■ 世界経済復興、産油国に依存
2011年3月20日『アル=ハヤート』紙
【シャルジャ:本紙】
経済の動揺や金融危機を受けて経済活動の勢いが低下する中、世界の金融・経済システムが戦略的生産部門の力に依存している事は、日々の経済動向からも明らかである。「特に石油やガスと言った最重要生産部門を握る国々は、この危機を解決し、その影響を軽減するための介入の最前線に立つことを求められるだろう」との見解はアラブ首長国連邦の石油生産会社「クレセント石油」の週刊報告書によるものだ。同報告書は「一方で石油やガスなどの資源を持たない国々はこの動向により大きな損害を被る側であり続けるだろう」としている。シャルジャに拠点を置く同社は、「エネルギー産業は現在、経済危機や後退的な経済動向の悪影響を負担しているため、より多額の生産収入を得るための資産管理・運用計画を十分に検討した上で実行する事が困難な状態に直面している」との認識を示した。
各経済部門間で生じている成熟度と生産性の格差は、各部門への投資の格差の結果として生じたものだ。報告書の作成者らはこの事実に鑑み、開発の全段階において政府の援助が継続的に必要となると指摘し、「というのも、各生産部門は自らイニシアティブを取り、経済計画上の直接的な援助なしに安定した歩調で前進できるような段階にはまだ到達していないからだ。したがって中・長期的な視野から期待される有益な結果を得る事ができず、むしろ資産への圧力を倍増させてしまう」と述べている。
特に石油・ガス産出国における産業部門は現在から将来に亘って集中的な投資を必要とする部門の筆頭である。石油・ガス産業には成功要素が豊富に存在することに加え、産出国の石油・ガスの生産性向上を目指す上でインプット及びアウトプットの両方の要素の必要性が拡大しているからだ。「クレセント石油」社は石油・ガス産出国に対し、石油資産の運用を包括的に行うよう強く求め、調査・掘削・採掘を始めとして、石油生産・精製技術の開発や石油・ガス産業で必要な機器・設備類の製造など、同産業及びその他の産業の発展を維持し、石油資産をその他の生産への投資に向けるため確保するよう呼びかけた。
■ 中東地域のエネルギー産業
この一週間で中東地域のエネルギー産業における最も顕著な進展といえば、サウジ基礎産業公社(SABIC)が、直接投資やパートナーシップの締結により新たな化学製品プロジェクトに投資する持株会社の創業を宣言したことだ。同社は先月、子会社「キヤーン」を通してアセトンを初めて海外へ輸出し、化学製品輸出の新たな段階に突入している。
サウジ電力公社は、資金調達源の多様化を推進し、世界市場参入のため電力事業分野を開放する試みの一環として、三菱東京UFJ銀行から5000万ドルの借入を行う合意書に署名した。これには年間7~8%に達する電力エネルギー需要の高まりに対応するための投資を援助する狙いもあり、今後数年間のサウジアラビア電力需要を満たすことを保証するための巨大な発電及び送電プロジェクトの実施が欠かせないものとなっている。
アラブ首長国連邦では、「アブダビ未来エネルギー公社(マスダル)」がデンマークの電力会社「DONG Energy」及び英国の電力会社「E.ON UK」との協力を発表し、「ロンドンアレイ(London Array)」プロジェクトの一環としてタービン第一号機の基盤組み立てに取り組むことを決めた。これはイギリスの海岸線沿いに177基のタービンを擁する風力発電所を建設するプロジェクトであり、ドイツの建設会社「ビルフィンガー・ベルガー」がデンマークの洋上風力発電会社「A2SEA」の巨大船「シーワーカー(SEA WORKER)」を用いて重量268トンに及ぶ最初の基盤の供給と組み立てを行った。
アブダビ政府は韓国との戦略的パートナーシップ拡大の一環として、石油やガス、将来的成長エンジンにおける同国との協力に関する了解覚書に署名した。
「アラブ首長国連邦国営石油会社(ENOC)」傘下の「アラブ首長国連邦ガス会社」は、2023年を目途に天然ガス自動車製造工場60棟を建設する計画を明らかにした。同社は将来設立が予定されている工場を建設するため(工場第1号は今年中に建設される)、現在天然ガスの調達に尽力している。またENOCはCO2排出量を70%削減する天然ガス自動車供給のために、天然ガス工場設立プロジェクトを打ち出している。
(後略)
(本記事は
Asahi中東マガジンでも紹介されています。)
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( 翻訳者:川上誠一 )
( 記事ID:21875 )