社説:進撃するカッザーフィー、足を取られる革命家たち
2011年04月06日付 al-Quds al-Arabi 紙
■社説:進撃するカッザーフィー、足を取られる革命家たち
2011年04月06日『クドゥス・アラビー』
リビア情勢は政治的にも軍事的にもひどく不明瞭である。そのことは、このひと月半カッザーフィー大佐の体制に抵抗を続けているリビア革命家たちにネガティブな影響をもたらすと思われる。
昨日米政権は、リビア元首からオバマ大統領に宛てられた書簡を受理したことを明らかにした。書簡では、「リビアに対し十字軍的敵意を抱く帝国主義的軍事同盟」からアメリカが撤退したことへの感謝が述べられ、同時に停戦が提案されていた。
カーニー米大統領報道官は、リビア元首に対し口先だけではなく[連合側の要請を]実行するよう求め、また、この類の書簡を受け取るのは初めてではないことを明かしたが、アメリカの対応は、リビアの武装反体制勢力の希望を挫くものであった。
反体制軍指揮官アブドゥル・ファッターフ・ユーニス・アビーディー少将の記者会見をみると、東部へ進軍するカッザーフィー部隊へのNATOの対応の遅さに、反体制軍の間で明らかに幻滅が広がっていることが分かる。反体制側は、NATOに対する公式な苦情を安保理に提出することすら考えている。
カッザーフィー部隊は、東部の三日月地帯にある石油産業の柱ブリーカとラスラノフの二都市を制圧し、西部ではミスラータの大部分を支配下に置いた。これにより、石油生産をコントロールするという反体制派の望みは潰えた。石油収入で武器を贖い、戦闘員に給与を支払い地域住民の生活物資を保証するという目論見だったのだが。
NATO軍は、東部へ進撃する戦車などカッザーフィー大佐側の軍事標的への爆撃をためらったわけではない。しかし、その標的数が少なくなってくると、残りは都市部の中に存在するため攻撃が困難になったのだ。
NATO報道官は、空爆により、リビア体制軍の戦力はその三分の一が破壊されたと述べている。つまり、残りの戦力でも、分裂し装備が貧弱な反体制軍と対決して勝利するには充分だったということだ。
リビアのNATO軍が直面する最大の問題は、軍事介入を継続することへの合意が加盟国の間に存在しないことである。安保理決議の字句通りの適用を要請するイタリア、ドイツ、トルコ等は、飛行禁止を課すだけに留まらず地上の軍事目標を爆撃しているのはNATO軍による越権行為だとみなしている。
合衆国がリビア軍事作戦から撤退したことは、軍事介入反対派を確実に勢いづけることになり、英仏など介入に熱意を示していた国を困らせるだろう。特に英仏については、この戦争によりリビア体制を変更し莫大な石油利権にかかわる経済的利益をあげることが目的ではないかとの疑念が高まっているところである。
リビアにおける飛行禁止空域はその目的を果たし、東部の住民は実際に庇護をえた。しかし体制変更となると、カッザーフィー部隊と戦う軍を派遣するため、新たな安保理決議が必要になる。
激しく反発する中国、ロシア、戦場からの撤退によりリビア体制に明らかな恩恵を与えたアメリカの立場を考えると、いかなる決議がリビア体制変更を成し得るのか予測がつかない。
アフガニスタン、イラクの例にみるように、戦闘のためリビアへNATO軍を派遣するというのは危険に満ちた行為となる。また、イラク、アフガニスタンの経験から、悲劇的な結果を恐れる英仏両国民の大多数に拒否されるだろう。
革命側に有利な戦果があがらないまま、リビア危機は日ごとに混迷の度合いを増していく。革命側の懸念とNATOに対する批判も理解できるというものだ。
ごく端的に言えば、政治的にも軍事的にもリビア体制側が利を得ている。原因は、NATOの躊躇と目標の曖昧さ、同盟国間の分裂である。合衆国は、さらなる軍事的政治的ダメージを回避すべく逃亡した。地理的にも経済的利益の面でも、リビア危機は欧州の関心問題であるとして丸投げしたのである。
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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:22054 )