注目のNATOリスボン会議を前に、ミサイル配備でかけひき
2010年11月18日付 Yeni Safak 紙
リスボン会議を前に、配備されるミサイル防衛システムの指揮権を巡る駆け引きが続いている。エルドアン首相は「トルコに配備されるのであれば、指揮権は私たちに与えられるべきである」と主張する一方、アメリカ合衆国の北大西洋機構(NATO)常任理事であるダールデル大使は、「まず基本的な部分を決めていきましょう。指揮権の話はその後です」と返答した。イルテル・テュルメン元外相はこれらの議論について、会議では基本的な方針だけが決定されることになるだろうとコメントした。
ミサイル防衛構想に関する最終的な決定が下される可能性に関し、明日(19日)ポルトガルの首都リスボンで開かれる首脳会議に注目が集まるなか、ミサイル防衛システムの指揮権を巡る問題については未だ結論に至っていない。エルドアン首相の「トルコ全域が防衛システムの対象とされるのであれば、指揮権はトルコに与えられるべき」との発言を受け、アメリカからは「まず基本的な枠組みを決めよう。指揮権をどうするかは、その後、決まればいい」と曖昧な返答がなされた。アメリカ合衆国のNATO常任理事であるイヴォ・ダールデル氏は、「指揮と管理を含め、防衛システムに関する詳細は全て、今後話し合われることになります」と語った。NATOの枠組みの中で構築される予定の欧州ミサイル防衛システムに関し、まず基本的な部分を決定していく必要があるとするダールデル氏は、「NATOが資金を提供します。NATOが指揮権の一部を握るような、指揮と管理のシステムが形成されることを望んでいる」と述べた。
■基本方針が決定される見込み
一方、イルテル・テュルメン元外相はトルコの要望に関し、(防衛システムが対象とする)具体的な国名が挙げられることはない旨が発表済みである点に触れ、「NATOはこのような防衛システムを構築するのかしないのか、ということをまず決定することになるでしょう。フランスはいくつかの懸念材料をあげています。(今回の会議では)基本的な枠組みが決定されるものと予想しています。トルコが拒否権を行使することはないでしょう」と語った。また、イランをはじめとする当該地域の諸国は、この問題に口を挟むことはできないとし、「ヨーロッパ諸国以外の他の国々もミサイルを保有しています。NATOとの間で問題を起こすことは正しい行動とは言えません。トルコは地理的に「きな臭い」場所に位置しています。この種の防衛システムは、起こりうる危険の可能性に対するものなのです」と説明した。
■決定には時期尚早
21世紀トルコ研究所アメリカ研究部門のシャンル・ハバドゥル・コチ主任は、「この問題は、リスボンでNATO会議があるからといって、早急に適否が決定されるようはものではありません。トルコの最近の外交政策に鑑みれば、トルコが簡単にミサイル防衛システムに賛成することはないでしょう。この問題が、『3月1日決議』(訳注:湾岸戦争の際、トルコ議会で米国のトルコ国内の空軍基地の使用を否決する決議がなされ、対米関係が悪化する原因となった)のようになることは阻止しなければなりません」と言う。11月19日―20日に開かれる首脳会議では、アブドゥッラー・ギュル大統領がトルコ代表団を率いる。
■「ミサイル防衛システム」の必要性
アルマアン・クルオール退役少将は、ほとんど全てのトルコの周辺諸国はミサイルを保有しているいい、以下のように語った。「この防衛システムはイランを念頭に構想されています。基本的にアメリカの計画です。ロシアはかつてこの計画に強く抗議し、結果としてロシアに対するものではないことを証明するため、NATO主導の計画に変更されました。アメリカの第一の目的は自国をイランのミサイルから守ることです。NATOのメンバーであるトルコは、この計画に『ノー』ということはできません。加えて、周辺をミサイルに囲まれているにもかかわらず、トルコにはミサイル防衛システムがありません。そもそも、トルコはミサイル防衛システムを直ちに必要としているのです。防衛産業委員会がこの件について次のような策を打ち出しました。トルコは、自国のミサイル防衛システムを、これをNATOの計画に組み込む形で構築することができる。そうすることでトルコは、防衛システム構築の資金の一部をNATOから支弁してもらうことができるのです。」
■「トルコは単独で行動してはいけない」
チャンカヤ大学国際関係学科で教鞭をとるラマザン・ギョズデン教授は、以下のように話す。「このシステムの構築を望んでいるのは、オバマ大統領ではなく、アメリカの軍事ロビーです。トルコの国益は問題とされていません。もしイスラエルが、イランの脅威から自国を守りたいというのであれば、防衛システムの構築はイスラエルに任せれば良いのです。しかしトルコは単独で行動すべきではありません。欧州の強い世論を刺激しかねません。」
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( 翻訳者:西山愛実 )
( 記事ID:20729 )