イラクのロバ、スモークの物語
2011年05月06日付 Hurriyet 紙


北イラクの何百万頭もいるロバの1匹にすぎなかったロバのスモークと、1人のアメリカ人軍人の物語は映画顔負けだ。ジョン・ファルソム大佐は、引退して帰国したにもかかわらずスモークを忘れなかった。スモークをアメリカへ連れて行くために奮闘したのだ。

積み荷を運ぶロバの体には、痛々しい苦痛の傷跡が見られた。しかし、3年前幸運が降ってきた。イラク南部のアンバール県で第一歩兵兵站部隊に属する米国兵の駐屯キャンプに近づいたためだ。ロバは食料を探してキャンプのフェンスに接近した。駐屯キャンプの司令官ジョン・ファルサム大佐は、ロバの体の傷跡を見て心を痛めた。彼は熱心な動物愛護者であったため、ロバに餌をやり、傷に薬を塗り、キャンプ内で自由に散歩させた。ロバは毛色が灰色であることから “スモーク(煙)”と名付けられた。

間もなくしてキャンプのアイドルとなったこのロバは、2年間キャンプの人たちと暮らした。兵士たちは、家族や友人にスモークと一緒に写った写真を送るようになった。しかし、アメリカが北イラクからの撤退を決定すると、第一歩兵兵站部隊も帰還することになった。部隊は撤収し、スモークはイラクに残った。この間にファルソム大佐は引退を迎え、スモークをアメリカに連れて行こうとした。しかし、それはとても難しいミッションだった。

■虐待防止協会が間に入る

ファルソム大佐は、この解決のため、SPCAI(米・国際動物虐待防止協会)に助けを求めた。協会は「我々は、イラクで虐待されている動物を救うため努力している。これまで数えきれないほどの犬猫をアメリカに連れてきた。スモークも連れて来よう」と語った。その後、SPCAIバグダッド動物オペレーション計画のテリ・クリスプ代表が、スモーク救出の担当になる。
この間に昔の生活に戻ったスモークは、イラクのある家庭の庭につながれ、積み荷を運んでいた。米国人の協会メンバーは彼を見つけると、新しい飼い主から引き取ることを申し出た。しかし新しい飼い主は3万ドル(約240万円)の値をつけた。その上、非常に頑固であった。そこで、この地域のシャイフが仲介に入った。長い値段交渉の末、1000ドル(約8万円)で買い付けられた。

■外交危機の原因になる

スモークのためにたくさんの文書が整えられた。バグダッドからアルビルに運ばれた。そして、ハブルの国境ゲートからイスタンブルに輸送される手はずだった。アルビルで健康状態の検査が行われた。移動するのに障害がないことが分かった。しかし、トルコの関係者たちは生きた動物の入国を承認しなかったため、ハブルからの出国が阻まれた。そこで動物愛護団体が間に入った。SPCAIを筆頭に、動物愛護団体や米兵士家族協会がロビー活動を始めた。在トルコ米国大使館とトルコの関係者の間で電話や文書による交渉が始まった。この間、SNSのfacebookにスモークに関するページが開設され、200人以上の人が関心を持ち、毎日これをフォローし始めた。
ハブルの国境ゲートから出ることができたスモークは、イスタンブル県ウムラニイェ市のチェクメキョイにある犬の牧場に迎えられた。アメリカにこの情報が伝わると、ジョン・ファルサム退役大佐は、大急ぎでイスタンブルへ向かった。1年ぶりに再会したスモークは、ルフトハンザ航空の貨物機で幸運の国へと旅立った…。

■ジョン・ファルサム退役大佐:これからは積み荷でなく使命を運ぶ

スモークとの再会をとても喜んでいるスモーク元大佐は、「あの子はもはや積み荷を運ぶことはない。虐待され中傷される日々は終わった」と語り、続けてこう述べた。「スモークはアメリカではもう二度と積み荷を運ばないだろうが、我々はある任務を与えた。私は、負傷兵士の家族支援会のメンバーだ。ネブラスカ州オマハに支部がある。スモークはそこでイラクで負傷した兵士といまも駐留しているアメリカ兵士の子供たちのリハビリで、元気を与える者として任務にあたるだろう。」

Tweet

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:大久保はるか )
( 記事ID:22401 )