トルコEU加盟への道、2011年の展望
2010年12月30日付 Zaman 紙


トルコの欧州連合(EU)加盟交渉は現在、危機的な時期を迎えている。欧州理事会の一会期の間に交渉が行われなかったのは初めてのことである。トルコの加盟に対し、承認か交渉継続のどちらかが決断されるときが近づいている。2011年は、欧州経済共同体とアンカラ条約を締結した1963年、加盟申請を行った1987年、候補国となった1999年、そして交渉が開始した2005年のような、EU加盟の歴史的転換点の一つとなることが予測される。

46年にわたる紆余曲折をへて、大きな希望とともに開始されたトルコのEU加盟交渉は、いま座礁に乗りあげている。交渉が開始した2005年10月3日から現在までで初めて、欧州理事会の一議長任期の間に、一つも新しい議題での交渉が開始されないという事態に直面したのである。35ある議題のうち13のみが進行し、一つのみが完了している加盟交渉は、キプロス問題を早急に解決できなければ完全に暗礁にのりあがてしまう。あるいは、アフメト・ダヴトオール外相の言い方を借りれば、EUは、戦略的な決定をして次の2つのうちの1つを選択する。すなわち、キプロスを要因とした交渉の停滞に目をつぶるか、もしくはキプロス共和国に圧力をかけることで解決を試みるか、のどちらかである。

2011年は、トルコが欧州経済連合に加盟申請をした1959年、アンカラ条約が締結された1963年、加盟申請を行った1987年、候補国に挙げられた1999年、交渉が始まった2005年のような、歴史的な転換点の一つとなる可能性が高いことが予測される。

キプロス問題の進展、ドイツ・フランス両国によるトルコへの態度、EUの深刻な経済停滞、ヨーロッパ大陸におけるイスラムフォビア・人種差別主義の急速な拡大といった状況を考慮すると、2011年のトルコ・EU関係に希望的観測をもつことは困難である。トルコに対して有利とみられる観測は、加盟条件である経済発展と地域の安定への寄与が進んでいることである。

キプロス島問題が未解決のまま、キプロス共和国をキプロス全体の代表としてEUに受け入れたのは誤りだったということは、全てのEU政府関係者が、非公式には認めていることである。少数の誠実な人々はマイクの前でもそれを認めてはいるが、キプロス共和国が加盟国となった 2004年5月1日から今日まで、状況は何も変わっていない。同国は、加盟国という立場を可能な限り利用してトルコの加盟を妨害し、最大限の利益を得るために交渉を利用した。結果として、EUが約束した直接通商規定が「立ち消え」状態になる一方、33の議題のうちの14がキプロス問題のためにストップした状態にある。また、交渉が開始された議題も、問題が解決しない限り終了することはない。

国連事務総長バン・ギムンは、両国の代表に、1月末にジュネーヴへ具体的な案件をもって訪れるよう促した。「キプロス問題を解決するために、私はこの歳で大統領になった」と語る、EU内で唯一の共産主義者、ディミトリス・フリストフィアス(キプロス)大統領であるが、問題の解決に際して思い切った行動はとれないでいる。彼のこのような態度と、ギリシャ人の領土保持・拡大主義、EUは最後まで自分たちの味方をしてくれるとの信念は、交渉の動きに否定的な形で影響を与えている。短期的にトルコがもちうる希望は、バン・ギムン事務総長による「政略的外交」にかかっている。アメリカは未だキプロスに対する特別代表を任じることができない一方、フランスとドイツ2国はトルコへ対する否定的な態度を変化させることはなく、さらには、キプロス共和国では2011年5月に議会が、トルコでは6月に総選挙が予定されている状況の中、EU本部では、キプロス問題解決を口にする者は、片手で数えられるほどである。

■ ドイツとフランスは依然、トルコの加盟に反対

EUの指導的立場にある2つの国家ドイツとフランスの、トルコに対する敵対感情は未だ緩和されてはいない。ドイツ首相アンゲラ・メルケルは裏ではトルコに関し、フランス大統領ニコラ・サルコジと全く同じ意見であること、つまり、ヨーロッパにはトルコの居場所はないと漏らしている。2012年に大統領選挙が行われるフランスで、イスラムフォビアや人種差別主義が高揚していることを考慮に入れると、メルケル、サルコジの両者が各々の地位を保持するかぎりトルコの交渉過程は容易になるとは思えない。サルコジが2012年の選挙で再選されれば、キプロス問題が解決したとしても、トルコの前途にはなお一層困難な障壁が立ち現れるだろう。

2011年にトルコが加盟交渉を早め、もしくはその交渉速度を維持できるかについては、肯定的な見通しを行うことは困難である一方、「トルコはEUに加盟すべき」と主張するEU加盟国が存在することにも触れなければならない。加盟を支持する国は、トルコが、若年層人口が多く、ブリックス(ブラジル、ロシア、インド、中国)に比するほどの経済発展を遂げ、新外交を展開し、地域で安定を生み出す国となっている点を指摘している。(加盟を支持する)イギリス、イタリア、スウェーデン、フィンランドの外相たちは、12月10日付ニューヨークタイムズ紙にも掲載された記事の中で、最も注目に値する論拠としてトルコが2050年にヨーロッパ第2の経済大国になるという経済協力開発機構(OECD)の調査結果を挙げている。加えて、4カ国外相は、トルコがエネルギー、通商、安全面で「非常に期待される」段階にあると認めた、EUに対し「加盟の約束を守るよう」促した。

■ 加盟交渉の行方はキプロス次第

現在の所、交渉の開始が予定される議題は3つに減っている。3つの議題とは、「(公正な)競争」、「社会政策・雇用」、「公共部門の公開入札」である。1月1日に欧州理事会議長国となるハンガリーは、この1,2ケ月の間に「競争」を交渉議題とすることが予想される。後には「公開入札」と「社会政策・雇用」のような、最も困難な要件が残る。「公開入札」に関する交渉は全ての加盟候補国が最後に行いたがる、つまり、加盟過程が終盤にさしかかり、加盟日程が決まりかけた時期にもっていく議題である。「社会政策・雇用」に関しては、トルコでは労使双方から激しい反対がおこっている。この議題ですぐに交渉に取りかかることは不可能にみえる。2011年にキプロス問題が進展しなければ、交渉は停滞することは、確実だろう。キプロス問題の解決は、アメリカや、EUの主要国であるフランスやドイツが解決に乗り出してくるかどうかにかかっている。しかし、それらの諸国家は、他に優先させる事項を有している。とくに、フランスとドイツはキプロス問題を口実にしているだけなのである。

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( 翻訳者:西山愛実 )
( 記事ID:21091 )