Sedat Erginコラム:エルドアン首相を支えるのは貧困者と女性たち
2011年05月19日付 Hurriyet 紙

エルドアン首相のマラトゥヤでの演説に集まった熱狂的な群衆の最前列は完全に女性で占められていた。

サッカー場より広いマラトゥヤの新しい市の広場を埋め尽くす大群衆の中で、最も熱狂的なグループは、大方が若い女性で占められた最前列の一群であった。ほとんど全員がスカーフを被っている。彼女たちの発する「トルコはあなたを誇りに思う」というスローガンは、たびたび首相の言葉をかき消すほどだ。
最前列にいた有権者のうち、4人の娘を学校に行かせている30歳代半ばと見受けられるアイハン・ユルマズさんは「タイイプ氏の姿を見て、感動で言葉が出ません」といい、こう続ける「同志として、彼の歩みを阻むことのないよう、私たちは彼の志す道のためには犠牲になりましょう。」
アイハンさんはエルドアン首相をなぜ支持するのかをこう説明する;「私たち貧しい者たちを見捨てることなく、面倒をみてくれる。あらゆる可能性をもたらしてくれました。私は子供たちを学校に通わせていました。イスタンブル・アーケードに古本屋がありますが、教科書の半分はそこから買い、残り半分は親類の子供たちから譲ってもらっていました。全て合わせて350から400リラ近くになります。とても買えないので、2~3回の分割払いで支払っていました。その後、エルドアン氏が首相になり、神のご加護あれ、子供たちは教科書を持って学校に通うことができました。これが(支持する)1つ目の理由です。2つ目は、近隣者、夫婦、親友といった近しい人々がしっかりと連帯できるようになり、貧困者に注視してくれたこと、3つ目は保健衛生がすばらしいことで、保健衛生に関して何も言うことはありません。以前は出産費用も支払えずにいました。(今は)とても満足しています。」
同じく最前列にいたアイシェ・ウチャルさん(30)は、息子とともに集会に参加していた。アイシェさんは「私は(エルドアン首相の)ファンです。他の何のためでもない、ただタイイプ氏を一目見るためにやってきました。神のご加護あれ、ありがたいことに(首相は)私たちのためにとても助けとなってくれました。息子も私も首相をとても気に入っています。私たちの将来は光り輝いていますし、すばらしいものとなるでしょう。どうか神様、彼が私たちの首相であり続けますように。」と話す。
さらにアルズハル・オズギュルさん(50)もまた、過去にオイルを求めて行列をなしたことを説明しつつ、「でも、今は楽です」と言い、こう続ける;「首相に言いたいことは何もありません。なぜなら彼は世界のリーダーだからです。」
こうした会話を聞いた他の女性たちも熱い口調で会話に入ってきた。1人は「女性を尊重してくれるのよ、ここにこうして私たちに場所を与えてくれる。以前はどこにも行けなかったの、抑圧されていたから」と言う。
ここから、エルドアン首相が女性(の声)に耳を傾けるという話題になった。この話を聞いた別の女性が割りこんできて「近所の人が奥さんを殴ったの。その奥さんは『あんたのこと、タイイプ氏に言いつけてやる』と。つまり、それだけ(首相の人気が)すごいってことですよ・・・」

■高校1年生たちもカリスマとして賞賛

次は広場の後方に移動した。ベイダウ・アナドル高校に通う1年生の4人組が、エルドアン首相を見ようと集まった人々の中にいた。エルドアン首相をどのように思うか聞いたところ、一人は「キングのような男性」と言い、隣では「かっこいい」と付け加える。3人目は「カリスマ性がある」と話し、4人目がこう締めくくる;「完璧」。
では、全員14歳から15歳のこの若者たちは、首相のどんなところに成功を見出しているのだろうか。医者になりたいという学生は「彼の施政が良い。国を統治できているから」と言う。英語教師になりたいという学生は「外交政策が良い」と評する。一般外科医になりたいという学生が「(国民の)目を覚まさせた」と加え、農業工学者を目指す学生は最後に「問題が何かを分かっている」と結ぶ。その後しばらくして、少しだらだらし始めた彼女たちは、お互いに肩を組み、集会の記念にと携帯電話で写真を撮るためにポーズをとっていた。

