■ 原油価格の上昇とエジプトでの事態
2011年02月02日付『アル=ハヤート』紙(イギリス)HP意見・論考面
【寄稿:ランダ・タキッディーン】
エジプトでの事態を受けてここ数日で原油価格が1バレルあたりおよそ約100ドルまで上昇したことは、石油市場の現状からは説明がつかない。石油市場の需給バランスは取れており、OPEC加盟国は最大能力で生産にあたっている。ただしサウジアラビアだけは例外で、常に1日あたり150万~200万バレルの生産力を維持しており、現在400万バレルの余剰生産力があることを同国の石油大臣も確認している。アラブ首長国連邦とクウェイトにも若干の余剰生産力がある。
イラクでさえ最近の3カ月で生産量を増大させている。イラクは油田開発を急ぎ、最近まで量が十分でないとして買い手を待たせていたのが、今では彼らに原油積み出し用タンカーを手配するよう呼びかけるまでに至っている。イラクの石油生産は最近3カ月で1日あたり約20万バレルにまで回復している。
そうではなく、エジプトで起きている事態を受けてスエズ運河が閉鎖されるのではないかとの懸念が価格上昇に大きく影響する要因となっている。それに加えて、サウジアラビアのアリー・アル=ナイーミー石油相が火曜日にジュネーヴで指摘した二つの要因が関係している。その二つの要因とはドル安と、先物市場の投機家や投資家たちが新たな価格帯を見極めようとしていることにある。
実際、先物市場の投機家たちは地政学的な事態への懸念に大きく影響される。石油の運搬経路に関わるとなるとなおさらだ。つまり、スエズ運河が閉鎖されるのではという危惧が投機家たちにとって大きな要因となっているのだ。世界の1日当たり石油需要量8000万バレルのうち300万バレル以上の石油がスエズ運河と、スエズ湾から地中海に向かうSUMEDパイプラインを通っている。これだけの量の石油が毎日エジプトを通過しているわけだ。
とはいえ、スエズ運河はエジプトの軍部の管理下にあるため、閉鎖される可能性は低い。それでも石油業界の関係者たちによると、荷積みや作業チームの交代が事件のせいで遅れ、滞っている。このことが、安いドルと先物原油への投資に向かっている投資家たちの懸念を強めていることは間違いない。さらには、スエズ運河経由の通行が閉鎖されれば、欧米向けの原油輸送はアフリカの喜望峰周りに変更せざるを得なくなり、そうなれば15日も余計に時間がかかるとの懸念もある。だが、エジプト経済の主要財源であるスエズ運河が封鎖される可能性は極めて低い。
(後略)
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( 翻訳者:梶原夏海 )
( 記事ID:21361 )