社説:ムバーラク前大統領一家と取り巻きの不正蓄財問題
2011年03月31日付 al-Quds al-Arabi 紙
■社説:ホスニー・ムバーラク前大統領の資産
2011年03月31日付『クドゥス・アラビー』
エジプトの追放されたホスニー・ムバーラク前大統領とその家族の資産に対して、エジプトでは公的・大衆的なあらゆるレベルでいまだ高い関心が寄せられている。これはメディア上、または密室の中でさえ、触れてはならないタブーの話題の一つだったためだけではない。 食べるにも事欠くエジプトの貧しい人々に驚きをもたらした、その巨額さのためでもある。
軍最高評議会がこの資産を追求し、法的手段を講じて取り返そうと努力していることが、エジプト国民の賛同を得ていることは確かである。中でも昨日[30日]に発表され、中東通信社(MENA)が報じた、ムバーラク前大統領とその時代の高官たちの現在凍結されている資産を取り戻す目的でヨーロッパに派遣されることになった委員会結成の決定は、国民の賛同を得た。
その金額については様々な推測がなされている。400億ドルから700億ドルの間という人もいれば、30億ドル程度だという人もいる。大形の見方では前者の数字は大げさで、後者の数字が真実に近いとされているが、その信憑性はさておき、留意すべきは、貧窮国にもかかわらずその額が大きいこと、そしてどのようにしてそれだけの資産を集め、外国の銀行に預金したかということである。
これらの問いの答えは汚職である。前エジプト政権は一方では前大統領とその家族、もう一方では彼とマフィア的な実業家たちとの間の疑わしい提携で成り立っていた。エジプトの実業家、別名“大クジラ”たちはムバーラク家のショーウィンドーに過ぎず、巨額な仲介料の見返りとして、一家に代わって大きな商契約を結んでいたと噂されてきた。
前政権はそうした手下どもに契約や商取引を行わせ、大掛かりな住宅供給プロジェクトのために国有地を提供するといった便宜供与をつぎ込み、そうしたプロジェクトによって彼らは公金を何十億ドルも公然と着服し、国庫への税金支払を明らかに免れていた。
残念ながら、汚職は実業家やムバーラク前大統領の家族にとどまらなかった。それは大臣や高官らにも拡がっており、彼らは決定権を持つ部署における地位の影響力を利用して利益を得ていた。その例としては現在、脅迫や盗みによって数億ドルを手にしたかどで投獄されている[前内務大臣の]ハビーブ・アル=アーディーがあげられる。
国営通信社のMENAが明らかにした所によれば、不法所得問題担当の法務大臣補佐官、アースィム・アル=ジャウハリー氏が、ムバーラク前大統領や前政権時代の高官らの秘密口座を明らかにするために断固たる措置をとるとして、捜査によって膨大な資産規模が明らかにされた3人に渡航禁止決定を出した。それは、人民議会元議長のファトヒー・スルール、諮問議会元議長のサフワト・シャリーフ、大統領府元官房長のザカリヤ・アズミーの3名である。
エジプトで最も重要な立法機関である人民議会と諮問議会の議長二人が、自身の地位を濫用して利益を得ていたという金銭的疑惑をもたれているとは悲しいことである。彼らの基本的な役割は、行政府とその仕事ぶりを監督し、公金を横領や盗みから守ることであったはずなのに、2人に向けられた容疑からは、彼らはそれとはまったく逆を行ったことが証明された。
ムバーラク前大統領とその家族の資産は、エジプト国民の資産である。貧しい労働者たちの資産である。では一体どうして彼ら一家は海外の銀行に蓄財するようなまねができたのだろうか?エジプト国民の半分(4千万人)が一日2ドルという貧困ライン以下で暮らしているというのに。
我々がムバーラク前大統領とその家族に問い掛けたいことの一つは、彼らがこういう運命に直面すると思い描いたことがかつてあったかどうか、ということである。二つ目は、エジプトを統治し、豪華な宮殿で暮らしながら、この金で彼らは何をしようとしていたのか、ということである。
この問いに対する答えは強欲、思慮不足、愛国心の欠如、すなわち貧しい者への思いやりの欠如である。
(本記事は
Asahi中東マガジンでも紹介されています。)
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( 翻訳者:松尾愛 )
( 記事ID:21995 )