マカーレム=シーラーズィー、逸脱した宗教集団の広がりに警告「若者の信仰心を動揺させることが目的」
2010年11月01日付 Jam-e Jam 紙
昨日、シーア派最高権威の一人であるアーヤトッラー・マカーレム=シーラーズィーは、新興宗教集団の活動やニセの神秘主義思想が広がりを見せていることに対して警告を発し、「こうした集団の結成目的は、若者たちの信仰心を揺るがし、イスラーム革命の屋台骨を空洞化させることにある」と強調した。
このシーア派最高権威は、昨日の演説の中で、ワッハーブ派などの宗教集団の名を挙げ、反イスラーム的・反シーア主義的で悪魔的な新興宗教集団が次々と生まれていることに言及し、以下のように述べた。「宗教に対する人々の関心は根絶不可能だということを、彼らも分かっている。そうであるからこそ、彼らは人工宗教を使って、真の宗教を打ち砕こうとしているのだ」。
アーヤトッラー・マカーレム=シーラーズィーによると、こうした宗教集団の創始者たちは、「宗教をもって宗教を制す」べきであると考えており、従って、新興宗教集団が次々と生まれていることは、特に驚くべきことではないという。
アーヤトッラー・マカーレム=シーラーズィーのこうした警告が行われた背景には、ここ数ヶ月、数年で、このような宗教集団への人々の関心の寄せ方に、これまでとは異なった変化が現れてきていることが挙げられる。一昔前であれば、このような思想潮流に引き付けられる人の多くは、騙されやすい単純な人か、ほとんど教育のない人であった。しかし現在、これらの思想潮流は人々をひきつけるにあたり、活動範囲を広範なものにしている。様々な階層、特に大学生や大学教授、各種専門家らまでも、自らの虜にしているのだ。
新たな分派作りは、以前であれば宗教(ディーン=一神教)の枠組みのなかでの「宗派作り」として行われてきた〔※訳註:例えばワッハーブ派やバハーイー教のことを指す〕。しかし現在では、疑似精神的(スピリチュアル)な流派が、人工宗教とは異なる枠組みのなかで、自らの存在を提示している〔※訳註:例えばヨガやインドの神秘家オショウ、ザ・シークレットなど、スピリチュアルなものへの関心の拡大を指す〕。従って、逸脱した神秘主義思想潮流の発生、ウソを喧伝する者たちの登場、あるいは新興宗教集団の出現を、過去のそれとまったく同じものとしてみなすことはできないのである。
他方、こうした宗教集団の影響力も日を追って増大しており、彼らが宗教(ディーン)への人々の信仰心にダメージを与え、社会的無規律を広める力も増している。そして政治、治安、文化、社会の各分野におけるその有害な影響も、過去のそれとは比べものにならないほどになっているのである。
今日イスラームは、反帝国主義的な色彩を帯びている
スピリチュアルな新興宗教集団に関して重要なのは、それらの背後に国外の勢力が潜んでいることである。例えば、こうした宗教集団の多くで、〔フリーメイソン的な〕階級制度が特別な意味を持って保持されており、〔集団に入会した〕人々は一定の位階を通過すると海外に派遣され、海外にいる集団の指導者を通じてより高い位階へと到達する、という仕組みが存在する。
こうしたことから、多くの専門家たちは、「ソフトな戦争」あるいは「ソフトな転覆」はこうした文脈のなかで説明・解釈することが可能だとしている。そして〔…〕イギリスやアメリカなどの国々は、人々の本質的な信仰心に対して、逸脱した思想を植えつけるノウハウを熟知しているのである。イランのバハーイー派や、サウジアラビアのワッハーブ派は、イギリスが作り、仕上げたものであり、この主張のひとつの証左となっている。〔…〕
アーヤトッラー・マカーレム=シーラーズィーは昨日の演説の中で、〔…〕こうした宗教集団が外国に根をもつものであることを指摘している。ISNA(イラン学生通信)によると、同師は人を惑わすワッハーブ派なる集団が誕生した経緯について触れ、以下のように述べた。「人を惑わすワッハーブ派なる集団の歴史をみてみなさい。どのような人々がそれを支持し、その本部はどこにあるのか。イギリスのもとで育まれ、アメリカの懐のなかで生き長らえているではないか。彼らをたたいてみれば、アメリカ議会の声が返ってくるのである」。
アーヤトッラー・マカーレム=シーラーズィーはさらに、つぎのような見方を示す。「かつて宗教は、ただ宗教的な側面しかもっておらず、宗教に反対する者も、その分限られていた。しかし我々の時代になると、宗教、つまりイスラーム、特にシーア派は世界を食い物にする者たちや世界の政治関係者たちを悩ます存在となった。そのため彼らは、〔イスラームと〕戦うために戦場にやってきたというわけだ」。
同師は、今日様々なインターネットサイトや衛星放送局が、イスラームやシーア派との戦いに本腰を入れ始めていると指摘し、その理由として、今やイスラームは、反帝国主義的な色彩を自らに帯びているためであるとの見解を示した。
敵どもは情熱と信仰を我々から奪いとろうとしている
〔…〕
同師はまた、敵は低俗インターネットサイトなどを使い、〔イスラームに対する〕懐疑を〔人々の心の中に〕生じさせ、麻薬を広め、新興宗教集団を立ち上げるなどして、こうした〔宗教的な〕情熱や信仰心を我々から奪いとろうと迫ってきていると指摘し、さらに以下のように述べた。「もし〔宗教的情熱や信仰という〕力が我々から奪われたなら、敵による〔イランへの〕軍事攻撃は容易なものとなるだろう。だからこそ今日、敵は我々に攻撃を仕掛けてこないのだ。攻撃を仕掛けた場合には、命を惜しまぬバスィージや非バスィージの義人たちが戦場に馳せ参じることを、彼らも分かっているからだ」。
アーヤトッラー・マカーレム=シーラーズィーはその上で、「我が国の若者たちは、イラクでの卑劣な戦争で精神疾患にかかり、恐怖におびえているようなアメリカの兵士とは違う。彼らはいつも、喜び勇んでイスラームを〔敵から〕防衛しているからだ。信仰という力がイランの若者に存在しつづける限り、我々は〔敵との戦いにおいて〕勝利者でありつづけ、また刮目すべき国として、世界にその名を轟かせるだろう」と指摘した。
(本記事は
Asahi中東マガジンでも紹介されています。)
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( 翻訳者:水谷陣也 )
( 記事ID:20609 )