【2010EU加盟交渉トルコ進捗レポート発表(1)より、続く】
■文民による軍の監視
欧州委員会が作成したレポートでは、南東部で1990年代に起こった犯人不明の殺人事件で(逮捕され、)裁判を受けているジェマル・テミゾズ大佐の裁判が順調に進むことが、「(軍籍をもつ)被告の刑事免責に対する闘争において極めて重要である」と強調された。
同レポートには、「トルコ国軍(TSK)が、管轄以外の政治問題に対し、直接的または間接的に影響力を行使するケースは少なくなった。しかし、参謀総長は、継続中の裁判や取調べに関してありとあらゆる機会を利用してはコメントを発表した。これらの発言に利害関係をもつ国民やNGOは、たびたび告発を行った。しかし司法はこれらに関して十分なフォローを行わなかった」と記載された。
欧州委員会レポートでは、軍に対する文民の監視に関し、9月12日の憲法改正によって高等軍事評議会(YAŞ)で免職された軍人に対する復権要求の権利が認められ、また、1980年クーデター実行者を裁く上での障害の撤廃といった進展が見られたことが記載されたが、その一方で「軍に対し、政治介入へ選択の余地を残した」トルコ国軍運営法がいまだに改正されないことへの批判が見られた。
報告書では、トルコ国軍が報道機関に対し、「選択的認定」をしているとの批判も記載された。
進捗レポートでは、「軍への文民による監視について進展が見られたこと、軍事裁判の管轄範囲が制限されたこと、高等軍事評議会の決定が一般裁判所の監督下に置かれるようになったこと、さらに軍の高官が一般裁判所で裁かれるように修正されたこと」を前向きな進展の一部と見なした一方、「軍の高官が、司法関係の事柄をはじめとする管轄外の事案について声明を発表したこと、また、トルコ大国民議会(TBMM)の予算外の軍事費の監査について改善が見られないこと」は批判の的になった。
■表現と報道の自由
EUレポートでは、メディアや世論がクルド問題、軍の役割、マイノリティーの権利やアルメニア問題といった、過去には触れにくかった話題をより自由闊達に議論できるようになったことが称賛された一方、エルゲネコン裁判に関する報道を行った報道陣に対して頻繁に裁判が起こされたことは批判の対象とされた。
同レポートではこれに関連して、「エルゲネコン裁判に関する報道を行った新聞記者に対して多くの裁判が起こされたことを懸念する。新聞記者は、捜査の秘匿に違反したことで訴えを起こされ、取調べや裁判を受けている。この状況は自己検閲につながりかねない」と記載され、エルゲネコンに関する報道を行った複数の新聞記者に対してトルコ刑法第285条や第288条に基づいて4091件の裁判が起こされたことに言及された。
同レポートではトルコがインターネットサイトに対し、しばしば均衡を欠いたアクセス禁止を適応していると批判され、報道の自由に関して次のように記載された。
「報道への政治的攻撃に関する懸念は引き続きある。政権批判を行ったドアン・メディアグループに対して2009年に課せられた追徴課税に関する司法プロセスは継続中だ。この裁判の後、メディアは自己検閲を行うようになった。任務に関連した報道が原因で、新聞記者に対し、軍高官を含む高位の官僚や政治家が多くの裁判を起こした。概してトルコでは自由闊達な議論が行われ、より報道の自由は拡大した。しかしながら、新聞記者に対する多くの裁判や、不当な影響力の行使により、実際には報道の自由を損なわれている。」
■反ユダヤ主義への批判
進捗レポートでは、トルコのマイノリティーへの歩み寄りが限定的だとされ、寛容や参加が促進されるために新たな努力をするよう求めた。
同レポートには、「特にイスラーム主義系や極右系メディアにおける差別発言により、反ユダヤ主義が依然問題になっている」と記載された。
同レポートでは、トルコにおけるギリシャ系マイノリティーが、教育を受ける権利や財産権に関する問題と直面し続けているとされた。また、政府の「ロマの人々への解決策」を称賛する一方で、包括的なプランがないためにトルコにおけるロマの人々は依然として社会からの排除、教育を受ける権利の阻害、医療サービスにおける差別、雇用市場からの排除や身分証明の取得困難に直面していると記載された。
同レポートでは、トルコではクルド語のテレビやラジオの放送が一層自由化され、24時間のアラビア語テレビ放送も開始されたが、政治、教育、公共サービスの場でのトルコ語以外の言語の使用制限が続いているとの見解が記載された。
【2010EU加盟交渉トルコ進捗レポート発表(3)へ続く】
(本記事は
Asahi中東マガジンでも紹介されています。)
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( 翻訳者:三上真人 )
( 記事ID:20637 )