カッザーフィーはアラブの同情を得られない
2011年03月20日付 al-Quds al-Arabi 紙
■欧米の攻撃開始、カッザーフィーはアラブの同情を得られない
2011年03月20日『クドゥス・アラビー』
【ベイルート】
土曜、アラブ人大多数はリビアに対する欧米の軍事行動を歓迎し、それを世界が抑圧と不正を許容しないことの指標であるとみなしていた。しかし彼らの支持は、アラブ世界に対する外国のさらなる介入への懸念に取って代わりつつある。
カッザーフィー(カダフィ)軍から民間人を守る軍事介入の第一撃では、仏空軍が戦車や装甲車を破壊した。続いて合衆国は、艦上からリビアの標的に対しクルーズミサイルを発射したことを明らかにした。
権力を握ってきた42年間で最大の危機に直面するムアンマル・カッザーフィーは、国内拠点の幾つかを失った後、猛烈な反撃に出て、二つの隣国、エジプトならびにチュニジアの大統領と同じ運命を拒否する意志を示した。
一方、バハレーンならびにイエメン元首も同様の危機に瀕している。抗議運動は湾岸の他の国、次いで強圧的支配に従うシリアにまで及んだ。シリアでは金曜、デモ参加者4名が治安部隊により殺害されている。
サナアでは、アリー・アブドゥッラフマーンが、「[リビアに対する]軍事行動は、独裁の時代は終わったという為政者たちへの強いメッセージだ」と述べた。イエメンで抗議活動をする人々は、32年間にわたるアリー・アブドゥッラー・サーリフ大統領の政権終了を呼びかけている。
イエメン青年運動のムハンマド・アッシャールーキーは、威勢よく言った。
「飛行制限区域を課すのはよい措置だ。……少し遅すぎたし、我々は、アラブ諸国がこの措置を実施してくれればいいと思っていたのだが。」
「だがこの措置は、イエメン情勢にポジティブな影響を与えることになるだろう。抑圧と不正に対しては国際社会が黙っていないということを体制側は理解するだろうから。」
金曜、イエメン首都の抗議活動では、家屋の屋上から狙撃されて42人が死亡した。
シリア南部のダルアー市では、バッシャール・アル=アサド政権に対峙し流血事件が発生したとみられている。そこの学校教員ターミル・アル=ジャワービラは、欧米のリビア介入について、2003年のアメリカによるイラク侵攻にまつわる苦痛を伴う記憶を思い出させると評し、次のように述べた。
「リビアへはアラブ諸国が介入すればいいと思っていた。イラクへの介入を思い出す。あの時は飛行制限も部分的で爆撃は含まれていなかったが。」
土曜、ダルアーでは金曜に殺害された二名の葬儀に約1万が集まった。市内で商店を営むアミーン・アル=ハマーヤダは、外国の手助けは不要として次を述べた。
「我々の要請は、汚職撲滅と自由を許されることだ。我々は、外国の助けがなくとも自分たちでそれを実現できる。」
アラブ圏一帯を通じて敵対心をあおってきたカッザーフィーに同情の声は少ない。サウジアラビア王国では2003年にアブドゥッラー国王暗殺を計画したと糾弾され、レバノンのシーア派からは宗教指導者ムーサー・アッサドルの失踪に責任があるとみなされている。また、90年代にパレスチナ人数千を放逐したことについても非難されている。
ヒズブッラー指導者ハサン・ナスルッラーは、「イスラエルがレバノンとガザに仕掛けた戦争と同じスタイルで」、カッザーフィーがリビア国民を弾圧していると非難した。しかし同時に、何ら行動を起こさず、「占領と直接的帝国主義の時代」をアラブ世界に再度持ち込む機会を欧米勢力に与えたアラブ指導者たちを批判した。
テレビ演説でナスルッラーは、アラブ・ムスリム指導者の多くがその責任を放棄した結果、リビアへの外国介入の扉が開かれてしまった。今後事態がどう推移するかは不明であると述べた。
サウジの評論家ジャマール・ハーシキーは、リビアの人々は自分たちの自由と独裁政権からの脱却のために戦っているのであり、カッザーフィーと対決することは崇高な任務といえると述べた。
サウジは、リビア反体制派を擁護する国際社会の尽力を強く支持している。しかし、隣国バハレーンでは逆の立場をとることとなった。バハレーンではスンナ派のアール・ハリーファ家が、主としてシーア派により組織された抗議活動に直面しており、王家の統治を守護するためリヤドは軍を派遣した。
これについてハーシキーは、「バハレーンの反体制派は宗派的要請をしている。彼らはアール・ハリーファ打倒を主張しており、これには誰だって不安になる」と述べ、バハレーンでイランの影響力が伸びているとしてそれを「1960年のキューバに対するソ連の接近」になぞらえた。
ムバーラク政権放逐後、憲法改正のための国民投票が行われたエジプトでは、カッザーフィーをふくめ国民蜂起に直面する他のアラブ元首たちへの支持の声は聞かれない。
大学生シャーハンダ・アブドゥッラーは、国家元首たちは、可能な限り国民から詐取してきた自分たちの行いをよく承知していると述べた。彼女によれば、今起きていることを残念に思う気持ちは全くないし、[国家元首たちに対しては]もっと重圧をかけてしかるべきだと考えている。
(本記事は
Asahi中東マガジンでも紹介されています。)
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る
( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:21876 )