犠牲祭(クルバン・バイラム)入門
2010年11月15日付 Zaman 紙

いよいよ明日から犠牲祭だ。何日も前から行われてきた準備は整い、明日、何十億人ものムスリムがアッラーの御心に適うよう犠牲を捧げるだろう。

ムスリムは、「アッラーに近づく」という意味を持つクルバン(犠牲)により自己の欲から解放され、富への執念を退ける。ただアッラーの満足や喜びのために、アッラーの命に従って、犠牲として動物を屠る。「動物たちの肉も血もアッラーには決して届かない」ということを、しかしその根底にあるアッラーへの篤信のみが神へと届くということを知っている。クルバンとは、自己犠牲であり、肉体を進んで差し出すことである。イスマイルによると、「服従」の別名でもある。

精神的に健常で、成人し、宗教的観点から裕福といえるほどの財産を持ち、独立したすべてのムスリムには、犠牲として動物を捧げる義務がある。犠牲はバイラムの一日目から捧げられ、最終日の午後の礼拝まで続く。屠られた動物の肉は全て貧しい人々に施しとして配らなければならないが、その年の経済状況が肉を買えないほど悪い場合は、自分や家族のために取っておくことが許されている。しかしその場合、肉を3つに分け、そのうちの1つを貧しい人々に施しとして配り、もう1つを親戚や知人や近所の人々にすすめ、残りの1つを自分の家族と食べるというようにするべきである。

動物を自分で屠ることができるのと同様に、委託して他の人に屠ってもらうこともできる。他の人に委託する場合は、「アッラーの御心に適うようわたしの犠牲用動物の屠畜をあなたに委任しました」と言い、心から望む必要がある。犠牲祭ではタクビール(「アッラーは偉大なり」と言うこと)も忘れてはならない。犠牲祭が始まる前日の礼拝から犠牲祭4日目の2度目の礼拝まで、23回の義務の礼拝の後、毎回タクビールを唱えなければならない。

■解体場がそなえるべき条件

・動物の解体がなされる場所は、屋根のある空間でなければならない。
・簡単に撤去や消毒ができる建築(コンクリート、タイル、ステンレスなど)でなければならない。
・解体場には血と水が溜まらないように排水口つきの水路を設けなくてはならない。
・照明と換気を怠ってはならない。
・飲料水と作業用の水を十分に用意しなければならない。
・使用される器具の清掃と消毒のために必要なものを十分に用意しなければならない。
・獣医と宗教的義務に精通したスタッフがいなければならない。
・屠る者は熟練者でなければならない。
・動物が互いを見ないように遮る物を用意しなければならない。
・解体後、ゴミや残物は衛生上適切に、周辺に健康被害をもたらさないように、集積、隔離、処分されなければならない。

■犠牲用動物の条件

・犠牲用となる動物は、ヒツジ、ヤギ、ウシ、水牛、ラクダである。
・片目、もしくは両目を失明している動物は犠牲とはならない。
・角(つの)、もしくは耳の3分の1以上が欠けていてはならない。
・尾の3分の1以上が欠けているか重い病気に冒されていてはならない。
・解体場に歩いていける程度、健康でなくてはならない。
・歯の半分以上、もしくは舌の大部分が欠けていてはならない。
・ヒツジとヤギでは片方、ウシでは両方の乳が涸れていてはならない。

■犠牲用ウシの横たえ方

・約8メートルの太いロープを用い、まずツノを固く結び首に回す。
 すぐさまロープを動物の前足の下から背中の方へ巻きつけて結ぶ。
・ロープを左側から後ろへ引っ張りながらお腹と後ろ足の間から背中の方へ巻きつける。
・2人が背中から伸びているロープで動物を後ろへ引っ張り、1人が前に出て動物の頭を掴む。
・動物の顔をメッカの方向へ向け、前足と後ろ足を結びつける。屠った後、体内の血をきれいに抜くために足1本(左後ろ足が好ま
 しい)は自由にする。ヒツジやヤギの場合、あらかじめ足1本を結ばずにおくことが可能。

■祈りの言葉

動物を屠るために唱えられる祈りの言葉について:
屠る前に「アッラーよ、これはあなたからあなたへのものです。わたしの礼拝と奉仕、わたしの生と死は、万有の主、アッラーのためであります。アッラーよ、わたしから(この捧げ物を)受け入れて下さい。アーメン」と唱える。解体が始まったら周りの人々とともに、「アッラーは偉大なり、アッラーは偉大なり、アッラーの他に神はなし。アッラーは偉大なり、そしてアッラーに称賛あれ」とタクビールを唱える。

■代理人

犠牲用動物の持ち主が屠り方を知らない場合は、屠ることのできる他の人に委任して屠ってもらうことができる。このためには「アッラーの御心に適うようわたしの犠牲用動物の屠畜をあなたに委任しました」と言い、心からそれを望む必要がある。

■方向

犠牲用動物の頭と足はメッカの方向へ向けられなくてはならない。屠る人もメッカの方向に向くのがスンナ(慣行)である。

■屠畜

動物を屠る者は、「神の名において。アッラーは偉大なり」と言った後、すぐさま動物の首の3つの血管を一気に切る。流れてくる血を受け止めるため、深さ・広さともに50cmの穴を掘っておかなくてはならない。作業が終わったらその穴は塞ぐこと。

■牛肉から何を作れる?

首の肉:挽肉、煮込み、炒め料理
ロース:ステーキ、ローストビーフ
サーロイン:ステーキ、シャトーブリアン、炒め煮、ロティ、串焼き
ランプ:ロティ、ローストビーフ、煮込み、ケバブ、ステーキ
バラ肉:挽肉、煮込み
モモ肉:ロースト、ソースがけ、ケバブ、煮込み
スネ肉:オッソ・ブーコ、トマト煮込み、挽肉

■ヒツジ肉から何を作れる?

肩ロース:ラムシチュー、挽肉、茹でる、煮込み
肩肉:サルマ、煮込み、挽肉、ロティ、オーブン焼き、ケバブ
リブ:ラムチョップ
ロース:ラムシチュー、ロティなど
モモ肉:串焼き、ケバブ、煮込み、ロティ
バラ肉:挽肉、煮込み

■肉を分ける際、貧しい人々のことを忘れないで

1)貧しい人へ 2)親戚、近所の人へ 3)家族へ
預言者ムハンマドは、犠牲として屠られた動物の肉を3つに分け、そのうちの一部を動物を屠ることのできない貧しい人々に配り、もう一部を親戚や知人や近所の人々に分け、残りの一部を自家用とすることを推奨した。しかし家庭の状況によっては肉の全てを自家用にすることができる。

■肉をどうやって保存する?

解体後、肉はまず清潔な容器に入れ、日光の当たらない場所で、室温を14℃以下に保ち、空気に触れさせないまま寝かせなければならない。その後、冷蔵庫(の冷凍室)もしくは冷凍庫に入れる。凍った肉を解凍したのち、再び冷蔵庫に入れるのは極めて好ましくない。このため、解凍した肉は再び凍らせずに、すぐに調理し消費しなければならない。そうしないと、すぐさま食中毒を引き起こす原因となってしまうだろう。したがって、肉は調理用の大きさに切り分け、ビニール袋に入れて冷蔵庫で保存するようつとめるべきだ。肉をカヴルマ(ソテー)やスジュク(トルコ風ソーセージ)に加工し保存することも可能である。

(本記事はAsahi中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:20695 )