ドイツのクリスティアン・ウルフ大統領は、トルコ大国民議会で演説を行った。彼は演説の中で、アタテュルクについて言及する一方で、演説をアタテュルクの言葉である「国内に平和を、世界に平和を」というトルコ語で締めくくった。
トルコ大国民議会総会で演説を行ったウルフ大統領は、ドイツがイスラエルに対しても特別な責任を負っていると述べた。
「ドイツ人にとって、イスラエルの生存権とその安全は、どんな形であれ議論できうるものではない」と述べたウルフ大統領は、しかし、長期的視点でイスラエルの安全のためにも、民主的で存続しうるパレスチナ国家が必要であると述べた。ウルフ大統領は「すなわち平和の中で、イスラエルと共存する国家です」と語った。
このため二国間レベルで、またEUレベルで、パレスチナ暫定自治政府のマフムード・アッバース大統領とセラーム・フェイヤード首相を、国家的組織作りにおいて支援すると表明したウルフ大統領は、「こうした和平会議において、トルコには重要な役割があります。何故ならば、(トルコは)中東地域においてとても重要であり、かつ大変多くの尊敬を集めているからです。交渉が成功するために、中東では当事者双方が自身を超えねばなりません。ドイツ人もトルコ人もこの問題においては、建設的な貢献をしなければなりません」と述べた。また、ヴルフ大統領は以下のように続けた。「あなた方(トルコ)も、様々な脅威と直面しています。イランが核武装するという問題では、あなた方も影響を蒙っています。イランが平和的な目的で核開発をしているのかどうかについて、ヨーロッパは疑いを持っています。中東において核競争が始まることを我々は望んでいません。我々は、E3(イギリス・フランス・ドイツ)プラス3(アメリカ・ロシア・中国)グループ内のヨーロッパの友好国と、外交的解決のために努力しています。同時にイランが行動する必要があると私たちは考えます。国連の1929回に及ぶ決議は、適切にイランが国際社会の諸要求を果たさない場合、さらなる制裁が下されることを念頭に置いています。また、国際社会はイランに今も、この提案をしているところです」と述べた。
■ ドイツのトルコ人
ウルフ大統領は、演説の中で、ドイツで生活しているトルコ人と、トルコ系の人々のことを話したかったと語り、ドイツで生活しているトルコ人とトルコ系ドイツ人は、ドイツの一部であると述べた。
1960年代において、その当時外国人労働者として来た者達が、ドイツの経済発展に貢献したと述べるウルフ大統領は、(トルコから来た労働者が)一人ひとり最も過酷な環境で働きながら、ドイツの経済発展へ寄与したと語った。「彼らには本当に感謝します」と述べるウルフ大統領は、また以下のように述べた。
「今日まで多くのトルコ人が、ドイツで生きていく決意をしました。その中には大学に入ったもの、起業をした人達、そして仕事を拡げた人たちがいます。彼らのほとんどが、ドイツの市民権を獲得しています。私たちはこのことを奨励していますし、また、大きな喜びとともに歓迎しています。トルコの皆さんの多くには、実際にドイツにご親族がいらっしゃると思います。ドイツで生活しているトルコ人たちの大統領として、みんなが希望を持って、生き生きと生活し、ドイツ社会に溶け込んでくれることを期待しています。
移民の方達は、ドイツを世界にむけてより開かれた国にしてくれました。
多様性の中で私たちは共生し、皆のために同時に大きな困難や、打ち勝つ必要がある諸問題にも共に取り組んでいます。
ここで諸問題を挙げておく必要があります。移民たちの中で、一部の人たちは、国家の支援を受け続けています。犯罪率は高く、男尊の傾向や子弟に教育を与えない傾向があることも私達は知っています。しかしこれは、単に、特定の移民グループに限った話ではありません。この問題を検討し、互いに明確に、そして丁寧に対話を実施しながら、首尾良く融合へと至ることが出来ます。文化的なアイデンティティや所属を放棄したうえで、ということではありません。重要なことは、共に生きているためのルールや、その社会的規則を尊重することで、そしてそれらを遵守することであります。
これらのことは、ドイツ憲法に明記されており、ドイツ憲法において示されている価値であります。(ドイツは)基本的人権、表現の自由、男女の平等が守られ、そして宗教や世界観において中立的な国家であります。人々がドイツ語を学びながらドイツ社会に融合するためには、ドイツの生活習慣も受け入れる必要があります。とりわけ、ギュル大統領閣下、エルドアン首相とバウシュ国務相(ヨーロッパ担当大臣)が、先週、ドイツで生活しているトルコ人達の融合に向けて声明を出してくれたことを、大きな喜びとともに私たちは歓迎しています。
