カウフマン英下院議員の発言をめぐる騒動の背景
2011年04月10日付 al-Quds al-Arabi 紙
■カウフマン議員の発言がシオニストロビー団体の攻勢に火をつけた
■「またユダヤ人か!」。この発言は英国の政治家に高い代償を求めるのかもしれない
2010年04月10日『クドゥス・アラビー』
【ロンドン(本紙):ハヤーム・ヒサーン】
イギリスのベテラン議員ジェラルド・カウフマンは、一般の人々が見向きもされることなく日々口にするかもしれない言葉を英国下院の議事堂の中で呟いたことで、自分の政治生命がいかなる方向に向かうのかを知る由もない。同議員は、約二週間前のある会合で同僚議員が話そうとしたときにこのように発言した。「またユダヤ人か!」と。この一言はイギリスのシオニストロビー活動団体を刺激し、彼らの敵意に火つけることとなった。
カウフマン議員はルイーズ・エルマン議員とは常々立場が異なっていた。エルマン議員はイスラエルの最大の支持者の一人であり、イギリスにおけるイスラエルの利益に対する最大の擁護者の一人である。一方でカウフマン議員はというと、イスラエルに敵対する立場をとり、パレスチナ人の権利を擁護していることで知られる。両議員の立場が違うという事実を考慮すれば、カウフマン議員が放った言葉は的を得ていたように思われるし、同発言のあった会合はまさしくその問題を扱うものであった。つまり同会合は、戦争犯罪の容疑者がイギリスに入国した場合、同人を逮捕することを認める法案の改正に対して投票を行うものであった。当然ながら、この容疑の対象者の中にはイスラエル高官らも含まれる。
しかし、イギリスのユダヤ人コミュニティは[カウフマン議員の]発言は不当なもので、ある種の反ユダヤ主義的な行為とみなし、この発言を行った同議員に対し可能な限りのあらゆる方法で社会的制裁を与えようと動き出した。
イギリスにおけるユダヤ人コミュニティの新聞「ジューイッシュ・クロニクル」が伝えたように、カウフマン議員の言動はその表現によって誰かを意図的に嫌がらせるものではなかったことは事実の詳細が示すところである。また、この発言は同議員の傍らの同僚に対して一瞬だけささやかれたものでもある。しかし、この発言は別の同僚議員、すなわちヘンドン出身でユダヤ系のマシュー・オーフォード議員が聞き逃すものではなかった。同議員はエルマン議員(同じくユダヤ系)にこの事実を大急ぎで伝え、さらに副国会議長、その後国会議長に対して苦情を申し立てた。
カウフマン議員は、議会から退出した直後にエルマン議員との間の口論の後に生じた出来事について「こういう発言をしたかは記憶にない。毎日自分が発する発言、言葉を一言一句覚えていない」とコメントしつつも、自身の発言が引き起こすかもしれないあらゆる侮辱に対して謝罪を表明した。しかし、事件から約二週間がたち、カウフマン議員は自身の所属する労働党から出された声明の中で率直に謝罪したにもかかわらず、騒ぎは収まっていない。観測筋は、同議員が発した一言はまさに「ラクダの背を折る藁一本」(※訳注:破滅の引き金となる一小事の意)とみているのは確かである。実際同議員は、イギリスのシオニストロビー団体を長年亘って挑発してきたが、「キャスト・レッド」作戦として知られる約2年前のガザ地区に対する野蛮な攻撃の波紋について例えを用いた際には、その挑発は最高潮に達した。同議員はその作戦による波紋を、ナチスが1940年代に彼自身の家族に対して行ったことにより、ポーランドを離れイギリスへ向かうことを余儀なくされた波紋に例えたのである。
2009年5月号の「ジューイッシュ・クロニクル」紙は、カウフマン議員の議会活動の支出問題について綿密に行い始めた。法律上の違反行為を見つけることに成功しなかったものの、あまりに些細な問題ということで、支出項目が公にされる機会もなかった。
「またユダヤ人か」という発言以降、「ジューイッシュ・クロニクル」紙は、同議員が法律違反をしているという明白な証拠がないにもかかわらず、彼の議会活動の支出問題を再度取り上げるようになった。例えば同紙は、同議員が数ヶ月に亘り特別な請求書を提出することなく議会に要求していた約245ポンドについて透明性が欠けると騒ぎ続けている。しかし、これ自体は何ら法に抵触するものではなく、議員が様々な職務のために領収書なしで議会に要求できる金額は250ポンドまでとされている。
カウフマン議員を叩きつぶそうする動きは激しさを増し、「ジューイッシュ・クロニクル」紙のジョナサン・ホフマン編集員は自身のブログで、「マンチェスター・ゴートン選挙区は、英国議会で反ユダヤ主義的な発言を行った同区出身のカウフマン議員を処罰できないのであれば、十分な尊敬に値する地区ではない」と主張するまでとなった。
なお同紙がカウフマン議員に対する攻撃を続ける中、親イスラエルのユダヤ系議員らは、労働党や下院の規律委員会を通して同議員をさらに追い詰めようと試み続けている。こうした試みは今回成功しなければ、さまざまな理由で今後も継続されるというのが大筋の見方である。
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( 翻訳者:松尾愛 )
( 記事ID:22090 )