からユダヤ人の解放を指すものと信じられている)などが記述されている。このようなことから、この円柱は1960年代以降、当時のイラン国王によって「世界最古の人権宣言」として喧伝され、それ以降イランでは「キュロス憲章」として知られるようになり、現在でもイラン人の歴史的アイデンティティの重要な一部を占めている〕
「キュロス憲章」が再び話題を集めている。しかし今回騒がれているのは、 〔大英博物館から〕イランへのこの土製の円柱の貸し出しをめぐるトラブルについてでもなければ、また大英博物館で同円柱の欠片が発見されたというようなことについてでもない。
初めに大英博物館の公式サイト上で取り上げられ、後にニュースサイト「文化遺産ニュース」に転載されたこの報道によると、今回、この憲章の別のコピーが発見されたという。これまでのところ、この情報は完全には確認されていないものの、この憲章のコピーは長年にわたり、中国・紫禁城において保管され、しかも誰一人このことを知らなかった、と言われている。
2片の骨片に刻まれたこのコピーは、1985年から中国の碑銘博物館に保管されていた。しかし最近になって、近東言語の専門家の1人が、この記述はおそらくキュロスによる人権宣言の一部ではないかとの見解を示した。これを受け、この骨に刻まれた文字の写真が、調査のため大英博物館に送られた。
同博物館所属の近東古代文字の専門家イルニック・フィンクル氏は現在、「この記述はキュロスの碑文そのものではないものの、キュロス憲章のイラン語による別バージョンだろう」と語っている。
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事件は、2片の白骨化した馬の骨片が最近、中国で発見され、キュロス憲章の要約をコピーした内容が含まれていたことが明らかとなったことにさかのぼる。〔‥‥〕
文化遺産ニュースによると、当初、これらの骨片は偽物であると思われていたが、しかし大英博物館所属の近東古代文字の専門家の一人イルニック・フィンクル氏は、それらは〔偽物ではなく〕本物であるとの見解を示している。もし発見されたこれらの骨が本物であるとすれば、イランと中国の関係史は数世紀さかのぼることになる。
イラン人考古学者のカームヤール・アブディー氏は、この発見の重要性について次のように述べている。「もちろん、この遺物が本物であるかどうかについては、その他の言語学者の見解や研究所での調査結果を待つ必要がある。しかし、もし本物であれば、この重大発見は、近東関係、特に紀元前最初の千年期におけるアケメネス朝と中国(なかでも東周時代)のそれについてのわれわれの見方に、大きな変更を迫るものとなるだろう」。
これまで、アケメネス朝が中国と関係を築いていたとする直接的な資料は見つかっていなかった。今回の発見で、イラン・中国関係史は、イランではアルサケス朝〔※一般にパルティア帝国で知られる〕時代、中国では漢王朝時代よりも前の、アケメネス朝・東周時代にさかのぼることになる。
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( 翻訳者:鳥光真理子 )
( 記事ID:19986 )