ドイツにおけるムスリムの宗教指導者達やドイツ語を話すイマーム達は、融合が成功するために、今後、より大きな役割を果たしてくれるでしょう。私たちは、ともに原理主義的な流れに反対していく必要があります。トルコがこれを受け入れないように、ドイツも宗教的原理主義勢力が伸長するのを受け入れることはできません。」
■トルコはヨーロッパにとって財産である
ドイツと同様に、トルコにおいてもここ数年重要な改革が実現したとするウルフ大統領は、トルコ大国民議会で重要な諸決定が採択されたこと、そしてこの枠内において、法律と組織の改革を目指し進んでいると述べた。
特に、最近行われた憲法改正を「極めて注意深く見守っていた」と明らかにしたウルフ大統領は、「トルコは、この改革を実現したことによって、EUの諸基準に少なからず近づいてきました。こうした方向性であなた方が進んでいけるよう、私はあなた方を支援し、また応援していきたいと思います」と述べた。
トルコは大きなチャンスであると述べるウルフ大統領は、「トルコは、イスラムと民主主義、イスラムと法治国家、そしてイスラムと多元主義が、決して相反するものではないということを示すことが出来る国です。トルコは、イスラムを現代国家という中でうまく融合させています。トルコは、西洋にも東洋にも目を向けています。中東及び近東とも、トルコは何世紀にもわたって経済的にそして文化的な関係を保持してきました。西洋とつながっているトルコ、東洋において活動的で安定に向けた善隣外交を行ってきたトルコ、そして東洋と西洋との間の架け橋となっているトルコは、ヨーロッパにとって財産であります」と述べた。
ウルフ大統領は、ドイツがトルコのEU加盟を特に支持してと述べ、さらに演説を続けた。「トルコのEU加盟をとりわけ支持しています。このことは、偉大なるムスタファ・ケマル・アタテュルクによっても明らかにされていたことです。私達は、トルコのEU加盟交渉が、公明正大に続けられると信じていますし、また同様にトルコにも自らの責任を果たすことを期待しています。
両国はそれぞれ、長年欧州評議会のメンバーであります。欧州評議会の理念は、人権、民主主義、法治国家であり、欧州人権条約に書かれた理念でもあります。両国はこれらの理念に合意しています。この諸理念の中には、宗教的マイノリティーと多文化主義の理念も含まれていることを私たちは知っています。ドイツで生活しているムスリムは、自身の宗教的実践を気兼ねなく自由に行うことができます。ドイツにおいてモスクの数が増加していることが、その証拠です。同様にイスラム諸国で暮らしているキリスト教徒も、自身の宗教を安心して実践する権利があると私たちは信じています。キリスト教の神学者らが教育を受け、教会が建設される必要があると私たちは信じています。両国において、また世界中の国々において、本来人々は宗教に関係なく同じ権利と機会を享受できうるべきだと私たちは信じています。トルコにおいてキリスト教の長い伝統があることを私たちは知っています。キリスト教も疑問の余地無く、トルコの一部なのです」と述べた。
■ アタテュルクの言葉によって演説を締めくくった
ウルフ大統領は、今週木曜日にタルススでの宗教儀式に参加する喜びを言葉に表した。
キリスト教徒であるウルフ大統領は、「トルコにおいて、多くの教会が建設されること、そしてこれらの教会で典礼儀式が行われることを支持する者達の数も増えていることを、わたしはうれしく思っています。こうした流れが支持されることが必要だと思っています。何故なら、ヨーロッパの価値あるコミュニティとしての共通理解において、信仰の自由はとても重要であるからです。異なった宗教が、平和の中で共存していくことが、この世界の21世紀における最も大きな責務であると、私たちは考えています。一見壮大なこの責務が、良心と尊敬によって、考えているよりも短い期間の内に、解決できるであろうと私は信じています」と述べた。
ドイツとトルコが共にとても大きな成功を得たと述べたウルフ大統領は、また個人として、トルコ・ドイツ友好関係をますます重視したいと語った。ウルフ大統領は、「力強い経済、博愛精神に満ちた、そして21世紀において平和が行き渡る世界のために、ともに努力しましょう」と述べた。
ウルフ大統領は、アタテュルクの「国内に平和を、世界に平和を」という言葉をトルコ語で話し、演説を締めくくった。
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( 翻訳者:濱田裕樹 )
( 記事ID:20442 )