トルコは、何週間も反体制デモが行われている隣国のシリアが極度の不安定状態に陥ることを懸念し、警戒態勢を取った。政府は、民衆の要求する改革を実現するようシリア政府を激励する一方で、武力行使が増加するシリアで予想される難民の流入にむけて準備を整えた。
シリアで6週間前に始まった反体制デモの死者数は次第に増加している。シリアのある人権団体によると、デモ隊への治安部隊介入による死者数は500人を超えた。逮捕者は何千人にもなると言われている。今週はじめシリア政府がデモ隊に戦車で介入した南部のダルアー市でも、人道的状況の悪化が報じられている。デモが激化した都市では、医者や薬、子供用のミルクがなく、また停電、断水していることが明らかになっている。ダルアー市からは何百人ものシリア人が隣国のレバノンに徒歩で避難していると報じられている。民衆への支配を非難して、シリアの政権与党であるバアス党から230人以上が離党した。
軍内部でも衝突が起こっているといわれている。軍部は体制の基盤をなしているため、軍内部の衝突は重要である。事態を近くから見守るトルコは、予想される難民の流入に向けて対策を講じている。シャンルウルファとマルディンの知事室内にチームがつくられ、クズライでは倉庫内の物品が確認された。またテント村用の土地も確定した。予想される移民流入の際、国境を越えてやってくる避難民はまず健康診断を受けることになっており、特定の地域で移動式診療ステーションが建てられた。今後、移住でトルコへ流入するシリア人はリストに記載され、国連に通達されることになっている。トルコでは、イラクの追放された指導者サッダーム・フセインによるハラブジャの大虐殺後にも、トルコへ逃げてきたペシュメルガ(クルド民兵)のため多くの場所でテント村が建設され、何年にもわたり彼らの需要に応えてきた。このたび、イギリスとフランスの国連安全保障理事会で、シリア政府に対する痛烈な非難にロシアと中国も加わった。
■動乱が観光に打撃
シリア国内の動乱は、同国とのヴィザ相互廃止で急速に増加していた観光客数にも打撃を与えた。レバノン人とシリア人が休暇を過ごすために好むハタイでは、この1カ月で予約がキャンセルされ始めたと伝えられている。アンタキヤのオットマンパレスホテル総支配人、アリ・シェナク氏は、予約が70パーセント減少したと述べた。
■トルコ政府は改革説得のためアサド大統領に使節を派遣
トルコは、何週間も反体制デモが行われている隣国のシリアが極度の不安定状態に陥ることを懸念して、警戒態勢をとった。これに伴い、昨日28日に行われた国家安全保障評議会(MGK)の会議で、シリアでの事態の進展が議題になり、レジェプ・タイプ・エルドアン首相は国家諜報機構(MİT)のハカン・フィダン事務次官と国家計画機構のケマル・マーデンオール事務次官率いる使節団をシリアへ派遣した。バッシャール・アサド大統領と面会した使節団は、トルコのシリアでの改革プロセスに対するこれまでの支援を述べ、トルコ側が今後行い得る協力を説明した。MGKの会議後に行われた発表でも同様の点に注目された。この発表で、民衆に約束された改革のすべてが、できるだけ早く実行されることの重要性が強調され、治安部隊が民衆に接近する際は最大限に注意するよう求められた。
朝ダマスカスに到着したフィダン氏とマーデンオール氏が率いるトルコ使節団は、アサド大統領を始め、アディル・サフィル・シリア首相や数名のシリア高官らと一堂に会した。シリア側は、同国で起こっている事態についてトルコ使節団に情報を与えた。マーデンオールDPT事務次官はトルコがこの10年間に、政治・経済・社会分野で施行した計画と、それらの結果について説明した。そして今後、DPTの専門家がシリアを再び訪問し、トルコで発展に向けて実施される計画に関して、シリアと情報や経験を共有することが述べられた。シリアのメディアが報じた使節団に関するニュースでは、先週、トルコ輸出信用銀行から1億8千万ユーロの融資が許可されたことが伝えられている。
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( 翻訳者:吉岡春菜 )
( 記事ID:22301 )