■貧困者への支援

広場を埋め尽くした集団の中には高齢者もたくさんいたが、その大部分が農村出身者だ。彼らをこの広場に駆り立てるのは何なのだろうか。
農業を営むメヴリュト・バーラルさん(65)は「あらゆる点で仕事をしている」と言う。以前は常にオザル氏に投票していたというメヴリュトさんはエルドアン首相に対し、「それに、よく援助してくれる」と評価する。
労働者として働き、現在は年金生活を送るネジメッティン・ウルクムさん(60)は、「世界中をみてもこのようなリーダーはこれまで現れたことがなかっただろう」と言い、「初めて、トルコで市民による統治がなされている」と語る。ウルクムさんは(ネジメッティン・エルバカンが掲げた綱領である)「ミッリ・ギョリュシュ(ムスリム国民の視座)*」の思想の影響を受けている1人だ。
街区長を務めるアリ・セイディ・ヤズガンさん(52)も会話に加わり、こう述べる;「学生に無料で教科書を配布することは良いことだ。さらに、集合住宅局が家屋を作り、多くの貧困者が家を買った。月に100リラ支払って持ち家を手にすることができる。貧困者が必要とすることに応え、2ヵ月に一度、150リラの支給を行っている。必要とする者は窮状を街区長に訴え、社会相互扶助センターから派遣された人が面倒をみる。家にモスクまで作るんだ。それに、喫煙の問題についてもタイイプ氏へ感謝している。いまではカフェで楽にお茶を飲むことができる。」
貧困者に関する支援プログラムは、多くの低所得層がエルドアン首相に共感する最強の理由の1つだ。
では、不満を持つ者はいないのか、といえばそうでもない。例えば、労働者として働く30代前半のバイラム・アクダウさんは、グリーンカードの所有者しか社会支援の恩恵を受けられないことについて批判的だ。「グリーンカードを持つ者だけが石炭燃料や食糧配給を受けられる。しかし、我々のようなSSK(社会保険機構)に加入する者には支援が行われない。」

■陰謀説も

以前は民族主義者行動党を支持していたというカプジュ(アパート雑用夫)のハサン・ゲルゲルさんはこう話す;「タイイプ氏は今期、本当にプロとしての仕事をする。一番気に入ったのは闇の力を明るみにしたことだ。」ゲルゲルさんは、民族主義者行動党は1998年にエジェビットと祖国党と連立を組んだことで自滅したと話す。
農業を営むリファト・オズクルさん(46)はエルドアン首相について、「発言と行動がともなっている。それに、市民の視座を開こうとしている」と話す。「市民の視座を誰がふさぐんでしょうか?」と私が尋ねると、「そんなこと、わかるでしょう」と応じた。
では、民族主義者行動党のカメラ映像流出は彼らの目にどのように映っているのだろうか。
幾人かに関してはこのニュースを知らない人すらいた。この件を知っている人の中では、もっぱら陰謀説という理解がなされている。名前を明かしたくないという28歳の職人は「カメラ映像事件の裏に誰がいるか、知らない人がいるとでも?」と言い、陰謀についてこう述べる;「エルゲネコン事件の裏にはアメリカとイスラエルの存在がある。カメラ映像事件を操っているのはMHPが力を持つことを望まない人々だ。過去にトルコで右派と左派の衝突が生じたけれど、今回は民族主義のトルコ人対クルド人の間で似たようなことが生じるだろう。そのため、MHPの(議席獲得に必要な)得票率平均を10%以下にとどめたいんだ。」
このシナリオを初めて聞いたと伝えると、「新聞記者なのに、なぜこんなことも知らないのか?」といった表情で、まるで見知らぬものでも見るように私の顔を見つめ、「これは本当だよ」と言う。
このとき「有言実行のシンボル」との肩書きで壇上の椅子へ呼ばれたエルドアン首相が、外交政策をテーマに話し始めると、会場から「オバマ大統領は彼の前では話せない、そんな姿勢が首相にはある」という声が上がった。
エルドアン首相が一瞬、群衆を見て「我々はあなた方をとても愛しているんです」と声にすると、また群衆から返答がきた「あなたよりもっと、私たちはあなたを愛しています。」
マラトゥヤの広場では、双方の愛情表現の応酬で集会は続く。


*ネジメッティン・エルバカンが、トルコでの世俗主義国家樹立とその後の世俗化・欧化政策を批判し、イスラーム的な規範に依拠した体制や政策を通じて社会的公正と経済発展を両立できると説いた綱領のこと。(出典:人間文化研究機構(東京大学拠点)グループ2・第2研究テーマ「中東の民主化と政治改革の展望」HP内、「中東の民主化」データベースより抜粋。http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~dbmedm06/me_d13n/database/turkey/political_party.html)

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:金井佐和子 )
( 記事ID:22578 )